第23節・大浴場の三人娘


「ぷわっはぁー!! 生き返るわぁ……」


 大浴場の湯に浸かりながらミリは手足を伸ばして極楽と言った表情になっていた。


 私も浴槽に入ると湯の心地のよい熱さを全身に感じる。

なるほど、これは確かに極楽だ。

気を抜いたら寝てしまいそうだ。


「こんなしっかりとしたお風呂に入るのはいつ以来かしらねぇ」


「私は……記憶にある範囲だと初めて」


 孤児院にはお風呂なんか無かった。

水を汲んできて体を洗うか子供たちと一緒に川に水浴びをしに行っていたのだ。


「昔、一緒にこういうお風呂に入ったことあるわよ。その時はルナミア様やメリナローズもいたけど」


 そうだったのか。

旅行かなにかをしていたのだろうか?


「懐かしいですね。またいつかあの宿に行きたいものです」


 そう言いながら体を洗い終えたユキノがやってきた。


 彼女は浴槽の縁に来るとしゃがみ、指で湯に触れる。

そして湯の匂いを嗅ぎ、己の指を舐めると「薬湯、ですね」と言う。


 そして浴槽に入り、肩まで湯に浸かると「ふぅ」と息を吐いた。


「しっかし……」


 ミリは此方をジト目で見ると近寄って来る。


「な、なに?」


「アンタ……一年半でさらに成長したでしょ!?」


 ミリが突然此方の胸を鷲掴みにしてきたため驚いて硬直してしまった。


「……くっ! デカイ……。たった一年半でどうしてこんな……。あとなんで私は育たない……!!」


 いや、そんなこと言われましても……。

大きいと戦う時に邪魔になると言いそうになったが、ミリを傷つける気がしたからやめた。


「ミリ様はミリ様で需要があると思われます」


「デカイ奴が言うなー!!」


「あの、そろそろ胸掴むの……」


 ミリは渋々と離れて行き、ユキノの方を見た。


「ところでアンタはなんであんな所にいたの? 一年半前は何かすることがあるって居なくなっていたけど……」


 ミリの言葉にユキノは困ったような表情を浮かべ、ミリが慌てて「あ! 言いたく無かったら言わなくてもいいのよ!」と言う。


「いえ。いつかは言わなくてはと思っていたので……」


 そう言うとユキノはじっと私の方を見た。


「私は……ヨアヒム様とは違う方に仕えていました。コーンゴルドに来たのはルナミア様の出自を調べるため。あの方がアルヴィリアの子孫なのかを確かめるためです」


 ユキノの言葉にミリは息を呑んだ。

つまり彼女は辺境伯家のメイドでは無く、どこかの誰かが送り込んできた間者ということだ。


「その事、ルナミア様は知ってるの?」


「……はい」


 ユキノは申し訳なさそうに私の方を見てくる。

記憶の無い私はそれに対して曖昧に頷くしか無く、モヤモヤとした気持ちになった。

もし過去のことを覚えていたら私は怒ったのだろうか?

それとも優しい言葉を掛けたのだろうか?


(記憶、やっぱり取り戻したいかも……)


「私は辺境伯家で過ごしている内に自分の役割に疑問を持ち、最終的にもとの職場に辞表を叩きつける事にしました。そしてその結果が……」


 ユキノが立ち上がり、自分のお腹を指差した。

そこには傷痕があり、ミリが「どうしたの、それ?」と眉を顰める。


「銃で撃たれました。我ながら良く生きていたものです。……深手を負った私はどうにか逃げ延び、身を隠しました。そして暫くの間怪我の治療と追手から逃げ回る生活を行い、そしてリーシェ様の噂を聞いたのです。自由都市ファスローに腕の立つゼダ人の傭兵が居ると」


 その後、彼女はファスローの町を訪れ私のことを見つけると町に滞在するようになったという。

そして生活資金の確保の為に色々とやっていたらドンに目を付けられ、彼に雇われたという。


「アンタもアンタで苦労していたのねぇ……。ところで、アンタの元の雇い主って? 命を狙ってくるあたりヤバそうな奴だけど」


「……それは」


 ユキノが言い淀んだ瞬間、誰かが大浴場に入ってきた。


 私たち以外が入ってくるとは思わなかったため、驚いて入ってきた人物を見る。


「……わぁ」


 それは美の塊のような存在であった。


 金の美しい髪を踵まで伸ばし、透き通った白い肌にサファイアの様な瞳。

そして何よりも目を奪われるのが……。


(お、大きい!?)


 いや、本当に大きい。

もう過去最高に大きい。

同性ですら釘付けにされるのだ。

異性だったらもう目が離せないだろう。


「ば、ばかな……。なんでこんなに差があるものなの……!?」


 ミリが凄まじいショックを受けている。

ユキノは「ふむ?」と入ってきたエルフの女性を見るとゆっくりと湯に座った。


「もし? ご一緒してもよろしいでしょうか?」


「え? あ、はい」


 エルフの女性に声を掛けられ私は慌てて頷く。

すると彼女は私の横に来て肩まで湯に浸かった。


(おおぅ……浮いている……)


「ふぅ……。いい湯ですね。わたくし、お風呂に入るのが好きなんです。皆さまは?」


「ええ、好きです。湯には煩いつもりですから」


「あら? ではこの湯に点数をつけるとしたらどの位でしょうか?」


 エルフの女性の言葉にユキノは暫く思案すると「八十点」と答えた。


「八十……。それは高い方かしら?」


「そう、ですね。そもそも八十と言ったのは百点と言える湯に出会ったことが無いからですし」


 ユキノがそう言うとエルフの女性は楽しそうに目を細めた。


「いつかそんな湯に会えるといいですね。わたくしは……この城から出れませんから」


 さて、ところで彼女は誰だろうか?

物凄く自然に私たちの会話に加わってきたエルフの女性。

言葉や振る舞いから気品を感じるためかなり上の身分のエルフでは無いだろうか?


「ああ、わたくしですか? わたくしは女王陛下の……召使のようなものですわ。外から来た方々が大浴場に入っていると聞いてお会いしたくなって……。お仕事の最中だったのに抜け出してしまいました」」


 エルフの女性は悪戯っぽく笑う。

気品がありつつ茶目っ気がある女性のようだ。

彼女は「んー」と湯の中で体を動かすと二つの山が揺れた。

うん、やっぱり凄いな。


「……リーシェ様、そう女性のを見るのは」


「ご、ごめん」


 ユキノに言われて慌てて目を逸らす。

するとエルフの女性はクスリと笑い「同性だしいくらでも見てもいいですよ。なんなら揉みます?」と言った。

え? いいの?


「……リーシェ様?」


「はい! ごめんなさい!」


 ふとミリの方を見ると彼女は敵意満載の視線でエルフの女性を見ていた。

ミリ、それは森のエルフだから?

それとも凄いものを持っているから?

もしかして両方?


 ミリの視線に気が付いたエルフの女性は彼女に優しく微笑むと「貴女が噂の方ですわね」と言う。


「ミリさん……で良いでしょうか? ミリさんに聞きたいことがあります。森の外のエルフはどのように暮らしているのでしょうか?」


「……知ってどうするのよ。森の外のことなんてアンタたちにとってはどうでもいいことでしょう?」


「そう……ですね。悲しいことに森の外に興味を持たない、持つ必要が無いと思っているエルフは多い。でもわたくしは違います。内側しか見ない、外界を知らぬ存在は停滞しいずれ滅ぶ。だから知りたいんです。森の外のことが」


 エルフの女性の言葉にミリは不機嫌そうに鼻を鳴らすと彼女から目を逸らし、「別に変らないわよ」と言った。


「寝て、食べて、働いて。森の中も外もきっとやっていることは変わらない。普通に生きているわ」


「でもそれが理解できない者が多い。悲しいことです」


 森の外と内。

住んでいるところが違うだけでどうして差別し、対立するのだろうか?

人はどうして理解し合う道を選ばず、争う道を進むのだろうか?


(なんか……昔もこんなこと考えていたような気がする)


「そう、普通に生きているのよ。エルフだろうが人間だろうが、同じ”ヒト”。だから理解しあえるし結ばれることもある……」


「ミリさんはお母様がエルフですね?」


「ええ、母様は狩人だったわ。それでオースエン大公お抱えの狩人だった父様と狩りの最中に出会って……ってなんでアンタにこんな話しをしなきゃいけないのよ」


「━━お二人は出会い、素敵な恋をして結ばれた。そうなのでしょう?」


 エルフの女性の言葉にミリは少し沈黙すると頷いた。


「周りの反対もあったらしいけれども二人は結ばれた。オースエン大公の計らいもあって私たちは人里離れたところに静かに、でも幸せに暮らしていたわ。ずっとこのまま幸せに暮らせればいいと思っていた……。でも、それは出来なかった。父様が殺され、母様も病で亡くなったわ。だから私は絶対に父様と母様を奪った奴を許さない」


「…………」


 ユキノがミリを見つめている。

その横顔には何か、決意のようなものを感じた。


「そう、ですか。無神経な質問をしてしまいました。申し訳御座いません」


「いいわよ、別に」


 大浴場が重苦しい雰囲気になる。

エルフの女性は目を閉じ、「どうやら空気を悪くしてしまったようですね」と言うと立ち上がる。


「先にあがらせていただきます。お詫びと言っては何ですけれども後で部屋にドレスを送らせていただきますわ」


「え? ドレス?」


 私がそう言うとエルフの女性は頷いた。


「この後謁見されるのでしょう? それ用の、です」


 エルフの女性は大浴場から出ていく。

私たちは彼女が去っていったほうを見るとミリが「なんか、変な奴だったわね」と苦笑した。


「そうですね。何というか、女として敗北したような感じが凄まじい人でした」


「いや、ユキノ。私らの中で一番良いもの持っているアンタが言うか」


 しかし本当に誰だったのだろうか?

結局名前とかを訊けなかった。

まあ、でも彼女が女王の召使ならばまた会う機会があるだろう。

その時に名前を訊くとしよう。


 そう考えながら私は湯に肩まで浸かり、大浴場の天井を見るのであった。


※※※


 貴賓室に戻ると着替えたロイとヘンリーが待っていた。

彼らは上等な服を身に纏っており、特にヘンリーは服を着こなしいつもと違う雰囲気であった。


 ヘンリーに「寝室にドレスがありますよ」と言われ、寝室に向かうと私たちのベッドの上にドレスが置かれていた。


「わぁ……」


 綺麗な純白のドレスだ。

こんな服を着る日が来るなんて思わなかった。


(でもなんか……布面積少なくない?)


 こ、こんなものなのだろうか?

私が首を傾げているとユキノがやって来て「お手伝いします」と言う。


「ん? 多分一人で着れるよ?」


「こういうのは着るだけでは駄目なのです。先程、ヘンリー様とロイ様を見ましたよね? ロイ様が田舎坊主が無理して都会に来たような雰囲気に対してヘンリー様はまさに王族と言った雰囲気。正直ロイ様を今から脱がして着直させたいくらいです」


 隣の部屋からロイのくしゃみが聞こえた。

私から見たらロイの着方にそんなに違和感は無かったのだが……。


「それはリーシェ様の目が節穴だからです」


 酷い……。

だか節穴なのは否定できない。


「諦めなさい。ユキノはリーシェの世話をしたくて仕方ないんだから」


「ええい、お黙りなさい壁娘」


「誰が壁だ!!」


 ユキノはミリと話しつつもいつの間にかに私の服を脱がしていた。

え? 手際良過ぎて怖いんですけど……。


「さて、では久々に本気を出すとしますか」


 ユキノが不敵な笑みを浮かべながら櫛を持って仁王立ちしていた。

なんだか身の危険を感じ、逃れようとした瞬間━━。


「確保っ!!」


 ユキノが飛びかかって来た。


※※※


「……あいつら何やってるんだ?」


 隣の部屋がさっきからキャーキャーとやかましい。

ただ着替えるだけでなぜお祭り騒ぎみたいになるのか。


「まあ良いじゃないですか。女性陣が明るいのは良いことだ。ミリお嬢さんも久々に楽しんでいるようで」


「そうだな……」


 三人で旅をしていたが此方はミリに遠慮していたし、ミリも此方に遠慮していた。

気の許せる同性がそばにいるというのはミリにとって嬉しいことだろう。


「それにしても……なかなかその格好似合っていますな」


 ヘンリーの言葉に自分の姿を見る。


「そうか? なんだが落ち着かない。服を着ているというよりも着られているって感じだ。それにそういうことならヘンリーさんの方が似合っているな」


「私は……まあ、こんな感じの服を嫌ってほど着ていましたから。本当に嫌になるくらい」


 ヘンリーは自分の服を摘むと自虐的に笑う。

彼は皇帝の弟だがそれを嫌がっている感じがする。

なにか理由があるのだろうか?


「ガドアは……ドワーフの国はどんな感じですか?」


「一言で言うと"陰湿"ですね」


 「陰湿?」と首を傾げるとヘンリーは頷いた。


「ガドアのドワーフたちは超が付くほどの拝金主義、実力至上主義です。常に誰かと競い、蹴落とす。自分の親兄弟すら信用できない世界です」


 ヘンリーはため息を吐く。

そして頭を掻くと「私の父は……」と言葉を続けた。


「父、つまり先代皇帝は己の兄を謀略で消し、王座につきました。父はよく私に言っていた。『よいか、ベンドリック。お前には才がある。兄と競い、我が跡を継げ』と。若い頃の私はその言葉を信じ、必死に己を磨いて兄を超えようとした。そしてある日、私は兄の弱みを握ろうと父と兄の会話を盗み聞きした。するとどういうことだろうか、父は兄にこういったのです。『お前は最も優れた王になる男だ。王座を狙う弟を御してみせよ』とね」


「それは……」


 言葉に詰まった。

つまり先代の皇帝は己の息子たちが対立するように仕向けていたのだ。

どうしてそんなことを?

それはすぐに理解できた。


「ロイ坊ちゃんの考えている通りですよ。父は兄弟を争わせ、勝ったほうを皇帝にするつもりだったのです。まったく笑えますよ。父の言葉に当時の私は何の疑いも持たなかったんですから。私は一気に馬鹿らしくなり父が望んだ王座への競争から降りた。こうなったらとことん不逞の息子を演じて”仕方なく”兄を皇帝に選ばさせようと考えたのです」


 ヘンリーが望んだとおり兄のロズリックが皇帝となった。

ロズリックは不逞の弟を嫌悪し、ガドアから追放した。

それから数年間ヘンリーは放浪の旅をし、その中でヨアヒム様に出会ったそうだ。


「父が病に倒れ、危篤となると私はガドアに帰参することを許されました。そのころには兄も真実を知っており私にこう言いましたよ。『俺に王座を押し付けやがったな』とね」


 その後、ガドアの外の情報を集めるかわりに旅に出ることを許されたという。

一年半前の東ミスア戦役でガドア地下帝国が魔導砲ドーラをアルヴィリア軍に送ってきたのもヘンリーがロズリック皇帝を説得したからだという。


「まあ、あれは失敗でしたがね。まさか工房の連中が”蛇”と繋がっているとは……。首謀者のラグダは現在も行方不明。ドワーフの猟兵団が奴を追っていますよ」


 ラグダ。

魔導砲ドーラを開発した技師であり、”蛇”と繋がっていた男だ。

奴はあの戦い以降姿を消している。

”大祭司”が倒れたとはいえ”蛇”はまだ残っている。

奴を野放しにするのは危険だろう。


「さて、あまり面白くない話をしてしまいましたな。ここは気分を変えるためにも私が旅の中で見つけた面白い話でも……おや?」


 寝室のドアがノックされた。

そちらの方を向くとドアが開き、ユキノが出てきた。


「おやおや、これはこれは……」


 ユキノは黒いドレスを身に纏っていた。

メイド服か黒い戦闘服のような姿しか見たことが無かったため、とても珍しい光景だった。

はっきり言って綺麗だ。

大人の女性、という雰囲気を身に纏っており男なら道ですれ違ったら十人中十人は振り返るだろう。


「着替えの方、終わりました。……ふむ、下心満載の視線ですね」


「い、いや! 違うぞ!? そんなつもりじゃ!!」


「つまり私には女としての魅力が全くないと?」


「それも違う! えっと、つまりだな……!!」


 必死に釈明しようとするとユキノがふっと笑った。

それで自分がからかわれていることに気が付き、バツが悪くなって顔を逸らす。


「申し訳御座いませんでした。ロイ様の反応があまりにも初心でしたので」


「ふん! 何よ、鼻の下伸ばしちゃって!」


 そう言いながらユキノの背後から現れたのはミリだ。

彼女は緑のドレスを身に纏っており、ユキノとはまた違う……健康的な美しさだ。


「……その、綺麗だぞ?」


 そうミリに言うと彼女は僅かに頬を紅くして腕組するとそっぽを向いた。

あれ? 褒めたのにどうしてそんな反応を?

首を傾げているとヘンリーが「ロイ坊ちゃんは色々と危ないですな」とため息を吐く。


「ええ、全く。天然ジゴロですね。これは」


 いや、普通に思ったことを口にしただけなんだが……。


 なぜ自分は責められているのだろうかと悩んでいるとミリが「ほら! アンタも来なさいって!」と寝室の方に声を掛けた。

すると「や、やっぱりなんか私の露出多くないかな?」とミリの背中に隠れるようにリーシェが現れる。


 そんな彼女を「しゃきっとする!」とミリは押し出すと此方の目の前にリーシェが現れた。


「…………」


 言葉を失った。


 リーシェが着ているのは純白のドレスだ。

彼女の銀の髪と褐色の肌に良く似合い、その姿に目を奪われる。

特に……その……胸元が大胆に開いており……目のやり場が……。


「えっと……。ど、どうかな……?」


 リーシェが上目遣いに此方を見てきたためドキリと心臓が高鳴った。


「お、おう。似合っている……と思うぞ。でも胸元がー、えーっと」


「うっ……。や、やっぱり露出多いよね……。良くなかったかな」


「いや! いいぞ! なんというか、いいぞ!!」


 思わずそう言うとミリから冷たい視線を受けた。

やめてくれ。

そんな目で俺を見ないでくれ。

俺もなんでこんなこと口走ったのか分からないのだから。


「まあまあ、三人ともそれだけ美しいということです。いやあこのような若く美しいお嬢さん方を見られるとは実に幸運だ」


「スケベおっさん感満載のご回答ありがとうございました。正直今すぐこのドレスを着替えたくなりました」


 「相変わらず辛口で……」とヘンリーが笑う。


 まあ、なんだ。

ヘンリーの言う通り綺麗なドレスを身に纏ったリーシェたちを見れたのはとても幸運なことだろう。

きっとこの場にルナミア様が居たらリーシェの姿を見て気絶していたかもしれない。


 ふとミリと目が合うと彼女は少し機嫌が悪そうにまたそっぽを向いてしまった。

さっきの言葉をまだ怒っているのだろうか?


(どうにかして許してもらわないとな……)


 そう考えていると貴賓室のドアがノックされ、エリが入ってきた。


「皆さま、準備の方は……出来たようですね。では私についてきてください。女王陛下がお待ちです」


 エリの言葉に皆で顔を見合わせて頷く。

さて、エルフラント神聖国の女王。

いったいどんな人物なのだろうか?

何事も無く謁見が終わればいいが……。

そう思いながら貴賓室を後にするのであった。


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