106ページ目…追求

 先生、そこにいるんだろ?ちゃ・ん・と・説明して貰えますよね~?


 そう、僕は記憶が封印されていた事を先生に問い詰める事にした。

 何故なら、先生も記憶の事を知っていたし、何よりシステム云々うんぬんで僕にチート…ユニークスキルまで与えてるのだ。

 それに、骸の魔銃の説明とか色々な事にしてもそうだ…。


 会話こそ出来る物の…先生は、この世界の外からこちらを見ているように思えるのだ。

 否、思えると言うよりは確信していると言った方が正しいだろう。


【えっと…ごめんなさい!必要な部分だけを封印するつもりが、遠距離だった為に設定をミスっちゃって…その…てへぺろ。】


 …僕は従兄弟のお兄さんが小さい子が悪い事をした時に拳骨で叱って思い出し、それをイメージして指を鳴らす。


『パチンッ!』


【ゴンッ!】

【いった~~~いッ!!】

【ちょっと待ってッ!?なんで、私に攻撃出来るのよッ!】


 さぁ?僕に言われても…ね?

 そもそも拳骨を落とすくらいなら出来るかと思って試したが、本当に攻撃出来るなんて思ってなかったし…。


【って言うか、普通、女の子に対して拳骨とか、マジありえないんですけど~。】


 あの…先生って、何歳なんですか?

 話し方からすると僕よりも年上だから、『女の子』では無いと思うんだけど…。


【ギクッ!えっと…ひ・み・つ?】


『パチンッ!』


【ゴンッ!】

【あいたッ!?ちょっと何すんのよ、まったく…。】


 な・ん・さ・い・な・ん・で・す・か?


 少しイラっとした為、強めに尋ねた…すると…。


【い、言わなきゃダメかな?】


 僕は再び指を鳴らそうとする。

 すると、先生は慌ててそれを止めようとする。


【わ、分かった…言う、言うからストップ、ストッ~~~プッ!】


 ふむ…どうも結構な力で拳骨を喰らわせていた様で、その必死さが良く伝わってくる。

 ってか、そんなに焦るって…従兄弟のお兄さん、息子にどれだけの力で拳骨喰らわせてたんだ?と心配になってしまう。


【ボソボソ…歳よ…。】


 はい?先生、良く聞こえないんですけど…もう一度、ちゃんと聞こえるようにお願いします。


【うぅ…141621歳よ…。】


 え…14万ッ!?本気マジでッ!?


【そんなに驚かなくても良いじゃない!これでも神様の中じゃ子供なんだから!】


 あ~やっぱり、先生って神様だったんですね…。


【えッ!何でそれをッ!?】


 先生…実は、他の人に天然って言われませんか?


【う…よくお姉ちゃんとかお爺ちゃんに…。】


 お姉ちゃんとお爺ちゃん…か。

 どんな人なんですか?


【あ~…人って言うか、私と同じで神様よ?】

【お爺ちゃんは神様の中でも一番偉い人でね…世界神って呼ばれていて、私に新しく出来た、この世界を任せてくれたの。】

【お姉ちゃんは、この世界の管理に慣れない私のサポートをしてくれているのよ。】


 へ~…でも、先生…今、一番偉い『人』って言ってましたけど…良いんですか?


【あぅ…またやっちゃった…。】


 まぁ、そんな些細な事より…本題に入りたいんですけど…。


【わ、分かったわ…可能な限り、お答えします。】


 単刀直入に聞きます…何で僕の記憶を封印する必要があるんですか?


【そ、それは…私の口からは…。】


 どうやら簡単に言えない様な事柄の様だ。


【ちょっとお邪魔させてもらうぞい?】

【確か、夢幻君と言ったかの?】


 はい、そうですけど…貴方は?


【えっ!?お、お爺ちゃん!どうして此処にッ!?】

【これこれ…今はお爺ちゃんではなく、世界神様と呼ばないとダメではないか…。】

【ご、ごめんさい…。】


 なるほど、世界神様か…ただまぁ…自分を様付けで呼ぶのは如何な物なんだろう?


 あぁ…世界神でしたか…。

 まぁ、僕としては呼び方なんて、どうでも良いんですけど…。


【おっと、そうじゃったそうじゃった…。】

【君の記憶の封印の事なんじゃが…その昔、邪神と呼ばれている者がおってな…。】

【邪神と言っても、神は神…その者が死ぬ間際に君の中に入り込んだのじゃよ。】

【幸い、その邪神はすでに力のみの存在になっておって害はないんじゃが…。】

【もしもの事なのじゃが、万が一にも、奴が君の中にある記憶を使い復活するとも限らない。】

【それ故に、君には申し訳ないのじゃが記憶を封印させて貰った訳なのじゃよ…。】


 つまり、僕とじぃちゃんとの思い出が、邪神に力を与える…と言う事ですか?


【あくまで可能性の一つだと言う話じゃよ…。】


 そうですか…最後にもう一つ…。

 僕のじぃちゃんは…この世界に来た事があるんですか?


【ふぉっふぉっふぉっ…そうじゃ、君のお祖父さんは、若い頃…この世界に来て、世界を救ってくれた。】

【その時、邪神は魔王となってこの世界を壊そうとしておったのじゃ…。】


 あ~何となく、オチが分かりました。


【ほぅほぅ…どんなのか聞かせて貰うかの。】


 つまり、倒した邪神の欠片が、じぃちゃんの中に入って、それが僕に引き継がれた。

 んで、僕がこっちの世界に来た時に、その記憶が元で邪神が復活するかもしれない…と言う事ですね?


【概ね正解じゃな…ただし、邪神の欠片が入ったのは、君のお祖母さんの方じゃがの…。】


 え?…ばぁちゃん?

 ばぁちゃんって、こっちの世界の人だったんですか?


【おっと…これはいかん、つい口が滑ってしまったわい。】


 それって、お姫様とかだったりしますか?


 この手のパターンと言うか…今までが、ベタ過ぎだから今回もその手の話なのではないだろうか?


【なんじゃ、知っておったのか…なら、隠す必要はないの~。】


 いえ、まったく知りませんよ?


【………。】


 先生の天然って…もしかして遺伝か?


【ま、まぁ…なんじゃ、君には済まんが、邪神復活予防の為に、申し訳ないが記憶を封印したままにして貰えると助かるんじゃが…。】


 まぁ、思い出が封印ってのはアレですが…状況が状況だけに、我慢しますよ…。

 それで、僕はこの世界で何かしなければいけないんですか?


【いや、特に何もしなくて良いぞい。】

【まぁ、この世界をあちこち見て回ってくれたら助かるかの…。】


 その点は大丈夫です…この世界で美味しい物を食べまくるつもりですから。


【そうそう…零の使い魔と言う者達には気を付けるんじゃぞ?】

【あやつらは、邪神の復活を企んでおる様じゃからの。】


 邪神の復活…か、気を付けます。


【うむ…では、ワシはこれで失礼させて貰うかの…ミューズや、この世界の管理、頑張るのじゃぞ。】

【もう、お爺ちゃんったら…。】


 ミューズ先生、聞きたい事は終わったんで、僕もそろそろ…。


【な、何で、私の名前をッ!?】


 コレだから天然は…。

 僕は拳骨ではなく、頭を撫でてあげるイメージで、指を『パチンッ!』と鳴らしたのだった…。

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