第41話 ライブ再び

アルバム販売開始。

俺のファーストアルバムが発売された。売れ行きはどうなのだろうか。CDショップの前を通った時に、横目でちらっと見たが売れ行きはわからなかった。店に入って確かめるのはちょっと恥ずかしいしな。

ただ、店の入り口の所に平積みされていたので、多少は?認知されているのではと思う。

そういえば千尋が買いに行くって言ってたな。友達とライブ抽選券を手に入れると言ってた。なんならカラオケ行って歌ってやるのに。

って、千尋から俺の歌がカラオケに入ってるのを聞いた。マジ、びっくり。歌ってる本人は知らなかった。

歌って宣伝したんだから感謝してよね、ってアイスを請求されてしまったのだ。

ホールが埋まる位は売れて欲しいもんだ。お客さんがスカスカだったら恥ずかしいぜ。


それから何日も練習を重ねてついに本番。

ホールの客先はちゃんと埋まってる。よかった、ガラガラだったら泣くよ。

「千秋、お互いに頑張りましょう。私の出番は最初だけだから、終わったら客席で応援するわ」

今回も恵の席を確保してある。彩奈の友人ということで招待されてるのだ。

場内のライトが消され、俺と彩奈がステージに出る。俺は彩奈をエスコートしながらステージ中央にたった。

「会場のみなさん、今日は俺の為に時間を作ってくれてありがとう。今日は俺の思いと歌をみんなに届けたいと思う」

まずはみんなに挨拶ね。

「そして、みんなも知ってると思うけど、俺の歌が〇〇化粧品のCMで流れてるよね。そのCMのモデルが俺の事務所の先輩なんです。今日は応援に来てもらいました」

「みなさん、安西彩奈です。今日は事務所の後輩がライブをやるって聞いたので見に来ちゃいました。私も彼の歌のファンなんです。皆さんと一緒にライブを楽しませてもらうのでよろしくお願いします」

観客席から”よろしく~”と声が帰ってきた。

「俺、今日のライブ前に彩奈さんに聞いたんだ。なんでそんなに肌がキレイなのって。そしたらCMも化粧品を勧められちゃいました」

お客さんの笑い声が聞こえるる。

「だから今日はその化粧品を使ってライブします。というか、もう化粧されてるんだけどね。艶のある肌に見えない?」

見える~の声が返ってくる。

「じゃ、俺とお揃いのメイクをしようぜ。このライブが終わったときに、化粧が落ちてなかったらみんなも使ってくれよ。みんなも俺とお揃いで使いたいよね。俺はみんなとお揃いがいい」

”使う~”、”欲しい~”の声。彩奈も、

「いきなりそんな事言い出してもスタッフさんが困るでしょ。じゃ、私がライブ中に用意しておくから」

彩奈は観客席に向かって、

「みんなはこれから上原くんのライブ盛り上がるのでしょうから、入り口付近に上原君の使った化粧品を並べておくわ。彼とお揃いがいい人は買ってってね。ちなみに私ともお揃いになるよ」

観客席から笑い声。

「よし、販促終了。お前ら用意はいいか?ちゃんと水分とってくれよ。倒れてもしらないからな」

”倒れたら看病して”

「おい誰だ。今倒れる言っていった奴。倒れちゃ俺の歌が届けられないだろ」

”倒れないように頑張る~”

「よし、最初の曲は~~~~」

ライブが始まった。最初からガンガン飛ばしていく。ステージからお客さんを煽る。”もっと声出せるだろ””もっと熱くなれよ”

途中から俺も髪を振り乱し歌う。体全体で声を出し、体全体で歌い上げる。気持ちイイ!


ライブもラスト2曲。前回同様に会場内を走り回りながらお客さんとハイタッチして回る。ノリノリで。

可愛らしい中学生くらいの女の子や、恰幅のいいおばさまや、白髪のお婆ちゃんまで。バチンバチン音を鳴らしながら走り回った。

ラストの曲が終わりステージに戻ってきた。

「みんな最高。俺、すげー気持ちよかった。みんなと一緒に歌えて本当によかった」

そして思い出したかのように、

「あ、汗すごく出てるけどメイク落ちてない?」

”大丈夫~””かっこい~”とお客さんも反応してくれた。

「それじゃ、俺とお揃い希望の人は化粧品使ってみてください。男性のお客さんも何人かいたけど、同じやつ使えば今の俺になれるぞ。歌って踊って叫んでハイテンション俺にな。一緒に輝こうぜ!」

ライブが終わった。

控室に戻ってシャワーを浴びる。あー、気持ちイイ。

シャワーからでると彩奈と恵が控室で待っていた。

2人ともかっこよかったと褒めてくれる。俺は2人を引き寄せ唇を貪るようにキスをする。舌を絡ませる感覚にゾクゾクしてきた。

しかし、これ以上愛し合うことはできないので我慢。というか我慢するしかない。

そういえば恵はよくここに入れたな。

「私が後輩って連れてきたの。1人位なら大丈夫」

恵は、えへへと笑っている。そんな恵の笑顔が可愛すぎて手を伸ばそうとした時、西野さんが控室に入ってきた。

「シャワー浴び終わったかしら。あら、お友達?」

「ええ、私と千秋と特に親しくしてもらってる新田さんよ」

恵は”どうも~”と西野さんと挨拶を交わした。

「あなた結構いいもの持ってるわね。今度、彩奈と一緒に事務所に遊びにきなさいな」

お、西野さんにもこいつの可愛さが伝わってのか。顔よし、スタイルよし、おっぱいよし、おっぱいよし、おっぱいよし。大事だから3回言ったぞ。

「お客さんが物販のブースに集まって大混雑よ。もちろん化粧品を買い求める人も沢山いる。男性のお客さんも列に並んでいたわ。上原君があんなこと言うから」

いや、ひょっとしたらもの凄い効果があるかもしれない。そしたら化粧品会社も、男性客もwin-winだろう。

「女性って一度気に入るとその商品をずっと使い続ける人が多いわ。今回使ってみて気に入ってくれたら最高よ。次のCMも声かかるわよ」

「その辺は彩奈にまかせますよ。あと、この新田もいいんじゃないですか。可愛い顔だし、スタイルも抜群、肌の張りとかカメラ写りいいかもしれません。まぁ、俺は全然わかりませんが」

とりあえずアピールしておこう。恵も事務所で一緒に仕事するようになればいいよね。


その後、物販ブースをのぞいてみると、長い行列ができていた。

「忙しそうなので私と恵で手伝いに行ってくるわ。商品渡すくらいなら私にもできるし、商品PRにもなるでしょう」

2人は西野さんと一緒に物販ブースに向かった。彩奈は事務所の手伝いなので無給だが、恵にはアルバイト代が出るみたい。ただ働きはいけません。

俺は控室で少しのんびりしてた。やっぱりライブは体力をめっちゃ使う。自分自身が、みょーなテンションになってしまい、思ってるよりも体力を使っているのだ。まぁ、最高に気持ちいいんだけど。

2時間ほどで2人は帰ってきた。彩奈が物販ブースに現れたので、行列がものすごく伸びたそうだ。化粧品だけじゃなく、俺の商品もたくさん売れたと、西野さんがご機嫌だった。


そんなライブを計4回行う。大成功に終わったのだ。


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