82ページ目…お土産

「みんな、着いたよ~。」

〔はい〕「はい」「ワゥ」


『パタン、パタン…パタン』


 僕の合図で、みんなが車から降りてくる。

 とは言え、まだプリンの人化では、魔物とバレる可能性が高いので、今回も鎧に擬態して貰っている。

 ちなみに…ローラは人型に飽きたらしく、人狼化を解き、今は狼モード元の姿だ。

 アレから何匹かのオークやゴブリンを倒し僕達はやっとの思いで、港町『アオイ』に到着した。

 ここへ来るまでの戦闘で、僕達のレベルは更に上がっている。

 車型ゴーレムに乗ってる場合、パーティー扱いなのか、みんなにも経験値が入っている様で、戦ってなくても経験値が手に入っていた。


◆◇◆◇◆◇◆


語部カタリベ 夢幻ムゲン Lv:25

HP:574/574 MP:538/538 SP:544/544


プリン・アラモード Lv:18/50

HP:430/430 MP:350/350 SP:346/346


クズハ・オサキ Lv:13

HP:310/310 MP:245/245 SP:229/229


ローラ・ウルフドッグ Lv:16

HP:420/420 MP:220/220 SP:398/398


◆◇◆◇◆◇◆


 ふむ…こうやってみると、魔物であるプリンだけ、レベルの上限があるのか…。

 まぁ、レベルが最大まで上がれば、再び進化をする事が出来るのだろう。

 ただ、ローラに関しては神獣だからかフェンリルだからか…魔物と同じと思っていただけに、最初に見た時、レベル上限がないのは驚いたのは懐かしい気がする。


 それはともかくとして…僕はみんなに回復魔法を使った。


 やはり、クッションが無いと車から伝わってくる振動が酷く、お尻が痛くなったのだ。

 とは言え、スピードだけはあり、馬車で3日掛かる距離を、約8時間程で到着出来たのだから文句は言うまい…。

 お陰で、もう少し遅かったら真っ暗の中を運転するか、野宿をするかと言う事になる所だったりもする。


 そんな事を改めて思うと、僕の作った車は、まだまだ改良の余地が残っている。


 まぁ、何はともあれ…美味い物を食べに行こうと思ったのだが…アオイに入るのは明日にして、僕達は〖魔法:空間転移ゲート〗を使い、家に帰る事にした。


◆◇◆◇◆◇◆


「お帰りなさいませ、ご主人様。」


 僕達が家の玄関に現れて数秒、アリスが僕達の前に姿を現す。


「ただいま、アリス。

 えっと…お風呂の用意と、食事の用意をお願い出来るかな?

 それと、僕はちょっとギルドまで出掛けてくるね。」


 僕はアリスにそう伝えると、プリンだけを連れてギルドに向かった。


〔ご主人様、どうしてメルトへ戻ってきたのですか?〕

〔あぁ、ポプラさんに情報料を支払いに…ね。〕

〔なるほど…オーク肉のお土産…って話ですね。〕

〔そう言う事だね。〕


 流石に人がいる所で、僕だけブツブツ話すと独り言を言う変なヤツと思われてしまうので、プリンとの会話は念話で話している。

 それで、何故、お土産かと言うと…移動中に倒したオークの数は全部で8匹。


 レアドロップ品のオーク肉は1つでも出れば上等…20匹倒して1個出れば良い方だと言う情報だった。

 それなのに3つもオーク肉が出た…だから、間違って食べてしまう前に届けに戻ったのだ。


◆◇◆◇◆◇◆


『ドンッ!』


 僕はギルドに入るなり、ポプラさんの姿を確認。

 そして、彼女の前に行き…お土産を目の前にオーク肉を置いた。


「こ、これはッ!?この色と良い、艶と良い…間違いない、オーク肉ですね!」


 ギルドの中に彼女の声が木霊こだました。

 その所為で周りにいた冒険者達までも寄ってくる。


「おぉ、マジでオーク肉じゃん!」

「へ~、コレがオーク肉か…美味しいって聞いたけど…食べてみて~!」

「どこで手に入れたんだ?」


 等々、一瞬でギルドが賑やかになる。


 そして…このままではオーク肉を取られると思ったのか、ポプラさんはいつもの動きとは違い脱兎の如く、オーク肉を持って、奥へと消えてしまった。


『ドカーーーンッ!』


 そんな謙遜を掻き消すかの様に、ギルドの奥から激しい音がした。


『ガチャッ』


 みんなが注目する中、奥の扉のドアが開いた。


「ち、ちょっと肉を分けてくれと言っただけなのに…バタッ!」


 それだけ言うと…ドアから出てきた、ギルドマスターのラオンさんが倒れた。


「自業自得です。」


 そう言うと、ポプラさんは元の席に戻り、通常業務に戻る…。


「って、ボーと見てる場合じゃない!ポプラさん、いったい何があったんですか!?」

「なにって~ラオンが~私の~肉を~奪おうとしたから~成敗しちゃいました~。」


 …いや、さっきラオンさんが倒れる時に『ちょっと』と言っていた。

 それすら許さずに、問答無用で攻撃して倒したと言う事になる。

 食べ物に関しては態度が急変するのは前回よく知ったと思っていたが、認識が甘かった様だ。

 ラオンさんが可哀想だから、明日の朝、復活したラオンさんにオーク肉を少し分けてあげよう…。


 そう思いながら、僕達はギルドを後にするのであった。

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