【く、屈辱…人類よりハトの方が事後確率を理解するだと!?世界一賢いヤツに近いのは我々凡人よりも、は、ハトだなんて!!】


人間って賢いはずだよな。



まあ、実際とても賢い動物じゃあるんだが。



能力ってのは、機能がいくつも絡み合って組み上げられるものであるゆえに。



人間の脳みそみたいな複雑な賢さという能力は、ところどころに誤作動を起こす。



人間って、他の動物より確率やらを考えながら合理的に行動していると思いがちなわけだが。



実際のところは、そうでもなかったりする。



人間の論理的な思考には、いくつかの本能的な誤解のバイアスがかかっていて。



おおよそ、ほとんどのシチュエーションでは困らない程度に論理的な判断をすることが可能だが。



何だかんだで動物だ。



本能ってものがあるがゆえに、ときどき論理的な思考を直感的に行えないものがあったりする。



どんなものか?



こんなのだな。



視聴者参加型のテレビ番組の抽選に当たって、あるゲームに参加できるよーになった。



3つのドアがある。



そのドアの後ろには、1つだけ豪華賞品があるんだ。



お前はその豪華賞品を当てたいよな?



だから司会者はニヤニヤしながら、「1つだけ選んでいいよ♪」と言う。



お前は選ぶんだ。



1つのドアをな。



このとき、33%ぐらいで豪華賞品に当たる。



だが。



司会者はニヤニヤしながらやって来て、お前の選んでいないドアの1つを開けるんだ。



そのドアは『外れ』だった。



司会者はあおって来やがる。



ヤツは正解のドアを知っているんだが、場を盛り上げるために、わざと『外れ』を1つ引いたんだ。



そして、お前に訊いてくるぞ?



「そのドアでいいの?最後にもう一度、選び直す権利をあげるよ?ん?んん?」



……。



お前は考える。



一つ開いちまって、外れだとわかった。



残り二つのどっちかのドアが正解なのは確かだな。



それは目の前のドアかもしれないし、最初に選ばずニヤニヤしてる司会者も開けなかったドアかもしれない。



イヤな勝負だが……。



どーしても豪華賞品が欲しいから本気で考えるんだよ。



豪華賞品を得られる確率が、少しでも高い選択をな。



さて。



このドアで行くべきなのか?



それとも、変えてみるべきなのか?



……なお。



オーディエンス!……一般的には、多くの場合、この状態に遭遇したヤツは『最初に選んだドアのまま行く』んだよなー。



その理由は分かるかな?



2つのドアしかなくて、正解は1つだから、その確率は……って考えちまうからだよなー。



2つに1つなら……これは、選ぶ意味ってある??



……。



さーて。



お前は、どっちを選んだ?



当たることも外れることもあるわけだが。



でも。



選択で確率は変わっちゃうんだぜ。



さて。



仮にお前はオーディエンスと同じく、ドアを選び直さなかったとしよう。



このとき。



このドアの裏側に豪華賞品がある確率ってさ、どれぐらいのもんだったと思う?



½で、50%?



……正常な考え方なんだが。



じつは違うんだぞ。



答えで言えば、⅓で、およそ33%だ。



選択を変えていないから、理論上は最初の⅓の勝負のままだからな。



なお。



文脈で読めてるヤツもいるだろーが。



これ、選択を変えていた方が有利だったんだよな。



どれぐらい有利なのか?



½の勝負で50%になる?



外れ。



そう思うヤツが多いから、選択肢を変えないヤツも多い。



二分の一なら、選択したとしても確率的には意味が無いと判断するからなー。



でも、50%じゃないぞ。



じつは、ドアを変えていたとすれば、お前の勝率は約66%に上がっていた。



33%と66%。



2倍も勝率が高くなっていた。



変えるべきだったんだぜ……。



……なんでか?



司会者が盛り上げるために『必ず間違いを選ぶからだ』。



その結果として、お前が最初に選ばなかった2つのドアの片方に、『正解が来る確率が集中する』イメージだな。



かりに、お前が1のドアを選んだとすると…。



1:お前が選びつづけると最初の⅓のまま。つまり、1に豪華賞品がない限り当たらないまま。


-------------


2:司会者が外れをあえて開ける=外れ確定


3:これを選べば、⅔になる。



もしくは、司会者が3を開けると、



2:これを選べば、⅔になる。


3:司会者が外れをあえて開ける=外れ確定



こういう確率になるぞ。



もっと簡単に言葉でいえば、選ぶドアを変えれば2と3どちらかに豪華賞品があるときもゲット可能になるわけだから、⅔にまでは確率が高くなるわけだ。



つまり、選択を変えると二つ選べるのと同義だから、確率でも二倍で有利だろってことなだけ。



……。



ピンと来ないか?



2が外れで二択になるから、1と3が½になりそーでしょうがないよな?



それでもしょーがない。



これ、ほとんどの人の直感に反するんだよな。



ピンと来る変わり者はピンと来ちゃうんだけど。



仮に変えなかったとしても、べつに問題はない。



1000人の数学者が間違え、9000人のインテリ気取りも間違えた問題だ。



この問題はモンティ・ホール問題という有名な嫌味問題だな。



直感に対する罠みたいなもんだから、賢ぶってるクソ生意気な学生に屈辱を与えたいときは少しばかりいじくって使えばいいんじゃないかなと思う。



66%、⅔の答えまで書いてくれるのは少数派じゃないか。



ネタ知っていれば対応するだろうがな。



なお、勘だけで生きているアホみたいな子でも正解したケースが私の知り合いにいるから、正解しても天才認定とはならんぞ……。



論理的にも解けるけど、変わり者の直感でも解けるしな。



というか。



これは、ほとんどの人の頭を、うーん?とさせちゃうという悩ましい種類の問題なだけで、考え方としては極めて単純なものだ。



人の脳みその一般的な思考の傾向と、やけに合わないところがある問題ってことなだけだ。



この問題を有名にしたのは、世界一IQが高かったかもしれないと評判だった人物、マリリン・ボス・サバントさんだ。



モンティ・ホール問題は実在のクイズ番組が元ネタなんだけど。



30年以上前のことだ、新聞でコラムを連載していたマリリンさんに「あのクイズ、攻略法ってあるんですかね?」って手紙が届いた。



「選びなおせば、そのままよりも2倍の確率で当たるから、選びなおすのが正解よ!」って、IQ228もある賢いマリリンさんは教えてくれたが。



10000通ぐらい、「ちげーだろ?」「50%だろ?」というお手紙が届いた。



マリリンさんは持論が正しいことを証明するために説明したんだが、なかなか分かってもらえなかったんだ。



なお。



マリリンさんの言葉は正しい。



実際に懐疑派がパソコン使って何十万回も架空のゲームを繰り返させて実験したけど、すればするほどマリリンさんの予測に近づいていった。



なお。



これは直感とのズレを持つ「ピンと来ない問題」なので、間違ってても気にする必要はないものだ。



人間の脳はそういう誤認をしがちという本能を持っているってことに過ぎない。



さて。



本題だが。



ハトはある程度の訓練を行うと、このモンティ・ホール問題を迷わずにクリアするようになる。



常に最適解を選び、報酬=エサを得られる確率を高めるのだ。



一定の経験を積ませる必要があるが、トレーニング後では、人間の脳みそでは、大半の人が直感とズレてモヤモヤしちゃう問題を、かんたんにクリアしてしまうのだ。



ハトの論理的な思考の構築能力の一部は、ある意味では人間をも上回っている。



……人間、あんなアホみたいなハトに頭脳勝負で劣ることもあるのだ……。



ちょっと屈辱だよな。



人類がモンティ・ホール問題をクリアできないことよりも、正直、私としてはショックだわ。



ハトは鳥のなかでも前頭葉……理性的な考えとか司る場所が大きくはないんだがなー。



まあ。



賢さにも色々あるんだ。



動物によって世界の認識の方法は異なっているし、より発達していない脳の方がシンプルに問題解決したりもする。



複雑だと、それだけ誤作動も多いんだよ。



なお。この問題、ピンと来ないヤツはマジメに考えないことをオススメする。



ハトでも分かる答えだから、分かったとしても得ることは少ない。



時間を有効につかうんだ、ホントに得るものはないぞ。

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