猫な彼女とお酒

@山氏

猫な彼女とお酒

「「乾杯」」

 俺たちは缶をコツンとぶつけて、酎ハイを飲んだ。

 俺はあまりお酒を飲まないが、急に咲弥が「お酒が飲みたい」と言ってきて、二人でコンビニまで買いに行ったのだ。

「どうしたの、急にお酒飲みたいなんて」

「……なんとなく」

「そっか」

 咲弥はぐびぐびと酎ハイを飲み進め、一本目が空になったようだ。炬燵から出て新しい缶を冷蔵庫から取ってくると、俺の横に戻ってきた。

「そんなに一気に飲むとすぐ酔っちゃうよ?」

「大丈夫だよー」

 気にせず咲弥はお酒を飲んだ。

「啓人も飲みなよ」

 机の上に置いておいた俺の飲みかけの缶を持つと、ぐいぐい俺に押し付けてきた。

「はいはい」

 缶を受け取ると、俺は一口飲んで机の上に戻した。

「全然飲んでない!」

「ごめんごめん」

 頬を膨らませる咲弥の頭を撫でる。俺は机の上の缶を取って一気に飲み干す。

「新しいの持ってくる!」

 咲弥は嬉しそうに立ち上がると、冷蔵庫から二本缶を取り出すと、小走りで隣に座り、俺に寄り掛かってくる。

「啓人、好き」

「ありがと、俺も好きだよ」

「うー……。なんか軽い、もっかい言って」

 咲弥は不満そうに抱き着いて、俺の顔を見上げた。少しアルコールの臭いが鼻にかかる。

「好きだよ、咲弥」

「んふふ、私もー」

 満足そうに微笑むと、咲弥は俺に抱き着いたまま、ぼーっと俺の方を見ていた。

「……熱い」

 咲弥は俺から離れると、服に手をかける。

「待って待って」

 俺は咲弥を止めて抱きしめる。

「熱いの!」

 じたばたと暴れる咲弥を抑えつつ、俺はため息を吐いた。

「もう……」

 咲弥はあまりお酒が強い方ではない。前に家で飲んでいた時も酔っぱらって大変だった。

「飲み足りない」

 ぼそっと咲弥が呟いて、立ち上がろうとする。その時、足をもつれさせて俺に覆いかぶさるように転んだ。

「ふらふらじゃん……」

「大丈夫大丈夫」

 俺に覆いかぶさったまま、咲弥は抱き着いてきた。

「啓人……」

 赤くなった顔で咲弥が顔を近づけてくる。

「眠い」

 そういうと、咲弥は俺に抱き着いたまま寝息を立て始めた。

「……咲弥?」

 俺は咲弥を起こさないようにゆっくり抱きかかえると、ベッドまで運んだ。

 布団をかけて頭を撫でると、咲弥は寝ながら満足そうに微笑んだ。

 俺は机の上に転がっている缶を片付け、咲弥が寝ているベッドに向かう。

「啓人も一緒に寝よ?」

 咲弥は寂しそうに猫なで声で言う。俺は咲弥の隣に寝転がり、抱きしめると咲弥は嬉しそうに笑った。

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