第230話 煉瓦の大迷宮へ

「どうですか皆さん?私と一緒に一獲千金を狙ってみませんか!?ブロックゴーレムを倒すだけで私達全員がお金持ちになれますわよ!!」

「そんなにオリハルコンというのは価値が高いんですか?ちなみに相場はいくらぐらい……?」

「そうですわね、ミスリルの100倍ぐらいの価値だと考えればいいですわ。何しろ、ヒヒイロカネと同様に稀少な魔法金属ですから」

「100倍!?そりゃ凄いなっ!!」



伝説の魔法金属だけはあり、ミスリルの100倍の価値を誇るというオリハルコンを入手すれば「一獲千金」という言葉も満更大げさとは言えず、俄然とシノとコネコは乗り気で参加する。


実際の所、オリハルコンがミスリルよりも100倍の価値があるのかは不明だが、少なくとも希少金属である事は間違いなく、伝説の武器の素材としてもよく利用されているため、ミスリルよりも人気が高いのは間違いない。



「はいはい!!あたしは一緒に行くぞ!!」

「私も同行する……これでお金を一気に集められる」

「う~ん……二人が行くなら僕も行こうかな」

「じゃあ、俺も……」

「皆さんならそう言ってくれると信じてましたわ!!さあ、共にお金持ちになるために頑張りましょう!!」

「正直、助かります……絶対に行くと言って聞かなかったので」



レナ達が同行する事にドリスは歓喜し、ナオは申し訳なさそうな表情を浮かべるが、ここでコネコがデブリの事を思い出す。



「あ、でもデブリの兄ちゃんはどうする?一応は誘っておくか?」

「確かにデブリさんも一緒だと心強いですわね。今はどちらに?」

「多分、訓練場の方に向かったと思うけど……俺が呼んでくるよ。皆は先に校門に向かってて」

「兄ちゃん、それならあたしが行った方が早いと思うぞ?」

「駄目だよ、コネコに行かせると廊下を走って行くでしょ?校則はちゃんと守らないと」

「そんな律儀な……別にそれぐらい大丈夫だろ?」

「いいから皆と先に行っててよ。じゃあ、また後でね」



デブリを誘うためにレナは教室を抜け出すと、恐らくは校舎の裏に存在する特別訓練場にいると思われるデブリの元へ向かう――






――数分後、レナは特別訓練場へ辿り着いたが誰もいない事に気付き、不思議に思う。デブリがここで訓練していると思ったが彼の姿が見当たらない事に疑問を抱き、訓練場の様子を調べる。



「デブリ君?いないの?」



声を掛けても返事は戻らず、レナは別の場所で訓練しているのかと思ったが、彼が訓を行う時は必ずこちらの訓練場を使用している事は知っていた。


だが、訓練場に辿り着いたのにデブリの姿が見えない事に不審に思ったレナは周囲を調べると、デブリの名前が記された鞄が地面に置いている事に気付く。鞄を拾い上げて間違いなくデブリ本人の物である事を確かめると、持ち主は何処に消えたのかと戸惑う。



「これは……どういう事だ?」



デブリの姿は存在せず、荷物だけが放置された状態である事にレナは疑問を抱き、嫌な予感を覚える。デブリの荷物を確認すると彼のカバンと稽古の時に邪魔になると判断したのか上着が共に置かれており、それ以外には何もなかった。


訓練の途中でデブリが何かの用事で校舎内に戻るとしても上着を脱いだ状態で戻るのはおかしく、不審に思ったレナは周囲に視線を向けると、校舎の方から複数人の生徒が姿を現した。



「ひひっ、丁度いい。あっちから来やがったぜ」

「呼び出す手間が省けたな……」

「くくくっ……あの時の借りを返してやるぜ」

「君達は……」



姿を現したのは対抗戦の際、金に目が眩んでレナを襲いかかった不良生徒達だった。彼等は対抗戦の後に停学を受けたと聞いていたが、どうやら謹慎は解けたらしく、学園に戻って来たらしい。


この状況で姿を現した不良生徒達にレナは警戒心を抱き、この場に存在しないデブリが彼等に何かされたのかと考える。しかし、デブリは騎士科の生徒の中では間違いなく5本指に入る強さを誇り、素手だけで戦う条件ならば彼は間違いなくナオと並んで最強の生徒である。


そんなデブリが碌に授業も受けず、普段からの生活態度が悪い不良生徒達に後れを取るとはレナは思えなかった。



「……ここにいたはずのデブリ君の事を知らない?」

「さあな……と言いたいところだが、知ってるぜ」

「ほら、連れてこい!!」

「連れてこいじゃねえよ!!こいつ、馬鹿みたいに重いんだぞ……お前等も手伝え!!」



不良生徒達の後方から数人がかりでデブリを担いだ生徒達が現れ、その姿を見たレナは目を見開く。いったい何があったのかデブリは身体に火傷を負った状態で現れ、レナの姿を見ると苦痛の表情を浮かべながら逃げるように告げる。



「ううっ……れ、レナ、逃げろ……僕に構うな……!!」

「デブリ君!?」

「ふんっ……手こずらせてくれたが、この通りこいつは俺達の人質になった」

「俺達に逆らおうとするならこいつがどうなるか……分かるな?」



無理やり立たせたデブリに対して不良生徒の一人が懐から短剣を取り出し、デブリの首筋に突きつける。デブリはその生徒に対して睨みつけるが、痛めつけられたせいで上手く身体が動かないらしく、歯向かう事が出来ない。


デブリを取り押さえる生徒たちの姿を見て、レナは彼等がデブリをここまで痛めつけたのかと怒りを抱くが、デブリは苦痛の表情を浮かべながらもレナに叫ぶ。



「レナ、逃げろ!!こいつらは僕が何とかする……ぐふっ!?」

「いちいちうるさいんだよ豚が!!」

「調子に乗りやがって……お強い仲間が傍にいなければてめえなんか俺達だけで十分なんだよ!!」

「止めろっ!!」



怪我をしているデブリの腹部に蹴りを叩き込む生徒に対してレナは怒鳴りつけると、付与魔法を発動させてデブリを救おうとした。しかし、その前に校舎の方角から別の男子生徒の声が響く。

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