【スケートがすべる理由?え……よ、よく分かんないのかよ!?でも、候補はあるんだぞ!!】


理屈なんて未知のままでも使える道具って、いっぱいあるよな。



スケート靴もその一つだ。



氷とスケート靴のあいだには、ほとんど摩擦がゼロになるほど摩擦がない。



どのくらい摩擦が小さいのか?



車輪がついたものって、よく転がるよな?



摩擦が少ないから引っ掛からずにタイヤが回って動いてるんだが。



スケートしてるときの摩擦は、その100倍くらい動きやすい!



だからこそよく滑っているな、ツルツルだ。



100倍すべりやすい一輪車とか想像してみろ……私、秒で転倒してダメージを受ける気しかしない。



誰かに任せたいチャレンジ案件だな。



とにかく。



氷の上ではスケート靴はよくすべる。



そいつは分かっているのだが。



どーして摩擦が低いのかは謎のままだったりするんだぜ。



少なくとも、摩擦がほぼゼロというワケの分からんレベルの低さになるのは不明だ。



でも。



さすがは変態の多い科学界だな!



三つのメジャーな仮説があるんだぞ。



一つは、圧力融解説。



氷って、圧力かけると一部が液体化するんだ。



つまり、スケートで体重をかけていると、氷に圧力がスゲーかかるな。



その圧力のおかげで、氷の表面が溶けて水になる。



その水が潤滑液として機能して、スケート靴のブレードとのあいでよくすべるよーになる。



という説だ。



なるほど!……ってなるものの、弱点があった。



体重が軽いときや、北海道とか北極圏のクソ寒い場所では、圧力があっても氷は水にならんことがわかった。



そこで二番目が登場する、摩擦融解説だ!



圧力だけでなく、摩擦力……つまり、ブレードが動くときの力で、氷とブレードがこすれ合い熱が生まれているんじゃないかと考えた!



手と手をものすごく速くゴシゴシすると、熱くなるよな?



それと似たよーなもんだ。



摩擦で熱を生むから、その熱で氷が溶けて、潤滑液になっているんじゃないか?



という説だ。



わからなくもないが、スケートのスピードの熱では氷はそう溶けないって予測も出てきた。



氷って、意外と溶けん物質だという認識は、近年になるほど強まった。



大昔の『伝説』では、アイスホッケーのシュートで、トッププレイヤーのスティックが氷をシュッ!!って削ったとき。



摩擦熱で氷が溶けて湯気が出てる!



……と、言われていた。



なお、湯気は出ない。



削れた氷の表面とか、加速したスティックや打ち出すパック(球技でいうボールね!)の先端の動きを人間が完全には認識できないから幻惑されていた。



まあ。



とにかく。



氷って溶けにくいため、スケートのトッププレイヤーのハイスピードならともかく。



素人の私でさえも、ツルツルのド滑り地獄に叩き込むことなど不可能そうだという予測になった。



でも、実際は私のヨチヨチなスピードでもすべるからなー。



なかなかに謎なんだ。



じゃあ、圧力でも摩擦でも完全に氷が溶けそーにないのなら!



『溶けないままで摩擦が減っているのではなかろーか』という説も出た。



凝着説だ。



なんか、分かりにくい名前だよな?



どーいうことかというと、スケート靴と氷の面が、実は瞬間的にくっついてるんじゃないかという説だ。



ん?



すべりやすくするって話なのに、くっついたらダメじゃん?



となるよな。



ダイジョーブ。まともな発想だ。



でも、氷の専門家どもには、私たち庶民の想像しない氷のデータがある。



氷って、固いよな?



しかし。



実は、せん断力にはモロいんだよ。



ギュッと噛むときは固いんだが、ちょっと『ずらすよーな力』をかけてやると、かんたんにぶっ壊れる。



氷を噛み砕くときは、垂直に氷を噛み砕いてるわけじゃなく、歯とかを利用して、純粋な圧ではなく、ずらすよーな力、せん断力を使用しているな。



平たい面で氷を圧だけで砕くのはムズく、下手すると鉄より硬いのが氷だけど、力のかけ方次第ではとたんに脆さが出るわけだ。



そういう性質があるんだ、氷には。



つまり。



凝着説は、氷とスケートの表面が凝着……くっつくことにより、人の体重とかが、せん断力として氷に加わり。



氷をぶっ壊すことによって摩擦を減らしているのではないか?



という、パワフルな説だ。



溶けてないなら、『粉々にぶっ壊すことでスムーズに動いている』のではないか?



って、考え方だ。



これなら、氷が固くて溶けないほどに、体重や動きが破壊力に変化しちゃうから、スベりやすさを確保できるってわけだ!



アタマやわらい人っているよなー。



……なお。



氷が溶ける説と、氷をぶっ壊してる説があるわけだが。



どちらも完全否定はされていない。



気温や環境によって、どっちかの理屈が有利に働くことがある。



どっちも起きているのかもしれんわけだ。



なんであれ、まだ謎ではあるが。



理屈は解明されなくても、機能としてスケートは使えるから問題はないのだ。



ちなみに。



氷を研究することで分かった愉快な性質はたくさんあるんだぞ!



スケートにまつわるネタでは、高速リンクだな。



高速水着とか高速シューズと同じよーに、スケートリンクにも高速化の工夫はある。



どんなことしてるか?



氷って、結晶だよな。



んで、この氷の結晶って、フツーだと複数種類の結晶がごちゃ混ぜになってできる。



それらを調べてみると、場所というか部位や角度によって、スベりやすさが違っていることが分かった。



123456と6ヶ所のスベりやすさ=摩擦の少なさを調べたら、どこも違うんだよ。



なので。



たとえば、3番の部位がスベりやすいのなら、その3番だけがスケートリンクの表面にくるように作った。



……より、細かく言えば、最もスベりやすさがある結晶を特定して。



温度や水滴の質をコントロールして、静かな場所でコツコツとそればかりを作っていった。



それを切り出してスケートリンクに敷き詰めて、そのまま凍らせて単一種類の氷結晶を大きくして、スベりやすいスケートリンクを作った。



日本の長野オリンピックでは、このリンクを使ったことにより、世界記録がよく出たわけだ。



このスケートリンクは理論では摩擦が20%少ないからなー。



選手の能力は上げられないが、環境を変えることでサポートは可能だ。



ウェアの空気抵抗を減らすとかな。



地元開催の有利だな、似て非なる道具である環境で、思いっきり練習可能だし、どんな質なのかも国が教えてくれるからだ。



どの国もやってるぞ。



フェアな勝負なんて幻想はな、この世にはないんだよ……と、悪い子な発言してみる。



なお。



さらにスピードアップをはかるための工夫として、空気抵抗を低くする最良の方法は。



高地でスケート競技を行うことだ。



空気抵抗の方が、そもそもゼロに近い氷の摩擦よりも10倍ぐらいは問題になるからだった。



高地でのスピードスケートは、空気抵抗が少なく、世界記録をさらに更新していった。



長野オリンピックでの記録もあっさりと高地リンクでの記録に抜かれた。



もはや、どんだけ高い位置でやるか次第になってきているな……。



エベレスト五輪とかあった日には、アホみたいな高速記録とか出るのかもしれん。



まあ、酸素が少ないからしんどいだろーけども。



エベレストで、空気抵抗少なめウェア着て、スベりやすいリンク用意したら……たぶん、世界記録更新がグッと進むんでね??





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る