第254話 皆の力で
「皆さん、下がってください!!火炎槍!!」
「ゴガァアアッ……!?」
ドリスは先日の試験で魔法耐性が非常に高い世界樹製の人形を破壊した合成魔術を発動させ、今度は見事にブロックゴーレムの顔面へと衝突させた。
ブロックゴーレムの肉体に更なる衝撃が襲い掛かった事で亀裂が全体にまで一気に広がり、それを見たレナは止めを刺すために瞬間加速を発動させて駆け出す。今度こそ確実に仕留めるために付与魔法の更なる重ね掛けを行う。
(硬い物ほど……砕けやすい!!)
既に右手の闘拳には「
「
「ゴハァッ!?」
「やった!!」
「いや……まだ終わってない」
見事に空中に飛んだレナの拳がブロックゴーレムの顔面に的中すると、地属性の魔石によって最大限に強化された一撃がブロックゴーレムの頭部を完全に砕く。
しかし、頭部を失っても尚、残されたブロックゴーレムの胴体はレナに向けて両手を伸ばす。ゴーレムを倒すにはあくまでも体内の核を破壊するか、摘出する以外に方法はない。いくら頭部を砕こうと核を破壊しなければ完全には倒せない。
『ッ……!!』
「うわっ!?」
「レナ君!!」
「兄ちゃんっ!!」
両手でブロックゴーレムに掴まったレナは恐ろしい力で握り締められ、頭部を失って声も出ないはずのブロックゴーレムだが、レナの耳には確かにブロックゴーレムの怒りの唸り声のような音が聞こえた。
このままでは握りつぶされると思ったレナは右手を伸ばし、ブロックゴーレムの胸元に構える。そして意識を集中させ、目を見開く。
「喰らえっ!!」
『ッ……!?』
闘拳の金具を取り外した瞬間、まるでロケットのような勢いで闘拳がブロックゴーレムの胸元に目掛けて発射される。
これまでの攻撃で亀裂が走っていた闘拳はブロックゴーレムの胸元にめり込み、そのまま内部まで入り込む。それを確認したレナは笑みを浮かべると、掌を闘拳に蓄積させた魔力を「弾け」させた。
「衝撃……解放!!」
次の瞬間、ブロックゴーレムの体内に強烈な衝撃波が発生し、内側から爆発を引き起こしたかのようにブロックゴーレムが砕け散った。あまりの衝撃に通路内に振動が走る。
「うわぁっ!?」
「きゃあっ!?」
「身代わりの術」
「はぐっ!?こ、こら……僕を盾にするな!!」
吹き飛んできたブロックゴーレムの砕けた破片に巻き込まれないようにミナ達は身体を伏せ、シノはデブリを盾にして防ぐ。そして両腕から解放されたレナも地面に降り立つと、上半身が完全に吹き飛んで消えてしまったブロックゴーレムの姿を見て一息吐き出す。
闘拳に付与させた魔力を離れた位置から拡散させるという方法を試したのはレナも初めてではあったが、魔力を付与させた物体を操作する事は日頃から行っているので成功する自信はあった。レナは自分の元へ帰って来たかの様に足元に転がって来た闘拳を拾い上げると、無茶をし過ぎたせいで罅が入っていた。
(これ以上に使うと壊れそうだな……折角、ミスリルで強化したのに)
ミスリル製の武器でさえも現在のレナの付与魔法には耐え切れないらしく、これ以上の使用は危ういと判断したレナは戻ったらムクチに修理を願う事にした。
「れ、レナ君……大丈夫だった?」
「凄いな兄ちゃん、何時の間にあんな凄い技を覚えたんだよ!?」
「全く、お前はどこまで強くなれば気が済むんだ……」
「流石はレナさん、ですわね」
「ぐっじょぶ」
「ぐっじょ……え?」
全員に褒められたレナは照れ臭そうに笑うと、改めて上半身を破壊したブロックゴーレムに振り返る。ロックゴーレムよりも強敵ではあったが、ナオの攻撃を見てレナは内側に衝撃を与える攻撃が弱点だと見抜き、最後の最後で有効的な攻撃を見出す。
下半身だけとなったブロックゴーレムは仁王立ちした状態のまま動かず、まだ生きているのではないかと不安を抱くが、動く様子はない。また、破壊された残骸の中から青く光り輝く水晶のような物が落ちている事に気付き、拾い上げる。
「これは……」
「そ、それはまさか!?」
「わあっ!?びっくりした!!」
レナが拾い上げた掌程の大きさの青色の水晶を見てドリスは興奮し、ブロックゴーレムの体内に存在したと思われる水晶を見て彼女は自分達の目的の物だと確信する。
「きっと、それこそがオリハル水晶ですわ!!オリハルコンの素材となる水晶です!!」
「これがあのオリハル水晶だと!?」
「早っ!?もう見つけたのかよ……まだ入って10分も経過してないのに!?」
「凄い幸運、としか言いようがない」
あっさりとオリハル水晶を手に入れてしまったレナ達は動揺を隠せず、全員がレナの手元に収まったオリハル水晶に視線を向けた。ミスリルを上回る魔法金属のオリハルコンの素材となる水晶であり、これでレナはダリルを救えると確信した。
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