第623話 黒兜の脅威
「うわわっ!?」
「くそ、足元が……」
「まずい、皆早く逃げろっ!?」
「皆さん、これに捕まってください!!」
黒兜が動く度に振動が走り、そのせいで先ほど黒兜が抜け出した穴から亀裂が広がると、コネコ達の足元にまで迫る。その光景を見ていち早く危険だと判断した全員が離れようとしたが、咄嗟にドリスは掌を上空に伸ばして魔法を発動させる。
氷塊の魔法で造りだした円盤状の氷の塊にドリスは乗り込むと、他の人間もすぐに移動するように促す。慌てて全員が移動しようとしたとき、デブリだけは体重が重かったことが災いして足元に亀裂が届いた瞬間に地面が崩れてしまう。
「うわぁああああっ!?」
「デブリさん!?」
「そんなっ!?」
「やばい、あんちゃんが落ちた!?助けに行かないと……うわっ!?」
「こ、こっちに来るぞ!?」
亀裂が崩壊して地下に落ちていくデブリを見てコネコは咄嗟に助けに向かおうとしたが、その前に黒兜が足元の炎を振り払って方向転換を行い、ミナ達を睨みつける。
注意を引く事には成功したが、相手を挑発した事に変わりはなく、ドリスは地下に落ちてしまったデブリの救出する事も出来ずに氷塊を移動させた。
「くっ、一旦下がりますわ!!」
「えっ!?あんちゃんはどうするんだよ!?」
「デブリさんなら大丈夫、それに私達も下に移動したら必ず黒兜も追いかけてきます!!その場合は私達ごとあの巨体で圧し潰されてしまいますわ!?」
「そんなっ……デブリ君、必ず後で助けに行くからね!!」
「待ってろよ、絶対に助けるからな!!」
「おい、来るぞ!?」
せめて穴の中に落ちたデブリにコネコとミナは必死に呼びかけるが、話している間にも黒兜は動き出し、ドリスが操作する氷塊の後を追いかけてきた。
「フガァアアアアッ!!」
「ああ、街がっ!?」
「くそ、無茶苦茶しやがって……ドリスの姉ちゃん!!こいつをぶっとばせないのか!?」
「い、今は操作に集中させてください!!」
ドリスは氷塊に人間を乗せた状態で操作するのが精いっぱいらしく、とてもではないが反撃の余裕はない。ならばシデだけが頼りになるのだが、彼は先ほどから黙り込んで返事がない。
「おい、何してんだよシデの兄ちゃん!?早くあいつを攻撃しろよ!!怖気ついたのか!?」
「……った」
「え、何て言ったの!?」
「悪い、俺……乗り物酔いが悪くて、うぷっ!?」
『嘘ぉおおおっ!?』
よりにもよってこの状況下でシデはドリスが操作する氷塊に乗った事で「乗り物酔い」を引き起こしたらしく、口元を抑えて顔色を青くさせる。
こんな時に酔ってしまったシデは精神が乱れてしまい、とてもではないが魔法を放つ事など出来なかった。慌ててミナはシデの背中を摩るが、その間にも黒兜は距離を詰めていく。巨体に似合わず移動速度も速く、更に頭の角で突き上げようとしてきた。
「フゴォッ!!」
「うわぁっ!?まずい、まずいって!!」
「このままだと死んじゃうよ!?」
「ちょ、揺らさないで……うおぇえええっ!!」
「ええっ!?吐きました!?誰か後ろで吐きませんでした!?」
「何でもいいから早く逃げろぉおおっ!!」
黒兜の追跡にドリスは必死に氷塊の速度を上げようとするが、やはり人を乗せた状態での移動は不慣れのため、誰も落ちないように体勢を保ちながらの移動だとどうしても速度が出せない。
一方で追跡を行う黒兜は街道を駆け抜け、移動の最中に邪魔な建物を破壊しながら追跡を行う。幸いというべきか、この周辺の住民は避難に成功していたらしく、今のところは人の姿は見当たらない。だが、このまま逃げ続けていればいずれは人間が存在する場所にまで辿り着いてしまう。
「くそ、こうなったらあたしが飛んでこいつを……」
「駄目だよコネコちゃん!?いくらなんでも相手が大きすぎるよ、ゴブリンキングの時とは違うんだよ!?」
「た、頼む……降ろしてくれ、もう無理……」
「こんな時に冗談を言っている場合ではありませんわよ!!ここで降ろしたら
「フガァアアアッ!!」
いい加減に追跡するのも面倒になったのか、黒兜は角を振り回して左右に存在する建物を破壊すると、角を利用して瓦礫を前方に放つ。迫りくる無数の瓦礫を見てもう駄目かと思われた時、ドリスの前方の方から無数の黒炎が放たれた。
「黒炎流槍!!」
「えっ!?」
「こ、この魔法は……!?」
進行方向の先から無数の槍の形状を下黒炎が放たれ、ドリス達に襲い掛かろうとした瓦礫を爆破させる。その攻撃によって黒兜の方も前方から放たれた炎に怯み、動きを止めた。
コネコ達は驚いて前方を振り返ると、そこには姿を消したと思われたブランの姿が存在し、彼は顔色を青くさせながらも両手に黒炎を纏わせていた。ジャックによって深手を負っていたはずだが、ドリス達を助けるためか彼は次々と黒兜に向けて黒炎を放つ。
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