第16話

 しばらくの間は、とても穏やかな日々でした。

 私とアウロラは、私の屋敷でともに過ごしました。

 ケッペル伯爵家の者達には、王家や敵性貴族の襲撃に備えるために、アウロラは私の屋敷で守ると伝えました。


 アウロラ自身が私と一緒にいると言ってくれたことと、私の噂が広まっていたのです、体面を取り繕うために表面上軽く反対しただけ、直ぐに賛成してくれました。

 アウロラに何かあった場合に備えて、遠征軍に参加しているケッペル伯爵やアウロラの兄弟に対する言い訳を準備しておく必要があったからです。


 恐怖を隠したケッペル伯爵家の者達の表情は、私を傷つけました。

 ですが覚悟していたことです。

 誰がどんな表情をしていようとも、アウロラが私を信じてくれています。

 人間離れした能力を見せても、以前と変わらず接してくれます。

 これがどれだけ私を救ってくれたか、誰にも理解できないでしょう。

 父上であろうと母上であろうと。


 我が家の者達は、私の事は理解してくれています。

 畏怖するような表情を時折見せますが、私が意味もなく攻撃しないことを理解しているので、無暗に恐怖感を現すことはありません。

 彼らが側仕えとして世話してくれるので、それほど不愉快ではありません。

 

 それに、アウロラと一緒の快適に過ごせるのなら、少々のことは気になりません。

 湯浴みや着替えなどは、どうしても側仕えの手を借りる必要があります。

 武術の訓練を受けた私はともかく、アウロラには絶対に必要です、

 アウロラに美しい令嬢としての体面を保たせるのは、私の楽しみであり義務です。


 よい香りがするアウロラと同じベットで眠るのは至福の時間です。

 不埒な考えがあるわけではありません。

 刺客の奇襲に備えるには、常に側にいる必要があるのです。

 特に眠っているときが危険です。

 そう話をするとアウロラも理解してくれました。


 いえ、アウロラ自身が怖いから一緒に寝てくださいと言ってきたのです。

 私にはアウロラを護る責任があるのです。

 誰も私を助けようとしなかった時に、命懸けで私を庇ってくれたのはアウロラだけなのですから、私が残りの人生全てをアウロラに捧げるのは当然なのです。


「アウロラ、急いで動きやすい服に着替えてください。

 誰かある!

 敵が迫っています。

 急ぎ迎撃の準備をしなさい!」


 深夜にアウロラ起こすのは忍びなかったのですが、アウロラの寝息を聞こうと研ぎ澄ましていた聴覚に、無粋なプレートアーマーがこすれあう金属音と、馬蹄の轟が入ってきました!

 

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