第808話 全員合流
「おい、これを運べばいいんだな?」
「えっ?」
「うおおおっ!!」
「うわっ!?」
後方から聞こえてきた声にレナは振り返ると、そこにはデブリの姿が存在した。彼は両手で地竜の核を持ち上げると、肩に背負う。竜種の中でも大型を誇る地竜の核の重量は百以上キロは存在するはずだが、デブリは片腕のみで持ち上げてしまう。
「で、デブリ君!?」
「よう、レナ……再会を喜びたい所だけど、どうせまた厄介事に巻き込まれているんだろ?」
「まあね……悪いけど、それを工場区のゴイルさんのところまで運んでもらえる?」
「任せろ!!」
デブリは胸を叩き、レナの代わりに工場区の店まで運び込む。その後にドリスの肩を借りたレナも続き、コネコは他の者達を呼び寄せに向かう――
――十数分後、ゴイルとムクチの工房には大勢の人間が集まり、その中にはミナとシノの姿も含まれていた。二人はレナの姿を見ると驚き、すぐに抱き着いて再会の喜びを分かち合う。
「レナ君!!良かった、無事だったんだね!!」
「やっぱり生きていた……信じていた」
「うわっぷ、二人とも……ちょっと苦しいよ」
正面からミナに力強く抱きしめられ、シノも後ろから抱き着く。この際に二人の大きな胸が押し当てられ、レナは頬を赤らめるがその一方でゴイルとムクチは地竜の核を前にして難しい表情を浮かべていた。
「おいおい、こいつはとんでもない物を持ち込んできたな!!地竜の核なんて初めて見たぞ!!」
「凄まじい魔力を秘めているな……これを俺達に加工しろというのか?」
「はい……前に俺達が乗っていた飛行船を覚えていますか?あれぐらいの船を破壊するぐらいの兵器が必要なんです」
「あの馬鹿でかい船を破壊!?そいつはとんでもない物を作らせようとしているな……少なくとも魔石弾程度じゃ、どうしようも出来ねえぞ」
「この硬度では削り取るのも難しい……だが、俺達なら出来る」
ゴイルとムクチは上等な素材を前にしてやる気に満ちた表情を浮かべ、地竜の核の加工は二人に任せる事にした。その一方でレナは言いにくそうに二人に告げた。
「あの、それと実は俺の籠手が壊れてしまって……持って帰る事も出来なかったんです」
「な、何だと!?あの籠手が壊れた!?」
「アダマンタイトの防具を破壊する敵が現れたのか……!?」
「はい、凄く強いです。俺も万全な状態じゃないと勝てないかもしれません」
「ううむ、新しい籠手を作るにも素材と時間がな……」
レナの話を聞いてゴイルとムクチは難しい表情を浮かべ、二人は地竜の核の加工だけで手いっぱいだった。そもそも新しい籠手を作り出すにしても素材となるアダマンタイトが存在しない。
籠手が装備できないとなるとレナが頼りに出来るのは島から持ち帰ってきた「勇者の盾」と「勇者の剣」だけである。このうちの盾は左腕に装着すれば籠手代わりの防具にはなる。だが、勇者の剣である水晶剣の場合はレナは剣が扱えないので置いていくしかない。
「うっ……いててっ」
「えっ!?どうしたんだ兄ちゃん!?」
「いや、痛み止めが切れたみたい……実は、腕が折れてまだ治り切ってないんだ」
「えっ!?大丈夫ですのそれ!?」
会話の際中にレナは腕に痛みを覚え、その場で抑えると他の皆は心配した表情を浮かべる。すると、ドリスの後方から聞き覚えのある声が響く。
「レナ君、腕を伸ばしてくれませんか?」
「えっ……その声は!?」
「ナオ!?戻ってきてましたの!?」
声のした方向に振り返ると、そこにはチャイナドレス風の装備を身に付けたナオの姿が存在した。旅から帰ってきたばかりらしく、その背中には荷物を抱えていたが、彼女はレナの腕を掴むと掌を差し出す。
「折れている箇所は……ここですね」
「あいてっ……!?」
「ちょ、ちょっとナオ君!?急に何を……」
「大丈夫です、信じてください」
ナオはレナの腕を掴むと、折れた箇所に掌を押し当てる。その様子を見てミナは驚いて彼女を止めようとしたが、ナオは意識を集中させるように目を閉じると、唐突にレナは腕の痛みが引いていく。
折れた箇所に翳した掌から緑色の光が発生すると、急速的に腫れていた箇所が引いていき、やがて骨が完全に繋がったのか痛みが消えてしまう。レナは驚いた顔を浮かべながらも腕を伸ばすと、完璧に治っていた。
「腕が、治った?」
「ええっ!?」
「ふうっ……良かった、成功した」
「ナオ!?貴女、何時の間に回復魔法を!?」
「凄いな姉ちゃん!!回復魔法も使えるようになったのか!?」
「いえ、これは気の力です。回復魔法とは似ていますが、少し違います」
腕の骨を繋げたナオの新しい技に全員が驚き、ナオによると回復魔法は他者に魔力を送り込む事で回復機能を強化させるらしいが、彼女の場合は気を送り込むことで回復機能を強化させる「回復功」という技らしい。
「ありがとう、ナオ君!!やっぱり、ナオ君は頼りになるよ!!」
「い、いえ……僕のできる事なんてこれぐらいですから」
修行帰りで更なる力を得たナオのお陰でレナは遂に左腕が感知すると、これで万全な状態で戦う事が出来た。レナはナオに感謝の例を口にすると、ナオは頬を赤らめる。
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