第348話 対抗戦第二試合〈コネコVSシュリ〉

「では対抗戦第二試合を行います。試合、開始!!」

「よし、行くぞっ!!」



試合が開始されるのと同時にコネコは動き出すと、彼女は石壁の上に登ってまずは闘技台の様子を伺う。先ほどの挑発でシュリが真っ先に飛び出してくるかとコネコは思ったが、予想に反して彼女は姿を見せず、西側に設置された石壁のどれかに身を隠したらしい。


コネコは闘技台の様子を観察し、何処にシュリが隠れているのかを探索するために近付く。あまりに接近すると魔法で攻撃される恐れがあるが、シュリを見つけ出さない事にはコネコも攻撃は仕掛けられず、危険を承知で闘技台の中央部まで移動を行う。



「おい、隠れてないで出てこい!!このつるぺた!!」



障害物が存在しない闘技台の中央部の方がコネコにとっては戦いやすく、挑発してシュリを呼び寄せようとするが反応はない。


流石にこんな安い手には引っ掛からないかと思ったコネコはどうするべきか悩む。無暗に相手の隠れている西側の陣地に入るのは危険だが、近づかなければコネコにシュリを倒す手段はない。



(くそ、この壁が邪魔だな……思いっきり走れないじゃん)



コネコにとっては今回の闘技台は前回の対抗戦に用意された闘技台以上に相性が悪く、彼女の持ち味は「脚力」である。コネコが本気で走れば誰にも追いつけず、加速する事で非力な彼女でも強烈な足技を繰り出せることが出来た。


しかし、今回の闘技台は直方体の形状でしかも障害物が存在しないのは中央だけである。石壁が設置された東側と西側では走る事も困難のため、コネコにとっては非常に不利な舞台だった。最も泣き言は言ってられず、コネコは自分の身軽さを利用して石壁の上に跳躍すると、そのまま石壁の上を渡ってシュリを探す。



「おい、いつまでも隠れてないで出てこいよ!!」

「……調子に乗るな、このガキ!!」

「うわっ!?」



別の石壁に飛び移ろうとしたコネコは空中に展開された魔法陣に衝突し、彼女は体勢を崩して地面に叩きつけられそうになったが、どうにか空中で身体を回転させて着地を行う。



「いててっ……あれ、痛くない?」



結構な勢いで魔法陣に衝突したにも関わらずにコネコには身体に痛みはなく、衝撃が身体に広がったのは確かなのだが、特に怪我は負っていない。その事にコネコは戸惑うが、どうやらシュリの作り出す「結界魔法」は物理攻撃を無効化する一方で相手を傷つける事は出来ないらしい。


コネコは空中に唐突に現れた魔法陣を見てシュリが近くに隠れているのだと思い、彼女の姿を探す。だが、石壁が邪魔をして見つけることが出来ず、仕方なくコネコは闘技台の中央部まで離れようとした。



「くそ、何処に隠れて……あいでぇっ!?」



だが、走り抜けようとした瞬間にコネコの顔面に小さな魔法陣が出現して顔面が衝突し、コネコはのけ反って倒れてしまう。痛みがないとはいえ、身体に衝撃が走るのでコネコは顔を抑えながら起き上がると、見えない場所に隠れているシュリに怒鳴りつけた。



「こ、この野郎……何処に隠れてるんだ!!」

「ここだ、ガキ」

「うっ!?」



頭上から聞こえてきた声にコネコは振り返ると、そこには石壁の上に立つシュリが存在し、彼女は魔剣を構えるとコネコに向けて飛び掛かってきた。


上から攻撃を仕掛けてくるかと思ったコネコは反射的に両腕で顔を庇うと、シュリは空中に魔法陣を展開して足場にすると、そのままコネコを無視して向かい側の石壁に飛び移る。それを見たコネコは唖然とするが、すぐに自分が弄ばれた事に気付く。



「ふっ……その程度か?」

「ま、待てぇっ!!」



シュリの挑発に怒りと恥ずかしさで頬を紅潮させてコネコは起き上がると、シュリを追いかけようとしたが既に彼女は石壁の向こう側に姿を消してしまう。急いで追いかけようとしたがコネコだが、ここで足がもつれて危うくこけそうになる。



「うわっと……あ、危なかった」



咄嗟に石壁に張り付いて転ぶのは免れたコネコだが、幸いな事に危うく転びそうになったことで冷静になると、一先ずは心を落ち着かせる。そして彼女は冷静に周囲を警戒しながらもこれからの行動を考えた。


無暗やたらに動いてもシュリを見つける事は出来ず、逆に先ほどのように罠にかかると気付いたコネコは無策に彼女を追うのを止める事にした。考え無しで行動するのは止めろと普段からレナ達にも注意されている彼女はどうやってシュリを見つけ出すのかを真剣に考え、まずはシュリの厄介な「結界魔法」の攻略法を考察する。



(あの魔法陣が厄介だな。急に現れて邪魔してくるし、しかも飛んでいる時にまで邪魔してくるから危ないし……どうすりゃいいんだ?)



無暗に石壁の上がって飛び回る行為は危険であり、またも空中に魔法陣を出現されたら今度は上手く着地する自信はないコネコは思い悩む。


この石壁に阻まれた通路では全力で走る事も難しく、加速の際中にシュリが魔法陣で阻害する可能性もあった。

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