31ページ目…真・初めての魔法

 小枝を踏んだ事により敵に気付かれ、既に戦闘開始状態になった。

 故に、スライムに骸の魔銃を向けたのだが…その瞬間、スライムは青い光をまとうと、石の刃を飛ばしてきた。


『シュシュシュシュシュ…ボンッ!』


 どうやらスライムの放ったのは〖魔法:石の刃ストーンエッジ〗の様だ。

 先ほど、〖神の目〗で魔法を覚えた時の説明文を確認したから間違いはないだろう。

 僕は、そのスライムの攻撃を躱しつつ魔銃で反撃…何とか一部の石の刃を魔銃で迎撃する事に成功したみたいだった。


 ちなみに…迎撃が出来たからか、スライムの攻撃は、なんとか一発も当たる事なく回避出来た。


 だが、この攻撃はヤバイ、ヤバ過ぎる…このスライムを倒す事など僕のレベルでは無理だ。

 ダメだダメだダメだ…高確率で死ぬ!そう本能的に理解した。


 とは言え、このスライムのレベルは高いが動きが遅い…まぁ、スライムが遅いのは種族特有なのだろうが…。

 僕は逃げる為に周囲を見渡す…しかし、川原だから身を隠せる場所が無い…。

 全力で走れば…とも思わなくもないが、魔法の方が早く逃げられそうにない…。


 つか、何だよッ!?僕がいったい何をした!!

 そりゃ、スライムが僕を襲うのは生きる為なんだろう。


 死んだじぃちゃんも、この世は弱肉強食だと言うのが口癖だった。

 でも、只でさえ空腹でイライラしてんのに…これは酷いじゃないかッ!!


 僕は冒険を楽しみたいのであって、戦いたい訳じゃない。


 あ〜くそ~ッ!僕はだんだん怒りがこみ上げてきた。

 レベル差がなんだ!てめ~なんて駆逐してやる!!

 僕の怒りが限界を突破した…。


【称号:〖憤怒ふんぬ〗を獲得した。】


 あぁ~!憤怒だッ!?んなもん、知った事か~ッ!!


 僕は理不尽な運命にぶち切れた…えぇ、これでもかって程、ぶち切れてやりましたとも!

 その所為で、一つ失敗する事になってしまった。


【やっほ~♪留守電聞いたけど、無詠唱が使いたいんだっけ~?】


 うるさい!今忙しいんだから後にしろッ!


【きゃッ!ご、ごめんなさい!】


 あ、先生じゃん…ごめんなさい…。

 ちょっと…じゃない、かなりイライラしてて八つ当たりをしてしまいました。


 うわ~、めっちゃ恥ずかしい…急激に怒りのパロメーターが収まった。


【い、いえ…忙しい時に声を掛けた私も悪かったですから…。】


 いえいえ、僕が全部悪いんですから、先生は謝らないでください。

 と言うより、本当はグッドタイミングでした。


【えっと…どう言う事ですか?】


 いえ、魔法を使いたいんですけど…詠唱なんて知らないから…〖無詠唱〗なら詠唱自体必要ないですよね?


【そうですね…詠唱を必要としないから無詠唱なんですから…ね。】


 でも、灯火の魔法を使おうとしたんですが、魔法が使えなくて…。


【あ~…基本的な所が判ってないのかも?】

【無詠唱って言うのは、魔法の効果と、その魔法が引き起こす現象を理解して無いとダメなの…。】

【本来なら、ちゃんと詠唱をして魔法を使って…その時の魔力の流れを覚えて…詠唱無しで魔力の流れを再現する…ってのが、無詠唱を使うコツね。】

【ちなみに…巨大鼠が使った炎が、今、使いたいって言ってる灯火だっけ?】

【あと…巨大鼠の灯火はレベルが高かったから、かなりの大きさになってから灯火ってイメージが湧かなかったみたいね。】


 先生、グッジョブ…知りたい事がよく分かったよ。

 どうやら、無詠唱を使うのに魔法の効果を正確に理解する必要があった様だ。

 その為、本来なら〖無詠唱〗が発動する場面でも不発に終わっていた様だ。

 何て事はない、結局の所、発動しなかったのは使い方が分からないと言うよりも、魔法を理解していなかった…と言う事か…。


 あ、先生…ついでに〖多重詠唱〗の説明もお願いします…。


【えっと…多重詠唱は、魔法を使う時に発動させるのを途中で止めて留めた状態にしておき、再度、魔法をって感じで、魔法を何層にも積み重ね…最後に発動させる…かな?】


 いまいちピンと来ないが、何となくは理解が出来た。

 何層にも重ねるって説明で、ミルフィーユって御菓子が頭に浮かんだからだ。


 確かに、鼠が使ったアレが灯火なら〖神の目〗で説明も判ってるし、実際にどんな魔法かは見た。

 それに、謎の声さんの説明で巨大鼠の灯火がデカかったと言われた…なら、アレを小さい火の玉と思えば良いはずだ。

 ならば…僕が魔法を使った時に起こる現象も分かる…さらに〖無詠唱〗の条件は満たされた事になる。


 とりあえず…試しに最小火力で灯火を使ってみる。


「〖魔法:灯火〗!」


 次の瞬間、僕の目の前にビー玉ほどの小さな火の玉が出たのだった…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る