8日目 死霊術師探し

「これからね、皆さんで手分けしてね、ウチの魔機構システムを期日までにしっかりと作ってくれる、死人占い師ネクロマンサーの方たちを探しに行ってもらうということでね! 話がまとまったということで、じゃあさっそく動いてもらっていいかな?」

「……かしこまりました」


 耳に当てた魔道器から社長の元気な甲高い声が、コタンの脳内に響いた。社内に魔機構システムを作れる技術を持った人間、高い次元の魔道に通じた人間がいないので、魔機構システムの構築には外部の人間を雇おうということになったのだ。


「じゃあ、何とかね、本社および支社の皆さん、午前中いっぱいには、しっかりとした技術を持った死人占いの方を各支社で面接できる段階には持っていけるようにね、よろしく頼みますね!」


 今まで支社内で座って仕事をしているだけだったのに、突然街に出て死霊術師ネクロマンサーを探して来いという。しかも全社員が同時に。

 会議内で不満の声は全く上がらず、全社員が淡々と社長の言葉に従うようだった。


「じゃあどこに探しに行くかを決めていこう。テクールトリ支社の周りには死霊術ネクロマンシーの盛んな場所とか、そういう人たちが集まってくる場所はある? アムラト君? 聞こえてる?」

「いえ、そういう情報はまだ確認しておりませんので、これから調査して、手分けをしまして……」

「え? 調べてないの? こういうプロジェクトを組んでるんだからさ、当然そういう情報は最低限理解しといてほしいのよ。じゃあちょっと調べてくれる? 次の支社が発表してる間に調べておいてね! じゃあ次は、雷河支社!」


 アムラトが慌てて何かの帳面を壁の棚から取り出し、ページをめくり始めた。市の商売人目録か何かだろうか。


「もう午後になりますけど、いつ出発するんですかね」

「そうですね……」


 隣に座っている女写本師オペレーターのムリエラが話しかけてきた。気のせいか、少し笑っているように見えた。

 今日は手元は動いていなかった。通常の仕事は今日は免除になると判断したようだ。


 すぐに全社員が外注できる専門家を探しに行くと思っていたのに、各支社が何処に探しに行くかまで、このミーティングで決めるようだ。


 会議は夕方まで続き、明日の朝から全社を挙げて死霊術師ネクロマンサーを探しに行くことになった。

 社運を賭けたプロジェクトのカギを握る、魔機構システムを作ることのできる技術者を、なんとしても見つけてこなければならないのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る