第16話
喫茶店が終わると俺はミーナとリュヒルを返して店に残っていた。
「マスター。」
「ああ、空間の歪みが感じられるね。最近多いね。」
これが俺の本来の仕事。異界からの使者を殲滅する。
「自然発生じゃない物も増えているからな。」
「アーススキルか。彼はもしつこいね。相当優秀な魔術師か僕と同じ能力者がいるのだろうけど。今日も任せていいかな。」
「あいよ。」
従業員用の入り口から地下室に行きマスターは扉を開けた。中はそこそこの広さの訓練場。そこでマスターは空間の歪みをこちらに向けさせた。
「流石、【魔眼師】のスキル凄えな。」
「魔眼師はBランクの魔眼使いと違って制約も無いからね。なるべく早く頼むよ。早いとこ君が来てくれないと娘にどやされるからね。」
「あんまり関わりたくないんだけどな。」
「まあまあそんなこと言わずにさ。僕の家族での地位が確立されるんだから。」
この中年親父は家族からお株が低いので娘からの支援を受け成り上がるためイグアスを利用しようとしていた。
「おっさん醜いぞ。そんくらい自分で頑張れよ。」
「頑張りたいのは山々なんだけどね。君が娘に口聞いてくれないと私は話すらしてくれないのでね。今日は珍しく上機嫌だったしもう一押しすれば妻からの株も上がりそうだからさ。」
それほどまでに家庭内における男性の地位は低かった。やはり子どもをしっかり育てた専業主婦にとって子どもも自分の一票になるらしい。
「っとそうこうしている間に定まってきたな。」
俺は槍と安全帯を装備する。
「今回は何が出るかな。鬼かドラゴンか、それとも異界の神か。」
「おいマスター、なんで面倒なの確定なんだよ。」
「だってこの歪み人工だもん。立ち悪いよこれ。多分昔のスキルが存在しなかった陰陽師辺りの術式の生贄ありきのものだし。魂も人工のものを使って生贄を擬似的に節約したみたいだけどそれでも強力なものが出ることには変わり無いよ。」
マスターの魔眼師は全てが制約抜きに使い放題でできることが特徴。言わばチートだ。だが弱点もある。脳の処理が追いつかないこと。だがマスターはとある方法でそれを克服した。それによって通常の魔眼師以上の実力を持ちスキル昇華を行っていないにもかかわらず同じAランクスキルのスキル昇華した者を圧倒できる実力を持っているのだ。
その人間が立ちが悪いと言うほどに面倒な術を使える者が敵側にいるということ。
「はあマジで面倒だ。アレ使っていいか?」
「ダメダメ、アレ使ったらここ壊れるでしょう。せめてこれ使って。」
マスターから投げられたのは電動ドライバーを改造した槍の穂先だった。
「わかったよ。じゃあやるか。」
空間が完全に形成され異界からの使者が来た。
「ヒュー、ありゃあ悪魔さんかい。」
山羊の頭、女の胸、男性器、蝙蝠の翼。古より語られし邪神像が現れた。
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