第280話 ゴエモン対策
「その忍具というのは他にどんな物があるのか教えて欲しい。奴が現れた時の対抗手段を用意しなければ……」
「なら、私達に協力する事を約束してほしい。そもそもここへ来たのは貴方に助けてもらうため、どうか私の雇い主の願いを聞き入れて欲しい」
「約束しよう。むしろ、あの男を捕まえられるのであれば協力させてくれ!!」
「ほ、本当ですか?お願いします、どうか力を貸してください!!」
ジオはダリルの申し出を受け入れ、彼が所有するオリハルコンのイヤリングをゴエモンから守る事を誓う。その場で二人は握手を行うと、ジオはレナ達に視線を向ける。
「君たちの実力はマドウ大魔導士から定期的に報告を受けている。良かったら協力してくれないか?」
「え、私達も?」
「へえ、意外だな……子供は帰れとか言われるかと思ったよ」
「そんな事は言わないさ、何しろ君たちの噂は私の耳にもよく届く。ブロックゴーレムとミノタウロスを倒せる人間なんて、この王都にも滅多にいないからね」
先日の大迷宮でレナ達が活躍した件は王都で噂となって広まっており、レナ以外の者達も名前が有名になっていた。また、マドウと繋がりを持つジオはレナと近辺の出来事も知らされており、レナ以外にも優秀な魔法学園の生徒が居る事は知っていた。
20年以上も捕まえられる事が出来なかった大犯罪者を捕らえるためならば一人でも戦力が欲しい事は事実であり、ジオは子供であろうと優秀な人材ならば力を借りる事は躊躇せず、レナ達を迎えて具体的な策を考える――
――その日は全員が準備を整えるために一度解散した後、ジオは王城に遣いを出してマドウに報告を行う。しかし、彼は王都を離れていたらしく、連絡を取るのは時間が掛かった。
最も今回はマドウの力を借りず、自分達だけでゴエモンを捕まえるつもりだったジオは伝言を残して対策会議を行う。ゴエモンを迎え撃つのはダリルの屋敷よりも警備がしやすいジオの屋敷で行い、ダリルと共に自分は客室へ待機する。
レナ達はジオの私兵と使用人と共に警備を任される事になるが、レナ達の担当は屋敷の出入口の見張り役を任される。だが、泥棒が正面から乗り込んでくるとは思えず、この場所からゴエモンが姿を現す可能性は低いだろう。ジオはレナ達に協力を求める一方、一番危険が少ない場所の警備を任せて自分はイヤリングを所有するダリルと共にゴエモンの襲来を待つ。
「あ~あ、暇だな……こんな風にずっと立ちっぱなしでいいのか?」
「警戒を緩めてはいけませんよ。相手は20年以上も国の追跡から逃れ続けた大犯罪者……油断は出来ません」
「でも、大犯罪者といっても貧しい奴等を助けたりしてるんだろ?あたしにはゴエモンが悪い奴とは思えないんだけど……」
「コネコさん、今の言葉をゴエモンから盗まれた人の前で言えますの?盗まれた方々の中には何も悪い事もしていないのに理不尽に財産を奪われた方も居たはずです」
「それは……」
「相手が貧しい人間にお金を渡したとしても、その一方で他の人を不幸に陥れているのなら……僕はそれは正しい行為と思えないよ」
「うん、そうだよな……ごめん、あたしが悪かったよ」
皆の言葉にコネコは罰が悪そうな表情を浮かべ、彼女は過去にゴエモンから孤児院を救ってくれたので彼の事を「義賊」だと信じていたが、言われてみればゴエモンの行為によって不幸になった人間の事を考えると彼が善人だとは言えない。
それでも貧しい人間に施しを与えているという時点で彼が根っからの悪人とは思えず、皆の話が理解できる一方、コネコは心の何処かでゴエモンが本当は善人なのではないかと考えてしまう。
やがて夜が更け、見張りの交代の時間を迎えようとした時、屋敷の外の方から無数の足音が鳴り響く。何事かとレナ達は正面入口に視線を向けると、鉄柵越しに大勢の人間が駆けつけてきた。
「ここか!!ここに奴が現れるのか!!」
「ジオ将軍、お話を聞かせてください!!ゴエモンから予告状が届いたというのは本当ですか!?」
「ヒトノ新聞です!!どうか、取材させてください!!」
「な、何だっ!?」
駆けつけてきたのは浮浪者のようなみすぼらしい恰好をした男達と、王都の新聞記者を名乗る者、他にも兵士の恰好をした人間が鉄柵越しに騒ぎ立てる。
「ええい、退け貴様等!!我々はジオ将軍の命令を受けて応援に参ったのだぞ!!」
「応援!?という事はやはりゴエモンが現れるというのは本当の話なんですかっ!?」
「その話、本当か!?くそ、ゴエモン!!出てきやがれ!!俺達はお前のせいで何もかも失ったんだぞ!!」
「お、おいおい……何が起きてるんだ?」
「……やられた、これがゴエモンの作戦」
どうやら屋敷に集まったのはヒトノ国の兵士と、過去にゴエモンによって財産を奪われて浮浪者となった人間、最後にゴエモンが現れるという情報を聞いて駆けつけてきた新聞記者だと判明する。
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