32日目 仮選定

「皆さまの努力のおかげで、わが社の〈全自動戦術型ネクロマンシー〉魔機構システムが、競合他社4社を抜き去り、王都の仮選定を通りました!」


 会議内で、会議の進行役を務める本社の女魔法使いアルビオナが高らかに宣言すると、会議内からおお、というざわめきと、ぱちぱちと控えめな拍手が起こった。

 アルビオナは性格が悪いと評判だが、水晶玉の小さな姿でも人でも美人と分かる容姿をしている。大きな胸が良く目立っていた。


「あんなんでよく選定通りましたね。中身、なんにもできてないのに……」


 支社内に、誰かのつぶやきが漏れた。コタンは誰かの水晶玉がその声を拾って会議内に流すのではないかとひやひやした。


「皆さまには引き続き、〈全自動〉プロジェクトの成功のため、日々のご協力をお願いいたします!」


 会議は穏健なまま終了した。

 コタンは肩透かしを食ったような感じだったが、すぐさま上司のアムラトが声をかけてきた。


「コタン君、この後すぐに〈全自動〉推進ミーティングがあるからね、準備してね」

「は、はい?!」


 どうやらまた、別の新しい会議が生まれたようだ。

 もう現在動いている会議の数を把握するのすら難しくなってきた。


「推進メンバーの発表があるからね、準備しといてね」

「な、何の準備ですか」


 コタンの胃がキリキリと痛み出した。

 王都の選定を通ったということは、いよいよこのプロジェクトを形にしなければならないということだ。今までのような虚仮ではない、本物の実際に動く魔機構システムを開発しなければならなくなったのだ。

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