47ページ目…懐柔

 プリンが人型になり、笑顔をクズハに見せると、少し落ち着いたのか、口から手を離した。


「わ、わたしは…クズハ、クズハ・オサキ…です。

 ご主人様…ムゲン様は、プリンさんのご主人様なんですか?」

「残念…私の未来の旦那様よ♪」

「今は、彼女だけどな…。」


 と、僕はすかさずツッコミ入れる。


「ぶ~ぶ~、ご主人様、ちょっと酷いです。」


 と、文句言うのでプリンを手招きして膝の上に座らせる。

 すると、すぐに機嫌が良くなった。


「クズハ、大事な話があるんだ…ちゃんと聞いてくれるかな?」

「は、はい…。」

「うん…ありがとう。

 えっと…さっきも言ったが、僕は、このプリンの事を大事に思っている。

 また、プリンも僕を大事に思ってくれている。」

「大事って言うより、愛しています。」


 と、プリンがツッコミを入れてくる。

 どうやら、プリンにとって大事と言う言葉では足りなかった様だ。


 だが、今は話が進まなくなるので邪魔なだけだ。


「だから、話が進まなくなるでしょ…。」


 と、僕は苦笑しながら、プリンの頭を優しく撫でてあげる。


「だから、クズハには強制はさせたくないんだけど、プリンと仲良くなって貰えないかな?

 ま、魔物だからって、良いヤツも悪いヤツもいるんだ…。

 いきなり言われても信じられないだろうけど、プリンは良いヤツなんだ…だから、怖がらず仲良くしてあげて欲しい…。」


 プリンの事を魔物と言いたくないからか、どもってしまったが…そう言うと、僕はクズハに頭を下げた。


「わ、分かりました…仲良くします…。」

「そうだよね…いきなり仲良くしろって言われても…って、良いのッ!?

 自分で言っておいて何だけど、そんな簡単に仲良くって…。」

「じ、実は…妖狐族は狐族と違い、魔物と同じ扱いをされる事が稀にあるんです…。

 だから、その…魔物だからってだけで悪者にされる辛さは分かるつもりなんです…。

 そ、それに…人族が魔物と愛し合う事が出来るなんて、すごく素敵ですッ!」


 いろいろと妙な話になった気もするが、特に問題なく仲良くしてくれる様だ。

 僕としては、命令をする必要がなくなって良かったが…。

 妖狐族か…ただの獣人に見えるんだけど、魔物扱いされるほど危険な種族なのか?

 と、心配していたのだが…プリンから爆弾発言が飛び出した。


「クズハさん、あなたもご主人様の物になったんだから、身も心もご主人様に捧げ、その命尽きるまでご主人様に尽くしなさい…良いわね?」


「は、はい…こんな私で良ければ、必ず!」


『ガシッ!』


 と、互いに手を取り合い、お互いに何かの決意を込めて頷きあった。


「では、あなたもご主人様に愛される許可をします。

 共に、ご主人様を満足させましょうね。」


 と、聞いてはいけない言葉が聞こえた気がする…なので、聞かなかった事にする。


「えっと…二人とも、自己紹介が終わったなら…そろそろ買い物に行こうと思うんだけど…良いかな?」


 そう言うと、二人とも大きく肯いてくれた。


「あ…言い忘れたけど、クズハ…プリンの事は、他の人達には絶対に内緒でね。

 そうしないと…プリンが討伐とかなったら、僕は一生後悔する事になるから。」

「だ、大丈夫です!ご主人様、私もご主人様に嫌われない様に…愛される様に頑張ります。

 それと…私はご主人様の奴隷なんですから命令して下さい!」

「い、いや、愛されるとかじゃなくて…それに、秘密にしてくれるなら命令とかしないから…ね。」

「フフフ…ご主人様、クズハさんは私の事をちゃんと秘密にすると言ってるのですよ。

 何せ秘密にしないで、ご主人様に嫌われたら愛して貰えなくなりますからね。」


 と、プリンが意味ありげに笑いながらフォローを入れてくれた。


「…とりあえず、二人とも…買い物に行くよ?

 それと…クズハ、僕の事はムゲンで良い…ご主人様はプリンだけで十分だから。」


 と、僕が言うと何故かプリンの顔が赤くなり、代わりにクズハの顔は少し残念な顔に変わった。


「それなら…ムゲン様とお呼びいたします。」

「『様』じゃなく『さん』くらいが嬉しいんだけど…。」

「そこは譲れません、ご主人様とお呼び出来ないのなら、ムゲン様とお呼びいたします。」

「…だったら、ご主人様よりはムゲン様が良いです…。」


 クズハのあまりの真剣さに押し負けてしまった。

 若干、逃げ腰になってしまったが、みんなで町に買い物に向かう事にする。


「プリン、お留守番が嫌なら、また鎧化してくれるかな?

 あと…クズハも、食料やら服やら…色々と買う物があるんだから、準備急いでね?」


 僕が二人に声を掛けると、二人仲良く返事をした。


「「はい!ご主人様♪」」


 って…クズハ、お前はムゲン様と呼ぶんでしょ?と思いつつ、二人を連れて買い物へ向かう準備をしたのだった…。

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