第34話 冒険者の特権

「えっと……このバッジは冒険者の証であると同時に身分証にもなります。だから無くさないように気を付けてね」

「はい!!あれ?でも、確かバルさんが付けていたのは金色でしたよね?」

「そうだね、でも君の場合は新人の冒険者だから「銅級」のバッジが義務付けられているの。冒険者の間には階級が存在して一番下が銅級、その上が銀、白銀、金、黄金の5つに分けられているの」

「銅、銀、白銀、金、黄金……という事は昇格試験もあるんですか?」

「いや、試験があるのは黄金級だけで、白銀級までは依頼の達成した時に得られる評価点ポイントを一定数集めれば昇格できます」

「評価点……?」



聞き慣れない言葉にレナは戸惑うと、イリナは先ほど話していた冒険者が持ち込んできた依頼書を取り出し、依頼書の下の方に書かれている数字を示す。



「これが評価点を現す数字よ。ほら、ここに3と書いてあるでしょう?この依頼を達成した場合に得られる評価点が表示されているの」

「この数字が昇格とどんな関係があるんですか?」

「下位の冒険者が昇格するためにはこの依頼を達成して評価点を一定数まで集めれば昇格が認められるの。例えば銅級の場合は100点集めれば銀級へ昇格、銀級の場合は300点、白銀級の場合は500点の評価点を貯める必要があるの。但し、昇格した際に今まで手に入れた評価点は無効化されるから最初から集め直す事になります」

「評価点が減らされる事もあるんですか?」

「当然あります。依頼を失敗した場合、冒険者の品格を落とすような振る舞い、分かりやすく言えば問題行動と見なされる行為をすれば評価点は減点、場合によっては等級を降格される事もよくあります。だから冒険者になった以上は立ち振る舞いに気をつけて下さいね」

「は、はい!!」



イリナは念押ししてレナに注意を行うと、次に彼女は冒険者の特権に関していくつか説明しておく。


冒険者として活動する以上は子供であろうと失敗は許されず、レナが決して間違いを起こさないようにイリナは特権の詳細を伝える。



「先ほども言ったように冒険者になれば一部の店で商品の割引がされ、大抵の街の通行料は免除されます。また、怪我や病気になった場合も手当てがでます。等級が高い冒険者ほど優遇されて場合によっては国から直接依頼を申し込まれる事もあるから忘れないように!!」

「国からも……何か、凄いですね」

「その通り、冒険者は本当に凄く責任がある仕事なんです!!それと冒険者の仕事は魔物の討伐だけではなく、商団や貴族の護衛、野盗の討伐、生態系の調査など様々な仕事があります。だから無理して魔物の討伐依頼だけを引き受ける必要はないから注意してね」

「はい、その辺の話はおじさんから聞いています」



冒険者の職業は決して魔物退治だけではなく、基本的には「何でも屋」のように様々な仕事の依頼が届く。その仕事の難易度に合わせて評価点が振り分けらえる事も伝えた。


場合によっては冒険者がやる必要があるのか疑問を抱く仕事内容もあるが、依頼の受注は個人の自由である。



「依頼を引き受けるには掲示板に張り付けている依頼書を受付口まで運べば受理されます。だけど、依頼によって等級をしている物も存在するから全て引き受けられるわけじゃないからね。評価点を稼ぐ為に手あたり次第に依頼を引き受ける事は出来ないから気を付けるように!!」

「そうなんですか……分かりました、色々と教えてくれてありがとうございます」



レナは丁寧にお辞儀を行うと、イリナは少し照れ臭そうな表情を浮かべ、彼に銅級のバッジを差し出す。まさか本当に合格するとは思わなかったが、ギルドの規定として合格した以上は彼を冒険者と認めるしかない。



「これが君の冒険者の証になるから、ちゃんと常日頃から持ち歩くように注意してね」

「はい!!あ、でも……仮に紛失した場合はどうなるんですか?」

「その場合はギルドに報告して新しいのを作り出します。但し、バッジが出来上がるまでは一切の仕事を引き受けられないから絶対に無くさないようにしてね!!」

「は、はい……」



力強く注意されたレナはバッジを受け止めて服に嵌めると、他の冒険者達が新しく仲間に入ったレナに対して拍手を行う。



「おめでとう!!これで君も冒険者だな!!」

「何か分からない事があったらお兄さんやお姉さんに聞けよ!!」

「新人、最初の内は簡単な依頼から重ねて行けよ。間違ってもいきなり魔物の討伐なんて無謀な真似はするなよ」



からかい半分に声を掛ける者、本気で心配する者、先輩冒険者として助言を行う者、色々な人物がレナに声を掛け、今の所は殆どの冒険者がレナに好意的に接していた。そんな彼等に頭を下げながらレナは早速掲示板の方に赴き、今日から仕事を行って生活費を稼ぐ為に依頼書を吟味する。


掲示板に張り出されている依頼書の数は多く、少なくとも50枚は張り出されていた。半分近くは魔物の討伐の依頼だったが、残りの半分はイリナの言う通りに冒険者がする必要があるのかと思うような内容の仕事ばかりだった。



「子供の子守、防壁の修理、店の手伝い……本当に色々あるんだ。あれ、これだけ妙に評価点が高い?」



魔物の討伐系の依頼書以外の仕事の中でレナは評価点が「5」と表記されている依頼書の存在に気付き、内容を確認すると三日以内に回復薬の原材料となる「満月草」の採取を行う様に記されていた。

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