第276話 武人揃い
「現在は執務室で書類の整理を行っています。客人に対して出迎えも出来ずに申し訳ありません。主人の代わりに謝罪します」
「い、いやいやいや!!急に来たこちらが悪いんですから!!謝罪なんて結構ですよ!?」
「そういって貰えると有難いです。では、執務室までご案内します」
相手が将軍とあっては流石にダリルも気を遣わずにはいられず、アリアの言葉を聞いて慌てふためく。そんな彼にアリアは改めて頭を下げると、ジオが存在する執務室まで案内を行う。
執務室に移動する途中、レナは屋敷の中の装飾品の多くが武器の類である事に気付き、壁に立てかけられている剣や槍を見て最初は装飾用の偽物かと思ったが、近付いてみると本物である事に気付く。
「あれ、もしかして壁に飾られてる武器や防具って……全部本物なんですか?」
「はい。これらの品物はジオ将軍が功績を上げた時に使用した武器を飾られています」
「えっ!?じゃあ、これ全部が本物なのか!?」
「その通りです。屋敷に侵入者が現れた場合、すぐに対応できるように武器を飾っています。防犯対策としての役割もあります」
ジオの屋敷の中に本物の武器や防具が飾られているのは彼自身の武功を示すため、それと同時に侵入者に対しての防衛対策として飾られているというが、一般人であるダリルからすれば危険ではないのかと不安を抱く。
「し、しかし……いくらなんでも本物の武器と防具を用意するのはまずいんじゃないですか?さっきは侵入者対策と言いましたけど、その侵入者に武器を与えてしまう恐れがあるんじゃ……」
「その点に関しても問題はありません。この屋敷に存在する存在する人間全員がジオ将軍から指導を受けた強者です。生半可な実力しか持たない侵入者など相手にもなりません」
「えっ!?兵士の方々だけではなく、メイドさんも戦えるのですか!?」
「なるほど……納得しました。道理で動きに隙がないと思っていましたが、アリアさんも武人だったんですね」
「ふふっ……お気づきにでしたか。私の見立てでは皆様もただ者ではありませんね」
格闘家であるナオはいち早くメイドたちも外の兵士と同様に武人である事を見抜き、アリアの方もレナ達を見て普通の子供ではない事を見抜いていた。
特に彼女が興味を抱いたのはナオとデブリとレナであり、3人を見てアリアはどちらに対しても対照的な感想を抱く。
(こちらのお方は男装しているようですが、体つきから女性のようですね。それにこの年齢で既に相当な鍛錬と経験を積んでいる……恐らくは幼少期から武人としての指導を受けていたのでしょう)
ナオに対するアリアの感想は彼女が若いながらに既に「武人」として高い領域に至っており、恐らくはヒトノ国の将軍級の実力を既に保有していると見抜く。
(あの体格の大きい少年も見た目に反してかなり鍛えこまれていますね。太っているように見えますが、実際は筋肉と脂肪を組み合わせた肉体のようです。肉体その物が柔と剛を兼ね備えている……将来性は高いでしょう)
一件は肥満体型にしか見えないデブリだが、彼の制服から覗き見える肉体を見てアリアはただ者ではないと感じとる。しかし、最後のレナに関してはアリアは疑問を抱かざるを得ない。
(こちらの少年は……変わった雰囲気を纏っています。身体は鍛えてはいるようですが、とても武人には見えない。でも、何故か普通の人間には見えない……大魔導士様に近い雰囲気を感じます。皆様の学友と聞いていますが、面白い方ばかりですね……他の人達も常人ではないようです)
レナに関してはアリアは普通の人間ではないと感じ取れたが、どう見ても武人には見えない。しかし、決して常人とは思えない程の変わった雰囲気を纏っていた。この感覚は前に屋敷に訪れたマドウを思い出させる。彼もレナと同様の雰囲気を纏っていた気がした。
残りのシノ、コネコ、ドリスに関してもアリアは彼女達が普通の人間ではない事を悟り、ミナが学園で面白い友人を作った事に内心笑みを浮かべる。そんな事を考えている間にもアリアは執務室の前に辿り着いた事に気付き、扉をノックする前に振り返る。
「この中にジオ様が居ます」
「そ、そうですか……ふうっ、いいかお前等?絶対に今回は失礼な真似をするんじゃないぞ?」
「あ、この壁の武器格好いいな!!」
「鍵爪……確かにコネコに似合いそう」
「あ、触ってみる?何だったら装備してもいいよ」
「おい、俺の話を聞いてたか!?」
自分の言葉を聞いていなかったのか勝手な行動をするコネコ達にダリルは叱りつけ、その様子はまるで本当に悪戯をする子供を叱りつけるようにする父親(というよりオヤジ)にしか見えず、彼はくれぐれも失礼な真似をしないように全員に注意する。
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