第277話 ジオとの対面

「いいか、相手は将軍なんだぞ?いくらミナの嬢ちゃんの叔父といっても、決して失礼のないようにするんだぞ」

『は~い、お父さん』

「誰がお父さんだ!!」

「ジオ様、お客様がお見えです」

「あ、ちょっ……!?」



ダリルがレナ達に叱りつけている間にもアリアはノックを行い、室内のジオに話しかける。彼女が扉を開くと机の上に座り込み、書類に目を通すジオの姿が存在し、彼は書類を手放すと机から立ち上がってレナ達を出迎えた。



「おおっ、よくぞお越しくださったダリル殿、それに姪の友人の皆もよく来てくれた」

「はひっ!!お、お久しぶりでひゅジオ将軍!!」

「ちょ、おっちゃんが一番焦ってどうすんだよ!?」

「ははは、私が将軍だからといって気を遣わなくても結構ですよ。それで、本日はどのようなご用件で?」

「あ、あの……実はですね――」



人に注意しておきながら自分が焦りすぎて舌が回らないダリルにコネコは突っ込むが、そんな彼に対してジオは気にした風もなく笑いかける。


少しは落ち着いたダリルはジオにこれまでの経緯を話し、自分の商会が保有する「オリハルコンのイヤリング」をゴエモンが狙っている事、そしてイヤリングを守るためにジオの力を借りたい事を告げた。


一国の将軍に対して力を貸して欲しいなど一介の商人にしか過ぎないダリルは出過ぎた真似をしたかと思ったが、話を聞き終えたジオは険しい表情を浮かべる。



「そうですか、あのゴエモンが……全く、最近は姿を現さないと思っていたのにまだ生きていたのかあの男は……!!」

「しょ、将軍はゴエモンの事を知っていらっしゃるのですか?」

「ええ、奴とは10年以上の付き合いです。私が将軍になってから幾度も奴を捕まえようとしました」

「えっ!?そうなんですか!?」



ジオがゴエモンと接触した事があるのを知ってダリルは驚き、ジオは苦々しい表情を浮かべながらゴエモンというのがどのような存在なのかを話す。



「ゴエモンが20年以上も捕まっていない理由、それは奴が扱う謎の能力が関係している。奴はどうやら盗賊や暗殺者と異なる称号を持つらしく、姿や気配を巧妙に隠す技能だけではなく、その戦闘力も侮れない」

「戦闘力?」



盗賊や暗殺者などの職業の人間は「対人戦」などでは非常に優れており、実際に年齢が幼く、非力であるコネコでも不意打ちならば冒険者を倒す事も出来る。


但し、魔物との戦闘では人間相手には通じる小細工も通用しない場面が多く、盗賊や暗殺者の称号を持つ人間は冒険者には向いていない。仮に冒険者になったとしても偵察役や他の仲間の補助など、戦闘以外の役目を任せられる事が多い。


しかし、ジオによればゴエモンは盗賊や暗殺者並の高い潜伏技術を持つ一方、その戦闘力は普通の兵士では相手にもならず、将軍であるジオさえも油断すれば敗北しかねない実力を持つという。



「ゴエモンという男は「カタナ」という武器を扱う……これは東方の国に存在する武器だそうだが、奴はその武器を使って過去に3人の将軍を切り伏せています」

「か、かたな……?」

「っ……!!」



カタナという聞きなれない武器にダリルは首をかしげるが、後ろの方で聞いていたシノは目を見開く。その反応に気付いたレナはシノも元々は東方から訪れた人間だと前に話してくれた事を思い出す。



「そういえばシノも東方から来たんだっけ?えっと、確か名前は……」

「……日の国、このヒトノ国の遥か東に存在する小国」

「何!?という事は君はカタナが作り出された国の人間なのかっ!?」



シノが東方に存在する「日の国」と呼ばれる国から来たという話を聞いてジオは驚愕の表情を浮かべ、シノも頷く。



「私は元々は日の国の人間。だけど、私が住んでいる里は昔からの掟で年齢が10才を迎えると里を離れて暮らすように義務付けられている。里に戻るにはたくさんのお金を用意するか、あるいは国に仕えて武功を立てなければならない」

「10才になったら追い出されるのか!?酷い掟だなそれ……」

「そうでもない、里の子供達は小さい頃から一人で暮らしていけるように山の中で狩猟を教えて貰えるし、文字の読み書きも出来るように教わっている。だから一人で暮らすだけなら何とかなる……でも、私は家族に会いたいからお金を稼いでいる」

「そ、そうだったんだ……」



最初に会った時からシノが金銭に固執している節があるのは国へ戻るためであり、掟に従って大金を稼ぐために金払いの良いカーネ商会に働いていた。


彼女の目的は大金を稼ぎ、自分の生まれ育った村へ戻る事であり、家族と再会するために今まで生きてきたという。

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