"進める"だけのドア

テマツカ佐藤

本編(完結済み)

1部屋目

ガチャンという重低音。

重たい重たい鉄のドアを閉め、前を向く。


部屋はほんのり暖かかった。


入ってきた時は真っ暗だった部屋が、いつの間にか明るくなっていた。


天井の電灯がやけに眩しい。


私は、前方に見えるドアに向かって歩き始める。


周囲は、商品棚が囲んでいた。


棚には、小さい子供が好きそうなおもちゃや、ゲーム機、パソコンといった、様々な物が種類ごとに分けられ、綺麗に陳列されていた。


更に進むと、食品棚もあった。


ジャンクフード、お寿司のパックや冷凍食品、レトルトのカレー。


食べ物は本当に沢山あった。細かくは見なかったが、調味料そのものは無かった気がする。


どれもが調理済みの食料だった。



ドアの前に着いた。


私は、ドアの前で佇んだ。


短い時間だったかもしれないし、永劫とも言える時間ぐらい過ぎていたような気もする。


ただ、それは非常にどうでもいい事。


ドアノブに手をかける。


入り口のドアノブよりも冷たかった。


しかし、ドアは軽かった。


簡単にドアが開き、歩を進める。


ドアが閉まる寸前、部屋を見渡したが、棚から全てのものが無くなっていた。



…ガチャン。

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