愛理サイド(2)
私は彼の母親が狂い妹を連れ、置いて行ったことを知ったのは3年たち彼が中学に上がろうかというくらいだった。彼はその間ずっと連絡を断ちミーナの家庭で育ったと聞いている。
だが今現在の高校生になった彼をみて私は確信した。彼は捨てられたのではないと。彼の纏うオーラは彼の父親と私の兄を錯覚させるような物だった。
そう覚悟を決めた。守るべき者が居る目だ。それが誰なのかはわからなかった。私だと思いたい。しかし彼は私に嘘をついた。悪意は無かった。私の為を思って言ったのだと思う。もし、兄が生き返るのなら嬉しいことこの上無いだろう。それが兄が望んでいなかったとしても、私は会いたいと思う。
多分、彼は敵対するなら最初から敵意を出して欲しかったのだと思う。彼はそういう人だ。臨機応変という言葉が苦手、丹念に計画通りの基礎を築き建物を建てる。絶対にあり得ないと言えるその当たり前を実現させる。
工業とは絶対に計画通りに事は進まない。
しかし、それを計画通りに行ってしまう。そんな彼は以上だった。それが為せるだけの基礎が既に建っていた。彼の父親によって造られた基礎は彼の計画に変更を与えさせない。
嵐が吹こうが雪が積もろうが建材が来るまで永遠に耐えるだけの基礎がそこにある。
ゆっくり、確実に彼は何かを練っている。もう私は敵だと思われているだろう。彼はそう信じて疑わない。だからこそ、私は敵になる。それだけの材料がまだあるということ。
私はそれを探るべく行動することを決意した。
もし、彼の敵になったとしても彼を殺さないために。
この時、私は彼の受け継いだ物を知らなかった。
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