81ページ目…移動手段

「彼の物よ…その姿、我が望みし姿へと換えよ…〖魔法:模型創造モデリング〗!」


 僕は、なんちゃって詠唱で、無限庫インベントリにある大量のダンジョンの壁を使い、馬車を作り出した。

 そして…同様に馬を作り出した所で、この作戦が失敗だった事に気が付いた。


 つまり…馬をきちんとイメージ出来なかったのだ。


 原因としては、僕は一度も生きてる馬を見た事がない…おそらく、それが一番の原因なんだと思う。

 まだ、馬車程度なら、適当に作ってから、適当に調整すれば良いが、馬とかの生きてる動物を正確にイメージするのは非常に難しく、上手くイメージが出来なかったのだ。


 そこで作戦を変え、一気に現代風の車の形に作り替えた。

 とは言っても、窓ガラスなんて物はないし、クッションすらない。

 更に言うなら、エンジンやモーターと言う駆動機構すら組んでいない…。


 そして、通常では見えない部分に、特殊な車を作るのに考えていた機構を取り付ける事にする。


 そして…僕は動力部分を作り出し、最後の仕上げとして一つの魔法を使う。

 その魔法とは〖魔法:擬魂付加フェイクソウル〗だ


『ギュィーーーン!』


 先程、僕が作った車から駆動音らしき音が聞こえてくる。

 とは言え、先程も言ったが、この車はガソリンやモーターで動く訳じゃない。

 そう、僕が作り出した動力源…それは、僕に対し絶対服従するゴーレム。


 つまり、僕が作り出した車こそ、搭乗型ゴーレムだったのだ。

 その証拠に、僕が車は、搭乗型人造ゴーレムと書かれてる。


 僕はアクセルとブレーキ…ハンドル操作により、ゴーレムを操作して動きを確認する。

 その後、微調整を何度も繰り返し…そして念願の車の完成である。

 僕の思い通りに操縦が可能となった車が完成したのだ。


「〖スキル:魔力譲渡トランスファー〗!」


 僕は車に燃焼補給よろしく、僕の作り出したゴーレムに魔力を注ぎ込む。

 いくらゴーレムとは言え、魔力がないと只の箱になってしまうから…ね。


「みんな、お待たせ!準備出来たから出発するよ~!」


 と、声を掛けると、プリンとクズハがハモって返事をする。


「「はい!ご主人様♪」」


◆◇◆◇◆◇◆


『キキーーー!ドンッ!!』


【経験値76を獲得した。】


 よっしゃ、ボディーアタック成功!


「僕は車の確認チェックをするから、みんなはドロップ品の確認と回収を頼む。

 それと、ローラ!『オーク肉』があったとしても勝手に喰うなよッ!」


 僕は、急いで車から降りると車の損傷を確認をする。

 また、ドロップ品の回収もしないといけないので他のメンバーに回収を頼むのも忘れない。

 ただし、ローラにだけは注意が必要だ。


 そう…いくらダンジョンの壁を素材に使っているとは言え、事故の衝撃と言うのは、予想以上に強いのだ。

 その為、壊れていたら修理が必要になる。


 幸い故障箇所はなかった…まぁ、下手な剣だと傷すら付ける事が出来ないダンジョンの壁だ。

 さもありなん…と言った所か。


 アレから…車が完成してから、30分ほど車を走らせた時…偶然、前方にいた醜い豚野郎オークが居たので思い切り跳ね飛ばした。

 まぁ、異世界には車と言う物がそもそも存在していないし、轢いたのはオークと呼ばれる魔物だから、犯罪行為と言う認識はされないからの暴挙なのだが…。


 ギルドで、ゴブリンと並ぶ、即討伐の対象でありながら、レアドロップの『オーク肉』と呼ばれている物は、かなり美味しい肉と言う情報をメルトの町のギルド受付嬢…ポプラさんからの情報である。

 もっとも…情報料はタダではなく複数個オーク肉を手に入れたら、一つ無償で提供する事を約束させられてしまったのだが…。


 そんな訳で、たまたま見掛けたオークに対して、車で轢いたのだ。

 とは言え、これも車の性能の確認作業の一つ…耐久性の確認だったりする。

 故意に交通事故を起こし、こんな言い訳を言っておきながら何だが…ダンジョンの壁を素材にしたボディーには傷らしき傷がない。

 やはり、この車を作って正解だった様だ。


 もっとも、元の世界であるなら立派な犯罪行為ではあるが…。


 ただ、馬車と違い、かなりの速度が出る事を確認出来た。

 そして、馬車と決定的に番うのは…馬車と言うからには馬が必要となる。

 当然、馬は生き物手ある為、怪我もするし病気にもなる…つまり維持費が大変なのだ。


 その点、僕の作った車型のゴーレムなら、基本的にゴーレムが活動するだけの魔力があれば問題ない。

 もっとも、作り出せる人が皆無に等しいので、売りに出すにはコストが掛かり過ぎるだろう…王族とか一部の貴族辺りなら問題なく使えるかも知れないが…。


 なので、商売に使うのではなく、道楽…美味い物ツアーに使うのがベストだ。

 とは言え、この車には最大の欠点がある。


 それ、すなわち…窓がないのだ。

 速度を出せば、その分の風圧をもろに受ける。

 その為、移動中に虫とかに当たると、かなり痛い…。


 それもそのはず…こちらの世界では、まだ、ガラス製品と言うのは凄く高いのだ。

 その内、何か良い素材を手に入れないとダメだなと思うのだった…。

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