第466話 ゴブリンキングを倒せるのは……

「この推測が正しかった場合、ゴブリンキングが襲う相手は白銀級以下の冒険者に限られるはず、そして金色の隼の中に所属し、丁度良く白銀級冒険者の証を与えられる冒険者がここに集まっているね」

「待て!!ルイ、まさかこいつらにゴブリンキングの討伐を命じる気か?」

「ここにいる彼等は既にゴブリンキングの討伐を果たしていると報告を受けている。だから僕はゴブリンキングに勝てるのは彼等しかいないと思っている」

「馬鹿なっ……地上の魔物と大迷宮の魔物は違うんだぞ!?」



ダンゾウはレナ達の実力を認めてはいるが、それでも彼等に大迷宮内に潜むゴブリンキングに戦いを挑ませる事に反対だった。確かに先日レナ達はゴブリンキングの打倒に成功したが、地上で誕生した魔物と大迷宮に発生する魔物は危険度が違う。


例えば地上のゴブリンならば通常種ならば一般人でも対応が出来る相手である。場合によっては子供でも倒せるゴブリンも存在するだろう。だが、大迷宮に生息するゴブリンの場合は一般人では到底太刀打ちできず、冒険者以外に相手に出来る人間はいない。



「地上のゴブリンキングでも本来は金級冒険者か、あるいは黄金級冒険者が対応しなければならない相手だ。ましてや今回のゴブリンキングは、黄金級冒険者に昇格間近だったロウガと他の仲間を殺した相手だぞ?こいつらでは荷が重すぎる……俺は反対だ」

「だが、僕達が出向いたとしてもゴブリンキングが襲ってくる保障はない。これまでに何度も時間があれば大迷宮に潜った。なのに一度も姿を見る事が出来なかった……もしも僕の推測が正しかった場合、ゴブリンキングと戦えるとしたら、ここにいるレナ君たちだけだろう」

「ならば俺達が白銀級冒険者のバッジを身に着けて、大迷宮に挑めばいいだろう?」

「駄目だ、それをするには僕達は大迷宮に入り浸り過ぎた。既にゴブリンキングに僕達の顔が覚えられている可能性が高い。実際に僕もイルミナも既にバッジを偽装して何度も潜ったが、成果はなかった」

「ならば冒険者ギルドの金級冒険者に事情を話して白銀級冒険者に変装して潜って貰えば……」

「駄目だ、並大抵の金級冒険者ではゴブリンキングの相手にもならない。前にも言っただろう?ゴブリンキングはあのロウガを倒した存在だと……つまり、実力と功績がある人間にしか討伐を任せられないとね」

「だが……」

「他に手はないんだ。しかし……決めるのは彼等だ」



ルイはレナ達に視線を向けると、最終的な判断はレナ達に委ねた。そんな彼女に対してレナ達は顔を見合わせ、答えに迷う。


ゴブリンキングが恐ろしい存在である事はレナ達も嫌と言う程に理解し、つい先日に殺されかけた思い出が蘇る。だが、ロウガの仇を討ちたいという想いを抱いたナオは決心したように頷き、ナオの意思を察したドリスも真っ先に承諾した。



「僕は……戦います」

「ナオがそういうのなら私も賛成ですわ」

「そうか……君達はどうだい?」



ナオとドリスの決心を聞いたルイは他の4人に顔を向けると、レナ達は黙って互いの顔を見合わせ、同時に頷く。ナオとドリスだけを行かせるわけにはいかず、自分たちも挑む事を決意した。



「俺達も戦います」

「へへへ……師匠の願いを聞いてやるのが弟子の務めだからな」

「皆が行くなら僕も戦います」

「どすこいっ!!」

「……えっと、デブリ君も賛成という事でいいのかな?」

「あ、はい。そういう意味で捉えてください」

「ごっつぁんっ!!」

「あ、うん。頼りにしてるよ……」



全員の賛同を得られるとルイは微笑み、ダンゾウは頭を抱えてため息を吐き出すが、現状ではゴブリンキングが姿を現すのは黄金級と金級以外の冒険者だけだとしか考えられなかった。その点ではまだミナ達は正式に冒険者ではなく、また冒険者に復帰していないレナとコネコは都合がよかった。


ここにいるレナ達は地上種とはいえ、少し前にゴブリンキングを倒したばかりの実力者である事は違いない。ダリル商会に残ったシノも含めれば合計で7人でゴブリンキングに挑む事になるが、その前にルイが助言を行う。



「レナ君たちの冒険者集団は7人だったね。そして戦闘職が5人、魔法職が2人……ふむ、回復役がいないのは少し厳しいな」

「回復役というと……治癒魔導士や修道女の称号の方を差しているのですか?」

「そうだね、基本的には大人数の冒険者集団で動く場合、やはり一人は回復役を加えておいた方が良いよ。誰か心当たりはいないのかい?」

「回復役ですか……魔法科に私の知り合いの治癒魔導士が何人かいますが、どの方も大迷宮に挑むには少し力が不安ですわね」

「冒険者ギルドに所属する治癒魔導士か修道女を探した方がいいかな……」

「治癒魔導士か……治癒魔導士?」

「おっ?誰か心当たりがあるのか兄ちゃん?」



治癒魔導士という言葉にレナの脳裏に魔法学園に勤務する一人の女性が思い浮かび、実力的には申し分なく、昔からの知り合いなので頼み込めば協力を取り次げるかもしれない相手だった――






――それからしばらく時間が経過した後、現在は火竜の件で一時休校になっている魔法学園にレナは訪れると、医療室で勤務している「アイリ」の元に訪れる。運が良い事に休校中でもアイリは魔法学園で入り浸っていたらしく、彼女に事情を話した。

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