第65話 その後のシナリオとは…
「トム、すまない。あれは公国の所有物だったはずだけど、見過ごすことも出来なかったから斃したよ…」
近づいてきたトム達にそう声をかけ先ほどのリビングアーマーについて説明するプレス。
「そのようなリビングアーマーが存在していたとは…。そのような事情であればプレスさんによって解放されたという今回の結果が最善と私も考えます」
「ありがとう、トム」
「かたじけない…」
プレスとティアは感謝の言葉を述べる。
「プレスさん…。これで継承の儀は終わったということになるのでしょうか?」
「まだダンジョンからの帰還が残っているが大体なんとかなったね」
それを聞いたトーマスとユスティが頭を下げる。
「プレスさん。本当にありがとうございました。貴方に出会えてことが私の運命を変えました。心から感謝します」
「プレス殿…。私からも礼を言わせてもらう。殿下をお守りくださり、私の命まで救って頂いた。貴公は恩人であり最早この国の英雄だ。私は全てに感謝する。本当にありがとう…」
サファイアが跪くとカダッツとミラの二人もそれに続いた。
「待って待って!まだもう少しだけすることが残っているし、無事に帰って報告完了するまでが依頼だからね?それと猪に追いかけられるっていう無茶な出会いを造ったガーネットにも感謝を忘れないで!」
皆から頭を下げられ戸惑うプレスはそう答えていると、空間の中心に魔法陣が二つ現れた。皆と移動し内容を確認して笑みを浮かべるプレス。
「どうやらこのダンジョンが踏破されたとみなされたらしい。あの魔法陣に乗れば特定の場所に転送される。一つはダンジョンの入り口。もう一つは…。街の郊外かな…」
「そんなことが可能なのですか?」
「プレス殿?私もそんなことは聞いたことがないぞ?」
驚くトーマスとサファイアにプレスは答える。
「あまり知られていないことだけどね。ダンジョンを踏破した場合にはこんな風に魔法陣が現れることが多いんだ。ただ踏破の条件はどんなダンジョンでも簡単ではない筈だよ?このダンジョンだってあのリビングアーマーを斃して踏破と認められるくらいだからね…。ここであっても普通の冒険者ではまず無理かな…」
「た、たしかに…」
サファイアが息を呑む。サファイアはプレスとリビングアーマーの戦いを見てはいたが完全に人外のものであった。サファイアではあのリビングアーマーに一刀のもと真っ二つにされていただろう。
「さて魔法陣も見つけたしこれからの話をしようか…。トム、ユスティ、サファイア、カダッツ、ミラ。君たちとはここでお別れってことになるかな?」
「「「「「え?」」」」」
五つの声が重なる。
「生き残ったのは君たち五人。宝玉を手に入れた際、強大な魔物が発生したため冒険者達がその犠牲になり君たちはかろうじて帰還することに成功した。さらに最深部で何らかのダンジョンの機構が動き出し強力な魔法が発動。その魔力に飲み込まれ魔物は消滅した。って感じかな…?」
「それでは…」
口を開きかけたサファイアを制してプレスは続ける。
「君たちには冒険者の名誉を守ってもらいたい。勇者候補の冒険者パーティと引退した冒険者シングルトンが命を懸けて活路を開いたおかげで生還することができたというシナリオにしてほしい。そして渡した冒険者証を使って遺族を探し何らかの報奨を与えてやってほしいんだ。シングルトンは経歴不明で構わない」
「貴公はそれでよいのか?そのような形では何も貴公の功績に応えられはしない…」
サファイアが問いかけるがプレスはいつもの調子で答える。
「おれは静かな旅ができればそれでいいんだ。冒険者の地位がこの国で向上するのであれば歓迎したいしね。それにティアを連れて入り口に戻ったら大騒ぎだろ?ティアの従魔登録は他の街でゆっくりやるさ。ただテイマーがドラゴンをテイムしたって話は前代未聞だよな…。ま、その辺は後から考えよう…。それにこれを渡しておく」
プレスは既に小さな体になって頭にくっついているドラゴンを撫でながら一枚の小さな紙を取り出す。
「これは?」
「ギルドが発行する冒険者証の写しだよ。これをギルドに持っていけば送金の手続きが取れる。報酬を宜しくね?」
「必ずや…」
いつもの調子で微笑むプレスにサファイアは力強く答えるのであった。
「トム!ユスティ!おれはここまでだ。後のことは君たち次第だね。第二夫人のシーラルを安心させてやってくれ。おれたちは君たちが転送された後、この周囲を封印してもう一つの魔法陣で街の郊外に移動するよ」
「プレスさん…。本当はあなたを主賓に招いて盛大な祝いの席を設るところですが、あなたの意向と今後のことを考えるとあなたの考えに沿うことが最高なのでしょう…。我々は先に行きます。何から何までありがとうございました」
そうトーマスが答え全員を促す。プレスとティアを除いた五人が魔法陣に入る。魔法陣が起動し魔力の光が彼らを包む。
「プレス殿…。さらばだ…。」
「本当にありがとうございました…」
サファイアとトーマスの言葉を残し魔法陣の光が消える…。
「さてと…。ティア!封印の魔法は使えるかな?」
「無論だ!主殿!」
「ではこの最下層を封印しようか?内側から封印しても魔法陣は機能するよね?」
「うむ。もしダメであっても我であれば封印を超えて転送魔法を使えるので問題は無い!」
「よし!ではとびっきり強力な封印を最下層にかけようか?ティアを封印していた奴らの度肝を抜いてやろう!」
嬉々とした二人は作業に取り掛かるのであった。
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