105ページ目…記憶の封印

「う、ううん…。」

「ガ、ガウッ!ガウッ!!」


 う、五月蠅い…何て目覚まし時計だ…。

 そう思いながら、音のする方へと手を伸ばす…。


『ぷにゅんッ♪』


 ん?この柔らかい物は何だ?

 僕のベッドには柔らかい物なんて置いてなかった筈なんだが…。

 そう思いつつ、僕は更に手を動かしてみる。


『ぷにゅんッ♪ぷにゅんッ♪』


 何て言うか、僕の手にちょうど良い大きさでありながら、適度な弾力…いつまでも揉んでいたくなる感触…調子に乗って揉んでいると、少し変化があった。


「はぁ、はぁ…ご主人様、もうダメです…。」


 …どこかで聞いた事のある声だ…なんだろう?

 それに、この匂い…まるで天日干しした布団の様な…所謂いわゆる、お日様の匂いに似ている。

 まるで、田舎のばぁちゃんに抱き締められた時の様な幸福感を与えてくれる…。


「ん~~~~~ッ!」


『ぎゅ~~~ッ!!』


 寝ぼけたまま、柔らかい物で遊んでいたら急に締め付けられてしまった。

 苦しくなって目を開けると、すると目の前に僕好みの…すごく可愛い女の子の顔があった。

 一瞬、誰だ?と思っていたが…次第に脳が活発になっていき、誰だったか思い出した。


「やぁ…おはよう、プリン。」


 そう…僕の側に居た女の子はプリンだった。

 でも、僕が言わない限り、プリンは僕のベッドまで入り込む事は、ほぼ皆無なのに何かあったのかな?

 そんな事を考えていたら、その答えをプリンが教えてくれた。


「はぁはぁ…も、もう…おはよう…じゃないです、ご主人様は二日間も…意識が戻らなかったんですよッ!

 私がどれだけ…心配したと思ってるんですかッ!

 もう、ご主人様のバカ~~~ッ!!」


 二日間?意識が戻らない?いったい、何の話だ?


「プ、プリン…お、落ち着いてくれ…いったい、何の事だ?」

「何の事って…ご主人様、倒れた事を覚えてないんですか?」


 倒れた?誰が?…って、プリンがご主人様って言っているのだから、当然、僕の事だろう…。

 でも、僕には何の事か分からない…。

 まぁ、何にせよ、何時までも寝ている訳には行かない…そろそろ起きようと思い…。


「あれ?ここは…どこだ?」


 そう…僕は自分の家の自分の部屋、自分のベッドの上かと思って居たのだが…どうやら違うようだ。


「ご主人様、ここはバルムングさんの家です。

 あの…本当に、体の方は大丈夫ですか?」

「あ、あぁ…プリンが何を心配してるのか分からないだけど…って言うか、バルムングさんって誰だ?」


 そう、僕にはバルムングと言う人の記憶はない。

 いや、本当に僕は知らないのだろうか?


 僕は、その名前を思い出そうとすると、頭に霞が掛かった様に、頭が鈍くなる…。

 その違和感に、疑問を持ち、プリンに話し掛ける。


「それに…プリン、他のみんなは?」

「えッ!?他のみんなですか?

 他のみんなは、ちゃんと家に居るはずですよ?

 ご主人様と私…そして、レオの3人で『マイマイ』からお米を届けに来たじゃないですか…。」


 そこまで言われても、僕には何の事か分からない…むしろ、逆に頭の中の霧が深くなった様な気がする。

 何なんだ、この霧は鬱陶しい…その苛立ちから、今までの僕ならやらなかった行動を無意識の内にした。


『パチンッ!』


 指を鳴らす…その瞬間、それとは別に頭の中で『パキンッ!』と何かが砕けた様な音がなる。

 その音と共に、僕の記憶は次第に鮮明クリアになっていく…。

 あぁ、これはじぃちゃんの技の時と同じだ…また記憶が封印されていたのか…。


「あぁ…そうだ、僕達は…。」


 こうして、僕は記憶を取り戻す事が出来た。

 そして…僕は改めて、プリンに『ただいま』と言ったのだった…。

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