45ページ目…宿屋へ

『ボッ!』


 クズハと奴隷契約を済ませたら、いきなり契約書が燃えてしまった。

 だが、それは契約したら必ず起こる現象で、燃えないと言う事は契約が成されていない証拠でもあった。


 あの後、僕達は役所の人から奴隷譲渡の書類を受け取った後、すぐに奴隷市場に来た。

 そして、奴隷商人に貰った書類を見せたら、店の奥に案内され…あれよあれよと話が進み、クズハは僕の奴隷となった。


「これで手続きは完了です。

 今から、その子は、正式にムゲンさんの奴隷になります。」

「えっと…契約書が燃えたんですが、良かったんですか?」

「はい、契約書が燃えた事により、見えない鎖と言いますか…絆と言いますか…2人の間に主従関係が結ばれました。」


 なるほど…なんとなく理解出来た。

 っと、クズハの首輪について聞かないと…だな。


「そう良いば…この子を奴隷から解放する事は出来るんですか?」

「えぇ、それは可能ですが…奴隷も立派な財産ですから、まず解放する人なんていませんよ?」


 へぇ~、そうなんだ…一生奴隷なんて、なんか可哀想だな…。


「あ、あの…私、もう帰る場所がないから奴隷から解放しないでください、お願いします!」

「えッ!?そうなの?」


 クズハの事を開放しようと思ったら、奴隷のままが良いと言われるのは予想外だ。


〔ご主人様…町の中だと私が手伝えない時もありますし…この子に手伝わせてみては?〕

「そ、そっか…なら、このまま、宿屋に向かう事にしようか…。」


 と、念話で言って僕は宿屋の場所を見た。


 一応…念の為…と、断ってからだが奴隷商人に、首輪の外し方だけ聞いて宿屋に向かうのであった…。


◆◇◆◇◆◇◆


 ってな訳で、大した事もなく僕達は無事に宿屋に着いた。

 なんでも、ここの町には珍しく温泉が湧いてる場所があるらしく、温泉に入れる宿屋との事だ…やはり風呂と言う物は日本人にとって命の泉だと思う。


「あの、部屋を借りたいんですが…2部屋空いてますか?」

「あちゃ~!お客さん…今日は珍しく予約客で一杯でして…生憎あいにくと、空いてる部屋は2人部屋が1部屋しか空いてないんですよ…。」


〔同じ部屋か…プリンの事もあるし…どうしよっか…。〕


〔ご主人様、クズハさんはまだを着けたままですから、騒がない様に言えば大丈夫だと思われますが?〕

〔なるほど…プリンがそう言うなら大丈夫なのかな…。〕


「…クズハ、僕と一緒の部屋で大丈夫かな?」

「は、はい、大丈夫です…と言うか、私でしたら馬小屋の隅でも貸していただければ、それだけでも…。」


 馬小屋の隅って…それなら同じ部屋の方が何倍もマシだろ…。

 そうと決まれば…その部屋を借りよう。


「えっと…なら、その部屋をお借り出来ますか?」

「はいよ、なら…一泊、400ゴルドだよ。」


『チャリン…チャリン…チャリン…。』


 400ゴルドとの事だったので、僕は大銅貨4枚で支払う。


「はい、確かに…じゃ~コレが部屋の鍵ね。

 部屋は2階の一番奥の部屋だから、すぐに分かる筈だよ。

 あと、食事は1階の食堂で食べる事も出来るし、外へ食べに出ても良いからね?

 うちで食べるなら、サービスするよ。

 それと、風呂の順番が来たら、部屋に呼びに行くけど…留守だと最後に回すから注意しておくれ?」

「了解です…それなら先に部屋に荷物を置いて、食事とかの前に町で買い物を済ませて来ます。

 部屋の鍵はどうしたら良いですか?」

「あぁ、それなら鍵は預かっておくよ。

 その代わり、このカードを持ってお行き。

 帰ってきたら、そのカードと部屋の鍵を交換さね。

 まぁ、酔っぱらって鍵を無くすお客さんが多かったから、紛失対策って事で…ごめんなさいね?」


 なるほど…そうやって鍵を無くさない様にするのか良いシステムだ…と思う。

 じぃちゃん曰く、備えあれば嬉しいな…じゃなかった、備えあれば憂い無し…ってヤツだ。

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