閑話 〈転移台の秘密〉
「ヒトノ国が管理している大迷宮にも転移台は存在しますが、転移台が壊れて使えなくなったという事態は一度も起きて起きた事がありません。草原、荒野、煉瓦の大迷宮は100年以上も前から存在しますが、今までに転移台が不具合を起こしたという話は聞いた事がありません」
「むうっ……言われてみれば確かにそうだが」
「私が見た限りでは島に存在する転移台は大迷宮で使用されている物と瓜二つの外見でした。しかし、違いがあるとすれば転移石を嵌め込める転移台は湖の中心部には存在しなかった事です。ここで気になる事があるのはどうして大迷宮以外では使用できないはずの転移石を利用し、私がここへ戻れたという事です」
「ふむ、確かにその点は気になるな」
通常、転移石が使用できるのは大迷宮限定であるため、本来であればこちらの世界では使用できない。しかし、現実にルイは転移石を使用して転移台を発動させ、帰還する事が出来た。
ここで彼女は気になったのは転移台の移動先が王都であった。彼女は転移石を使用すれば転移台を発動して王都に戻る事が出来る事はエルフ達の話から予想できた。しかし、ここで気になる点があるのは本当に移動先が王都限定なのかである。
「僕が使用した転移台は転移石の力を利用し、この王都へと僕を飛ばした……ですが、気になる事があるのは勇者がわざわざ4つの転移台を里の集落の近くに設置した事です。仮に島へ行き来するだけならばわざわざ4つの転移台を用意するはずがないでしょう」
「確かにその点は気になるが……何が言いたい?」
「恐らくですが、勇者が各里に転移台を用意したのは何か意図があるはずです。毎回、別々に転移するのであれば島に連れてくるエルフ達を移送させる事も困難のはずですからね。恐らく、あの転移台が最初に使用した時に僕達が別々に飛ばされたのはただの偶然ではなく、転移先を指定していなかったではないでしょうか?」
「どういう意味じゃ?」
ルイの言葉には国王は戸惑い、転移台の移動先を指定する方法があるのかと彼は驚く。通常の大迷宮とは異なり、島に存在する転移台は複数存在する事、それがルイがどうしても気になっていた。
「最初に僕達が島に転移した際、別々に飛ばされたのは僕達の誰もが島に転移台が複数存在する事を知らなかったからです。僕達が転移の際、何も考えずに使用してしまった。しかし、もしかしたら行先を指定する方法があるのではないかと思います」
「そ、そんな方法があるというのか?」
「これはあくまでも僕の推論です。何の確証もありません、ですが僕が使用した転移石を嵌め込める湖の転移台を使用すればこの王都に繋がる転移台に戻るだけではなく、もしかしたら別の転移台へ移動できる可能性もあります。そう考えれば勇者が複数も転移台を用意する理由も説明できます」
国王はルイの言葉を聞いて考え込み、他の者達も騒ぎ出す。確かに彼女の言葉には何の証拠もないが、実際に島に訪れた彼女の意見は無視は出来ない。
「ルイ殿、お主はどうしたいのだ?何か考えがあるのか?」
「あの転移台を調べるべきだと思っています。いいえ、もしかしたら転移台が出現する前に現れた通路にまだ何か秘密が残されているかもしれません。とにかく、今はあの転移台の調査を最優先すべきだと考えています」
「うむ、確かに一理あるな。もしかしたら我が城の書庫にもあの転移台に関する文献が残っているかもしれん。すぐに光の勇者に関わる資料を確認しよう。もしも転移台の行先を指定する方法があれば救援部隊を送り込める手段も見つかるかもしれん」
「ありがとうございます、国王様」
「皆の者、これは王命である!!文官はすぐに光の勇者の資料を点検せよ!!将軍達は救援部隊の選抜を行え!!この国を救った英雄達の命が掛かっておるのだ、決して手を抜くな!!」
『はっ!!』
国王の命令に全員が即座に行動を開始し、一部始終を見ていたミナもルイを見ると、彼女は頷く。その行為にミナはこれがルイが考えた最善策だと知り、頷き返す。
(レナ君……待っててね、絶対に助け出すから!!)
ミナは今は自分の出来る事に集中し、必ずやレナを救うために彼女は行動を開始した――
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