7日目 これから考える

「じゃあね、これからみんなで仕組みを考えていこう!」


 全自動ミーティング中、社長は元気よく水晶玉の中で言い放った。


「しくみを考えるって、もうある魔機構システムを王都に売り込む話じゃないんですか?」

「いや、そんな魔機構システムはまだこの世にないんだよ。これから作るの」


 小声で聞いたコタンに、上司のアムラトは同じく小声で答えた。自分で発表する意思を示さない限り、水晶玉はこちらの声を会議内に通すことはない・


「え、じゃあ今までのミーティングは何をやってたんですか? 結構前からやってましたよね?」

「いつもこんな感じだよ……」


 元気のいい甲高い声で、社長は続けていく。

「みんなでしっかりとね、考えて来期までにいい魔機構システムを作っていこう! みんないいアイディアがあったら発表していってね、まず考えなきゃいけないのは、どうやって人を生き返らせるか、その魔機構システムをどう魔道具ツールに組み込んでいくか、北から聞いていきます! じゃあ、まずポイタイン支社のプロスペロ君、発表してくれる? 今できることからでいいから、可能性を言ってみてくれるかな?」

「はい。ええっと……」


「仕事、進めてた方がいいですよ」

「あっ、はい?!」


 隣の席に座っている女写本師オペレーターのムリエラにささやくように話しかけられて、コタンはあわてた。

 ムリエラは少し笑いながらコタンの机を指差した。


「仕事、遅れてるでしょ」

「はい、そうなんですよ」


 コタンはミーティングと会議に参加しながら、作業を続けることにした。どうせ内容は真面目に聞いていても理解できないのだ。


 今日も報告書を早めに作成しなければ。コタンの気分は重いままだった。

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