第17話 ひとり
「ねぇ、北条さんさ!この間、一緒にいたイケメンは彼氏!?」
「はい?」
まだ開始の刻限を告げる鐘の音すら鳴っていない教室で同じクラスの女の子に話しかけられるのは珍しい。
しかも内容が内容だ。
彼氏いない歴=年齢の私に聞くには内容がおかしい。バカにする文言ではなく、期待に満ちた言葉というのもいつもと違いすぎて気味が悪い。
「土曜日の夕方!もの凄いイケメンと並んで歩いてたじゃない!」
「あぁ、あの人のことか」
散々、土方さんのことを馬鹿にしながら歩いて帰ったときのことか。
誰も聞いてないと思って呼び方を改めていなかったが大丈夫だったろうか。
ちなみにあの日はきちんと家の前まで送ってもらった。
お陰様で今まで男っ気のない、というよりも私が男そのものなのではないかと疑いをかけていた家族が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
あながち間違っていない辺り悲しいが。
「知り合い!?彼氏なのっ!?」
「あの人と好きあう関係とか勘弁してくださいよ、昔馴染みです」
現在では自分が沖田総司、相手が土方歳三でないにしろ、記憶があるからどうしても抵抗がある。
しかも女狂いの手が早い最低野郎とか、論外だ。
前世では早死したから今生は幸せになると固く決めている。
つまり、どちらかというと特定を決めないで手を出しまくっている土方歳三じゃなくて、一くんみたいに身持ちのかたい人がりそうだ。
まあ、男とそういう仲になれるかはわからないけど。
一人で完結していると、思いの外力強い手に肩を掴まれてゆすられた。
「ちょっちょっと、何なんですか」
「紹介して!お願い!」
「私はいいですけどあの人が断ったらダメですよ。一応、道場の先輩ですから」
「それでいいから!」
「期待しないで下さいよ、あの人、その手の話、困ってないんですから」
嘘がさらりと出た私の豪胆さに苦笑いが漏れる。
確かに、言ったことは間違いではない。
それにしても僕は、女の子にここまで懇願されることは今までもなかったし、この先もないだろう。
あの人のツラは流石すぎる。
頭がゆすられたせいでちょっと気持ち悪い。
込みあがる吐き気を抑えながら、スマホのアプリを立ち上げて「内藤隼人」の文字を探した。
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