第597話 王都炎上
――同時刻、クランハウスの方にはコネコ達が集まっていた。彼女達の手には達成済みの依頼書が握りしめられ、これまでに達成させた依頼の数の確認を行う。
「ひいふうみい……やりましたわ!!これでちょうど80件目の依頼達成ですわ!!」
「80件か……いつの間にかそんなに依頼を達成してたんだね」
「ふぃ~……目標まであと少しだな」
「そうですわね、もう半分は切りましたわ。それにこれまでの報酬金額だけでも、こんなに手に入りましたわ!!」
「うわ、改めてみると凄いね……これ、全部金貨なんだよね?」
ドリスは机の上に小袋を置くと、中身を開いて大量の金貨を見せつける。これまでの依頼報酬を全て換金した結果、思いもがけない金銭を手に入れる事が出来た。
「コネコちゃん、今日はどんな仕事をしてたの?」
「行方不明の猫の捜索だよ。見つけるのには苦労したけど、捕まえる時に引っかかれて痛かった……」
「それは災難だったな。僕はまた大迷宮に潜ってロックゴーレムの討伐だったぞ、あいつら良い稽古相手だったんだけど、最近はすぐに壊れるからつまらないんだ」
「そういえばデブリさん、一段と大きくなりましたわね……ナオも心なしか前よりも痩せていませんか?」
「あ、えっと……僕の場合は最近、いつもとは違う鍛錬もやり始めたから」
「マジかよ……よく、あれだけ仕事した後に鍛錬なんて出来るな。流石はナオの姉ちゃんだな、やっぱり体力じゃ敵わないか」
「ミナさんはどうでしたの?」
「うん、僕の方はね……あれ、何だろう?なんか騒がしいね」
ミナが自分の行った依頼を離す前に彼女はクランハウスの玄関口の方が騒がしい事に気づき、他の者たちも何事かと視線を向ける。
クランハウスの入口の扉が外側から激しく叩かれており、丁度扉の近くを横切ろうとしていた巨人族の冒険者のジャイが不審に思い、扉の方へと向かう。
『開けろ!!開けてくれ、助けてくれ!!』
『こ、殺される!!早く開けて……うわぁああああっ!?』
『ひいいっ!?』
「な、何だ?どうしたんだ!?」
外側から悲鳴が聞こえてきた事にジャイだけではなく、他の冒険者達も異変を
感じ取り、椅子に座り込んでいたコネコ達も立ち上がる。ジャイは急いで扉を開いた瞬間、外の光景を見て目を見開く。
――外の街道では大勢の人間が逃げ惑い、更にあちこちの建物から煙が上がっていた。人々の混乱が城下町全体に広がり、正に阿鼻叫喚の渦と化していた。目の前の光景に冒険者達は呆気に取られ、一体何が起きているのか理解できなかった。
「はっ?お、おい……何だよこれ!?」
「ど、どうなってるんだ!?」
「いったい何が……うおっ!?」
事態を理解できずに冒険者達は扉の前に集まると、扉を開いていたジャイの足元に誰かが掴み、彼は驚いて見下ろすとそこには全身血まみれの男性が倒れていた。
「た、頼む……助けて、助けてくれぇっ……」
「うわっ!?お、おい、大丈夫か!?しっかりしろ、すぐに手当てを……何だ!?」
ジャイは怪我だらけの男性を見て助けようとしたとき、男性だけではなく周囲を見渡すとクランハウスの前に大勢の怪我人が倒れている事に気づく。
倒れているのは一般人だけではなく、冒険者ギルドの冒険者の姿も確認できた。どうしてクランハウスの前で大勢の人間が倒れているのかは不明だが、中にはまだ意識が残っている人間もいた。
「た、大変だ……街に、街に魔物が……」
「魔物だと!?」
「それだけじゃない、建物にも火が……!!」
「い、いったい何が起きてるんだ!?」
冒険者と一般人がクランハウスの前に集まっていたのは金色の隼に救助を求めるためらしく、彼等の怪我は魔物から受けた傷らしい。そして怪我の跡を確認したミナは傷口を見て表情を一変させる。
「この傷口、まるで刃物に斬られたような……まさか!?」
「昆虫種か!?」
倒れている怪我人は全員が鋭い刃物で切り裂かれたような傷口、そして何かに食いちぎられたような傷跡も存在した。この事からすぐにミナとコネコは先日に遭遇した昆虫種の存在を思い出す。
とにかく生き残っている怪我人から情報を得ようとしたとき、街道から明らかに人間ではない生物の鳴き声が響き渡る。
何事かと視線を向けると、そこには小さな子供を抱えた女性に襲い掛かろうとする巨大な「蟷螂」の姿が存在した。
「いやぁああっ!?だ、誰か、助けてぇっ!!」
「ギチギチギチッ……!!」
「やばい、早く助け……うわっ!?」
「退いてっ!!」
襲われそうになっている母子を見てジャイは慌てて駆け出そうとしたが、そんな彼の背中を踏み台にしてミナは空中に跳躍を行うと、自分が手にした槍を振りかざす。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます