第225話 アンデッドの違和感
皮膚も変色し白目を剥き意味不明な言葉を喚き散らし、ボロボロの装備を身に纏って傷だらけの状態ながらプレスに向かってくるメイスを手に持った女性冒険者。すでに自我を保ててはいないようである。しかしその容姿は冒険者ギルドで黒い人型の魔物が化けていたA級冒険者のレイラであった。
「アンデッド?ゾンビにされた?」
闘争本能のみを剥き出しにして襲い掛かってくるその様子は
しかしゾンビにしては行動が異常に俊敏である。強大な魔物などは例外的に魔力を纏ったりする場合もあるが敏捷性が向上するということをプレスは見たことも聞いたこともなかった。
振り回されるメイスを捌きつつ魔石があるだろう心臓を貫くことは可能であったプレスであるがその俊敏性に疑問と違和感を覚え攻撃を捌き続ける。
「レイラさん…、すまない…」
そう呟いて再度腹に蹴りを入れて吹き飛ばしたプレスは電光石火で向き直ると黒い魔物へと斬りつけた。慌てて魔物が回避行動をとる。
「貴様…、何をした…?」
プレスの口調が変わる。怒っているようだ…。
「フフフフフ。死ンデイルト思ウカ?ナラバ滅ボスガイイ。フフフフフ…」
「何…?っと!!」
「ガア!!!」
プレスが訝しげな表情を浮かべた瞬間、横に飛び退く。プレスが想定していたよりもかなり早いタイミングで間合いを詰めてきたレイラがメイスを振るう。振るわれたメイスは地面を打ち付け凄まじい衝撃音が轟く。同時にレイラの腕が嫌な音を立ててあらぬ方向へと折れ曲がり、肘の付近から骨が飛び出す。
「ゴアァ!!」
そんな腕の状態に構うことなくレイラがプレスを追撃する。その動きはA級冒険者ができるような動きではない。人族の限界を超えた速度で踏み込むレイラの大腿部が裂け嫌な音がと共に血が噴き出る。限界以上の動きを行っているのだろう。ついていけないレイラの身体が悲鳴を上げている。プレスは苦悶の表情で攻撃を捌き続ける。その様子は人族であるレイラへの攻撃を躊躇し、レイラからの攻撃を困惑しながら捌いているかのように見えたであろう。
すると視界の端に捉えている黒い魔物が動きを見せる。
「生キテイル者同士デ殺シ合イヲ楽シンデクレ…。ココハ退カセテモラウ…」
そう言った黒い魔物の右手には転移の魔道具が握られている。どうやらあの魔道具はスワン司教の結界を越えることができるらしい。侵入のときに使用しなかったのは彼らにとっても貴重な魔道具なのかもしれない。魔道具が起動し魔法陣が浮かび上がり魔物は姿を消す。プレスは追わない。全てはプレスの目論見通りである。プレスは神速をもってレイラとの距離を取った。
「ガアァ!…………ガ…」
レイラが動きを止める。生気のないその眼にプレスの姿が映っているかは分からない。その眼前のプレスは足元に背中の木箱を下ろしている。プレスの全身から発せられる先程までとは全く異なる気迫に気圧されるレイラ。
「やっと邪魔者がいなくなった…。レイラさん!あなたの状況を確認させてもらおうかな…。一体何をされたのか…」
そう呟きながらプレスは懐から紙を取り出し右手の人差し指と中指の腹を噛み、流れる血で魔法陣を描く。完成した魔法陣を箱の側面に押し当て唱えた。
「
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