降誕祭の使い人

鳥位名久礼

序、夜汽車

鳥位名 久礼とりいな くれい・編

セッション日:2020年2月16日~2021年5月28日

 LINEにて(リレー小説形式による)


◆主な登場人物

*クルト:焦茶の長い髪が特徴の11歳の少女。森の賢者ドルイドの名家の出身で、精霊使いシャーマン賢者セージ。ふわふわと幼げで内気そうな一見によらず、神話や薬草学などに精通し、内実は利発器用で意外にしたたか。実は高等妖精族エルダーエルフを母に持つハーフエルフなのだが、とある事情(『霧の谷』参照)で普段は人間の姿(普通の短い耳)になっている。

*カテナ:紺色のトゲ髪と毛皮を腰のみに巻いた野性的な姿が特徴の推定9歳男児。獣人(狼男)の父と人間の母の子で、月夜には狼に変身できるスキルを持つが、普段は至って無邪気な子供(但し人間不信)。度し難い野性味と人間社会への無知ゆえに突飛な行動も多いが、血気盛んな男児らしい純情で突っ走る愛されトリックスター。

*ドルジ:白く長い鬚と眉毛が特徴の109歳の老人。長い眉毛で目が隠れている。雪の大山脈に囲まれた東方の辺境「カワチェン」出身の僧侶ラマ(現地域での所属身分は一応大地母神ヨルズの神官プリースト)兼魔術士ソーサラー。年の功による智慮と泰然自若さ、また少しお茶目で気立てのいい好々爺ぶりを併せ持つ、一行の人望篤き長老。

*パンドラ:赤く豊かな髪が特徴の33歳の女。鍛え抜かれた体軀の繰り出す情熱的な舞踏と弦楽が得意な剣士ファイター旅芸人バルド。魅惑的な美貌と立ち振る舞い、剣と伎芸に懸ける剛毅と気高さ、そして仲間を励まし人を助ける慈愛と義侠心を持ち合わせた、誰もが慕う良き姐御肌。生き別れの“心の家族”たちを捜して旅をしている。

*アイシャ:紺色のウェーブ髪が特徴の18歳の娘。魔法学院に通う魔術士ソーサラー賢者セージ。根っからの本の虫であり、古典文学や説話などに教養豊富。また交易商人の出身のため多様な言語に精通し、交渉術にも長ける。物静かで大人びた(少し達観したような)性格だが、カテナを筆頭としたこの破天荒者の集まりも悪くないと思っている。


◇キャスト:

 クルト&ドルジ&ゲームマスター:鳥位名久礼

 カテナ:天空大地

 パンドラ:AKIRA

 アイシャ:主にゲームマスターが動かす(一部キャラ主「ま」氏による)



-前日談-


 一年と数ヵ月前、古城ヴァルトベルクにて行われた音楽祭。ひょんなことからそれに参加し、絆を深めた冒険者たち。

 音楽祭が終わると、一行が拠点としていたプラークの街を離れてめいめい一人旅に発っていったカテナとパンドラ。

 時は流れ、ドルジたちは北国ルーシの辺境の地キルスクの街で、思いがけず彼らと再会する。

 そして、皆共に思い出深き街、プラークへと帰ってきた。



-序、夜汽車-


 白く霞む暁の地平線。しんしんと降る雪を切って走る夜汽車。汽笛の音が、白く染まった大地に鳴り響く。

 車窓は、白い雪原から次第に冠雪して建ち並ぶ家々を映し出す。

 城壁に囲まれて、木組み白壁の家々と高い石造りの教会の塔が建ち並び、小山の上の城塞にはひときわ高く大きな大聖堂の塔がそびえ建つ、大きな街。汽車はやがて、その街のたもとへと入っていった。

 大きなアーチ屋根に覆われた突端式ホームの並ぶ駅。汽車はその中にゆっくりと停車して、白い蒸気を吐いた。


「んっ、と……」

 客車の乗降口の小梯子をとんとんと鳴らし、焦茶色ブルネットの真っ直ぐで長い髪を揺らして、小柄な少女がホームに降り立つ。大きなかばんを力一杯に客車から引き下ろし、小さな手を包む手袋に息を吹きかけると、息は白い湯気となって消えていった。

 その後ろから、白く長い鬚と眉毛の老人がホームに降り立ち、コートの懐から懐中時計を取り出して見やる。時刻は朝八時過ぎ。

「定刻通りじゃな」

 老人もまた、ほっ、と白い息をつく。

「よっと!」

「ふふ、坊や、飛び降りると危ないよ」

 そのさらに後ろから、この寒空の下にあって場違いな、野性的な皮衣を腰に巻いただけの幼い少年が勢いよく飛び降り、最後に、紅く豊かな髪をマフラーに包んだ長身の女が降り立つ。


 大きな赤煉瓦造りの駅舎を出ると、薄く雪の降り積もった石畳の道を、馬車や路面汽車トラムが行き交う。駅前の広場には朝市が立ち、人々の賑わいが行き交っている。

「みんなで、帰ってきた……」

 その街並を、少女は感慨深そうに見渡し、呟いた。

 旅立った時にはまだ晩秋であったこの街も、今やすっかり冬模様に衣替えしていた。約一ヵ月ぶりに、少女と老人はこの街に帰ってきた。少年と女は、実に一年と数ヵ月ぶりである。

 帝国領邦ベーメン王国の首都にして、帝国中でも屈指の大都市・プラーク。思い出深い街、思い出深い仲間たち。

 ちらちらと舞う粉雪が、彼らを祝福するかのように出迎えた。

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