第19話

『案ずるより産むが易し』という言葉をどこかで聞いたのですが、その通りでした。

 一度占領した軍城を奪還されたとしても、再度占領すればいいと覚悟しました。

 アウロラを御姫様抱っこしながら夜襲し、城主や幹部を叩きのめしました。

 身代金が欲しいので、決して殺さず、捕虜としました。

 夜が明けて直ぐに、ラムリー王国側軍城に対抗する、デヴァルー王国側軍城に向かい、城に出入りする平民を捕虜の世話役に雇いました。


 雇うのには色々な条件があります。

 全く戦争に従軍する義務のない、徴兵免状を与える条件での召使契約。

 従軍義務のある召使契約。

 最初から兵士として雇う契約です。

 今回の件に関しては、デヴァルー王国は無関係です。

 私とアウロラが、貴族家の当主として刺客を送られた報復としての宣戦布告ですから、王国領や他の貴族領に住む平民を勝手に兵士にはできません。


 ありがたいことに、少し脅かすと国王は王国領の平民を兵士に雇うことを許可してくれました。

 そこで堂々と王領地で兵士を募集したのですが、条件が通常の傭兵の五割増しの高給だったせいか、予想以上の多くの兵士が集まり、占領した城の要所に十分な兵士を配置することができました。

 身代金が受け取れそうな貴族や騎士、裕福そうな平民の世話は、召使契約をした者に任せましたが、その費用も水増しして身代金に入れるのですから、何の問題もありません。


 問題はとても身代金が払えそうにない平民です。

 格安で開放するという方法もあります。

 それこそ貴族士族とは比較にならない、大銅貨一枚二枚で開放するのです。

 ですがそんな事をすると、再度ラムリー王国に徴兵され、軍城奪還に動員される可能性がとても高いのです。

 デヴァルー王国貴族に私やアウロラを非難する隙を与えることになります。

 仕方がないので、身代金が払えない兵士や平民は奴隷とすることにしました。


「ヴィリアーズ子爵閣下!

 どうか私の忠誠を認め、剣を捧げさせてください!」


 茶番といえば茶番です。

 ずっと敵対していた貴族家の次男三男が私の足元に跪いています。

 まあ、兄である嫡男とは違って、予備の次男以下はとても酷い扱いになります。

 いえ、それは語弊がありますね。

 酷い扱いなのではなく、家督争いで家を潰さないために、次男以下は他家に養子に出すか臣籍降下させる必要があるのです。


 そのため兄弟は仲が悪いのが普通です。

 長子相続が基本中の基本ですが、あまりに嫡男が無能だったり、突出した実力を持つ弟がいた場合は、家督争いに発展することが多いのです。

 だから、当主や嫡男がヴィリアーズ伯爵家と敵対していたからといって、その家の次男三男がヴィリアーズ伯爵家に敵対しているとは限りません。

 限りませんが、調査もせずに召し抱えるわけにはいきません!

 

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