第785話 瓜二つの顔、同系統の付与魔法
「馬鹿なっ……どうして貴様もその魔法を!?」
「貴様も……?」
「……重撃剣!!」
イレイナという名前の少女はレナの闘拳を見て驚いたが、すぐに自信も手にした長剣を両手で構えると、刃に紅色の魔力が灯る。その光景を確認したレナは相手も「付与魔法」を使用して武器に発動させた事を知り、やはりというべきかイレイナもレナと同じく地属性の付与魔法が使用する事が発覚した。
「そんなっ!?」
「はああっ!!」
漆黒の剣を構えたイレイナはレナに向けて振り翳すと、その攻撃に対して咄嗟にレナは闘拳を構える。その結果、互いに地属性の魔力を込めた武器同士が接触し、お互いの魔力が反発して弾き返される。
どちらも同じく地属性の付与魔法を扱える事が証明され、しかもイレイナの武器を見てレナは彼女の武器の素材が「アダマンタイト」だと見抜く。そうでもなければ生半可な武器では付与魔法の負荷に耐え切れるはずがない。そもそもアダマンタイトで強化されたレナの籠手を破壊できるとすればアダマンタイト製の武器しか有り得ない事だった。
(この人、強い……付与魔法を重ね掛けしてるのに弾くのが精いっぱいだった)
レナの闘拳は火竜の素材を使用して限界近くまで強化された代物だが、もしも付与魔法を施していない状態で攻撃を受けていたら先ほどの籠手のように破壊されていた可能性もある。一方でイレイナの方も自分の一撃を受けて壊れなかった闘拳を見て警戒心を抱く。
「お前、何なんだ!!どうして私と同じ顔をしている!?」
「それは……こっちの台詞だ!!」
二人は拳と刃を交わし、その度にお互いの魔力が反発して弾かれてしまう。しかし、両手で剣を繰り出すイレイナに対し、負傷した左腕を扱えないレナは徐々に押し込まれていく。
「失せろっ!!」
「ぐうっ!?」
どうやら剣だけではなく、各党技術もあるのかイレイナは蹴りを繰り出してレナの腹部に叩きつける。後ろに蹴り飛ばされたレナは苦痛の表情を浮かべるが、そんな彼に対してイレイナは剣を振りかざす。
「お前にこれは出来るか!?衝撃刃!!」
「くっ!?
イレイナが剣を突き出した瞬間、咄嗟にレナは闘拳を構える。その結果、お互いの武器に付与された魔力が解放された事で重力の衝撃波が同時に発生し、甲板に亀裂が走った。互いの衝撃波が交じり合い、足元の床が陥没する。
まさか同じ魔法を使えるだけではなく、同じ攻撃法を繰り出せるなど思いもしなかった両者は甲板が崩れてしまい、下の階へと落ちてしまう。お互いに甲板の残骸と共に床に倒れ込む形となり、苦痛の表情を浮かべた。
「く、くそっ……そんな馬鹿な、どうしてこの技まで」
「いててっ……な、何なんだよいったい……」
残骸を払いのけながらレナとイレイナは向かい合うと、お互いが構える。しかし、レナの方は左腕を動かす事も出来ず、一方でイレイナの方は特に大きな怪我はなく、剣を構える。このまま戦闘を続ければ負傷しているレナが不利なのは明白だった。
(この人、強い……このままだと負ける。何としても逃げないと……でも、どうすればいいんだ?)
互いに牽制し合いながらも二人はお互いの隙を伺うと、ここで船が大きく傾き始める。どうやら先ほどの二人の攻撃によって船のバランスが崩れたらしく、横向きに倒れようとしていた。
「うわっ!?」
「くっ!?こんな時に……!!」
傾き始めた床によってレナとイレイナは壁際に押し込まれ、このままでは船が横転してしまう。そうなればレナ達も船が潰れて押し潰される可能性もあり、どうにかするために互いに船に付与魔法を施す。
「「
二人が付与魔法を発動した瞬間、二人分の魔力が船に同時に流れ込み、横転しかけた船が停止した。二人は全く同じ考えで船を止めようとした事に驚き、イレイナは怒鳴りつける。
「くっ……手を離せ!!この船は私達の国の船だぞ!!」
「そ、そんな事を言われても……!!」
まるで怒った猫のようにイレイナの獣耳と尻尾の毛は逆立たせ、レナに対して付与魔法を解除するように促す。現在の船はレナとイレイナが互いの魔力で船を操作しており、船の右半分がレナ、左半分がイレイナが操作している形になっていた。
お互いに別の魔力同士なので反発し合い、二人の魔力の境目の部分から亀裂が生じ始める。このままだと船が割れてしまうのも時間の問題であると判断し、どちらかが先に手を離さいと本当に壊れてしまう。
「いい加減にしろ!!この船を壊したらお前を必ず殺してやる!!」
「そっちこそ手を離しなよ!!船が壊れて困るのはそっちだろ!!」
「くぅっ……舐めるな!!」
イレイナは気合を込めると無理やりに魔力を流し込み、レナの魔力を押し返して船全体を操ろうとする。しかし、先ほどは手を離してしまったがレナも負けるつもりはなく、ここで船の制御を奪われたら不利になるのは間違いないため、魔力を更に流し込む。
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