序章:大昔の錬金術師

#1 錬金術師の修行時代

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今日は六歳の誕生日である。神殿でスキルが与えられる日。昨日は全く寝付けなかった。

「なんて言ったって、僕の夢に近づくことになるからな」

そうして僕、ローグは神殿の前に来ていた。お父様とお母様と一緒に。

 神殿には大きな盃と鏡がある。盃に自分の顔を映すと、自分のスキルが鏡に映し出される。という、スキルとは魔法的な法則も通り越した神の加護というものである。

そして、盃を前にする。すると、お母様が話しかけてきた。

「ローグは魔術師になりたいんだよね」

「そうだよ。僕はスキルを貰って、魔術師になるんだ」

「そんなに笑っちゃって、まだ貰って無いでしょ」

「でも、貰えるから、絶対」

「そんなこと言ってると」

そんなお母様の言葉を気にしないで盃を覗きこむ。今は早く自分のスキルが知りたい。それ以外どうでもいい。

 覗き込んだ先には、自分の顔があった。まあ、これにスキルは映らないし。でもその顔の目がラピスラズリの様な青い輝きを持って、赤い光を放っていたことはよく覚えている。

 そして、鏡の方を見る。鏡には三つのスキルが並んでいた。

【魔力動作】・【解析】・【複製】と【再現】による【コピー】

 

 そのスキルは決して魔術師に向いているとは言えず、錬金術師のためのスキルだと言い換えることが出来るものだった。

 僕は「お母様のせいだ」と大きく叫んで、自分の家に向かうつもりで走った。方向感覚なんて無いのに。そうして僕は結局、迷子になった。

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