第165話 竜に騎士を紹介する
会議室に集まったのは十名。宰相のマテウス、その娘であるマリアと騎士のアーリア、ギルドマスターのフロイツェンと状況を把握している受付嬢と事務員が二名、レーヴェ神国聖印騎士団のミケとサラ、プレスとティアが集まっていた。
最初にプレスはティアにミケとサラを紹介する。最初に目上の者へ目下の者を紹介することが礼儀であるため、プレスは暗にティアがミケやサラよりも上であると暗に周囲の者に伝えていた。しかしそれに異議を挟む者はその場に一人もいない。ミケもサラもこの大陸有数の実力者に数えられる。一対一では絶対に勝つことが出来ない存在である…と、彼女たちは一目でティアの実力を理解していた。
その結果、ティアは二人を気に入ったようであり、腕試しが好きなミケなどはさっそく『姉さん』と呼び懐いた挙句に『いつか模擬戦を』との約束までしていた。その模擬戦による周囲への被害を想像してプレスは唯々遠い目をするしかなかったのは秘密だが…。
そしてそれ以上にミケとサラはプレスがティアを相棒としていることとティアの美しさに驚いていた。
「団長が…、団長が…、団長が女の人と旅をするなんて…、サラ…」
「ええ…、ミケさん…」
「「グスッ!」」
二人とも目に涙を浮かべている。
「団長…。とうとうユリア姉さんとの約束を守るんだね!あたいは…。あたいは嬉しいよ…。姉さんからはくれぐれもって言われていたから…。でも出て行っちゃったから…」
「ううう…。
「こらこらこら!おれはまだ神殿を見つけてないからな…?旅はまだ止めないぞ?」
慌ててそんなことを言うプレスに二人がジト目で詰め寄る。
「ヘタレ…。こんな美人を連れているくせに…。姉さんのお墓が風化しちゃうぞ!」
「その伝説的な武勲からは考えられないほどの勇気の無さです…」
あまりの冷たい視線にプレスからは冷や汗が噴き出る。
「モ、モウシヒラキモアリマセン…」
辛うじて命乞いをする。
二人はそんなプレスに構わずティアを誘い唖然とする周囲を余所に会議室の隅へと移動しコソコソと話を始めた。途中でマリアとアーリア、受付嬢まで呼ばれる。
「これはあたいら女同士の話だ!団長たちは報告でも相談でもしておいてくれ!」
ぎゅっと圧縮された殺気を飛ばされマテウス、フロイツェン、事務員、プレスの四人は急いで彼女たちに背を向け反対側の一角へと集まるのだった。
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