シンノウ
@shuunagata
第1話 そして動き出す物語
私、ユーミィは今日も汗を流していた。
「痛い…それにお腹空いた…」
手が、腰が、足が、つまり全ての筋肉という筋肉が悲鳴をあげているようだ。
朝起きたらととも晴れていたので、今日のうちに出来る限りの仕事を終わらせてしまおうと思って体を動かしていたらいつの間にか太陽が真上にきていた。
ここはイッポン。
世界の端に位置する島国である。
更に今ユーミィのいる場所を説明するなら、クロイワというイッポンならどこにでもある山あいの小さな村である。
村の中心にある大きな黒い岩が一際存在感を放っている。村全体の住民は2000人位か、ユーミィも詳細な人数は把握していないがそれほど多くないはずだ。
クロイワの特産品はこの土地で取れる米を中心とした農作物、訪れる行商人に言わせると「無農薬減農薬に特化した新鮮野菜の数々」である。
そんなクロイワという農業色の強い土地で生きていくためには、女だろうと子どもだろうと農業に従事しなくてはならない。
もちろん今年16歳になるユーミィもその1人だ。
「まぁ、ここに住んでいるのだから…仕方ないけど、このままだとおばあちゃんになる前に腰が曲がってしまいそうだわよ」
ぶつぶつと呟き、昼休憩という名の昼ごはんタイムを満喫するため、土手の草むらに腰を下ろそうとすると
ーブニュー
本来は草でチクチクとするはずがそうではなく、とても妙な感触がお尻から伝わってきた。
柔らかい?いや?固い?
ユーミィは思わず下ろそうとしていた腰をあげる。
「ーなんーーーっ!?」
「ずまーおじー」
????え?人????
今まさにユーミィが腰を下ろそうとしていたその場所に男が1人仰向けに倒れていた。
「「うわーーーーっ!!??」」
春の日が暖かく降り注ぐクロイワの地に男女の声がこだました。
何の変哲もない村での2人の出会いが、このイッポンという国に大きな変革をもたらすことになるのだが、今は空に輝く太陽でさえもそのことを知らなかった。
シンノウ @shuunagata
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