第四二話

 サラとラッセルは馬車へ乗り込む。ステラとロビンは遅れて次の馬車で城へ向かう。カイルが

「サラ様、凄い歓声でしたね。なんだか本当の市民の御披露目のようでしたよ」

「本当にありがたいです」

「サラの人柄だ」

ラッセルはサラの肩を抱く。二人は、微笑みながら見つめ合う。

「これからはずっと一緒だな」

「うん。そうだね」


程なくして、馬車は城に到着した。使用人達が、ラッセル達を待ち構えている。

「お帰りなさいませ」

「今、戻った。サラを部屋に案内してくれ」

使用人達が、ザワザワとしてる。

「お綺麗だけど、本当に伯爵令嬢なのかしら?」

「だって、あのベル家よ?」

使用人達の間では、サラの噂は広まっており、皆良い印象を持ってないようだった。そんな中、ソフィアが前に出る。ベル家の使用人だったソフィアは、テレーザの事件以来、城で働き初めていた。

「サラ様、お久しぶりでございます」

「ソフィアね。元気そうで良かった」

「ええ、サラ様も。本当に私嬉しいです...またサラ様に仕える事が出来て」

ソフィアは涙ぐむ。

「私、何も分からないから、宜しくお願いね」

「もちろんですっ!全力でサポート致します」

と言い、周りの使用人達を睨み付ける。


ソフィアは、サラを部屋へ案内すると、途中レオがサラを待っていた。

「サラ...サラ姉さん。ゴメン....あの時は」

「レオ王子、もういいのですよ。お母様はどうされましたか?」

「うん、相変わらず。俺が話しかけても全然反応しない」

「そうですか。私に協力出来る事があれば、何でも言って下さいね」

「やっぱり、サラがいいな....」レオは小さく呟く。

サラは首を傾げると

「ううん、何でも無い....」

「レオ王子、これから宜しくお願い致します」

「分かった。これから宜しく」

レオに挨拶を済ませると、ソフィアが

「私、レオ王子って好きではありませんっ。だってサラ様を落とし入れようとしたのですよ?」

「そうかも知れないけど、色々あったと思うの。だから、そんなに嫌わないであげて」

「サラ様は、優しすぎますっ」

「私もね、ベル家にいた頃は、辛かったから。人は良い面ばかりを持ってる訳では無いと思っているの。だけど、なるべくなら、皆が幸せになって欲しいと思ってる」

「やはり、サラ様は天使ですね。分かりました。私、サラ様をお守りしますから」

「ふふふ、ありがとう。でも無理はしないでね」

ソフィアはサラを部屋に案内する。部屋に入ると

「サラ様、ラッセル王子も後で来られると思いますので」ソフィアが部屋を後にした。

部屋が広すぎるのか、サラは落ち着かずソワソワしていると、部屋の中に扉があるのを発見した。

「もう一つ部屋があるのかな?こんなに広くなくていいのに....」

サラは、扉を開ける。

「サラ、やっと気づいたな」

そこには、ラッセルがソファーに座っていた。

「ラッセル?」

サラが驚いていると

「ははは、驚いたか?」

「いつの間に部屋に入ったの?」

「ここは、俺の部屋だ。サラの部屋と繋がっているんだ。これならいつでも会えるだろ?」

「そうなの?ビックリした。いつでもラッセルに会えるのは嬉しいかも」

「サラ、ここにおいで」

ラッセルは手招きをする。サラはソファーに向かうと、ラッセルはサラを自分の前に座らせ、後ろから抱きしめる。サラはラッセルにすっぽりと包み込まれた形になる。

「やっぱり、いいな....これから、妃教育とかお披露目の夜会などが始まる。サラにとっては、窮屈かもしれん」

「簡単な事じゃないとは思ってる。私頑張ってみようと思う。皆からはまだ信用されてないのも分かってるし、だけどこんな事で挫けてたら、ラッセルの奥さんになんてなれないもの」

「頼もしいな。だがあんまり無理するなよ?」

「もちろん。それにお母さんもお父さんもいるしね」

「ああ。強力な助っ人だな?」

ふふふ。と笑うと、サラはラッセルの方を向き、二人は自然と顔を近付ける。ラッセルはサラに深くキスをする。

「んっ...」

唇が離れると、

「ずっとこしていたいな…」とラッセルは呟く。

「大丈夫。これからはいつでも会えるんだから」

「ああ、そうだな。これから、父に会ってくれるか?」

「もちろんだよ」

二人はアーサーの元へ向かう。


コンコンコン_


「父上、宜しいですか?」

「ラッセルか。入れ」

部屋へ入ると、サラが

「初めまして。サラ・レベッカ・ベルと申します」

とお辞儀をすると、アーサーは、ベットに横になっていた体を起こす。

「あなたがサラさんか。こんな姿で申し訳ない。倒れてから、全てラッセルに任せているんだ。ウィリアムの件ではすまなかったな。私が元気なら何とかしてたのだが、迷惑をかけた」

ゴホゴホとアーサーは咳込むと、サラが

「大丈夫ですか?」と王の背中をさする。

「皆が言ってた通りの女性だな。いい人を見つけたな。ラッセル」

「ええ、かけがえの無い人に出会えました」

アーサーはサラの手を握ると

「サラさん、これから、ラッセルを支えてやって欲しい。私も長くないかもしれないからな」

「そんな事おっしゃらないで下さい。これからだって元気になるかもしれませんから」

「そうだな。孫の顔を見るまでは死ねないな」

「そうだぞ。俺もまだまだ父上から色々教えて欲しい事が沢山あるんだ」

「ああ、そうだな」とアーサーは答えると、疲れたのか、そっと目を閉る。

「父上、ではまた来ますから」

サラは深くお辞儀をすると二人は部屋を出る。

「元気になられればいいね…..」

「心配ないさ。サラこれから宜しく頼むな」

サラとラッセルは、手をつなぎ部屋へと戻るのだった。

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