2020年・礼子のなつやすみ
今年も、かなりの猛暑と言われている。
8月上旬。
夏は好きだ。
毎年幼い頃は、母の実家に滞在していた。
海の音。香り。
家で食べるよりしょっぱく感じたアイスキャンディ。
泳いだあとに食べる、スティックパンはとてもおいしかった。
高校最初の夏休みなのに、それでいいの?好きなひととか彼氏とか出来んの?と姉には言われたが。私は無視を決め込んだ。
春に高校受験から解放された私は、早速髪を巻き、ネイルとメイクの勉強に身を注いでいる。将来は、そういう夢を持って、それなりに充実している。
彼氏がいないと言うだけで今の私を全否定するようなもののの言い方に、かちんと来て、しばらくは姉と顔を合わせたくなかった。
私は、祖母の遺品整理をするという母について、亡き祖父母宅に身を寄せる事にした。
ネイル一式。メイク道具一式。雑誌3冊。そして服。
いつでも、あの人に会えるように。
「きれいなお嬢さんですね。」
祖母が亡くなって、その手続きの関係の人が家に来た。保険の人か、もっと難しい関係の人だったかもしれない。
家に来たその人はお茶を取りにいた私を見て、母にそう言ってくれた。思ったより若い人だと思った。そこまで若くはないだろうけど大学生の姉とそんなに変わらないようにも見える。
あの人と、始めて会った、時の服を最初につめて。
好きな人。
その言葉にどきんとする。
・・・好きな人はいるんだけどな。
と、わたしは心の中でつぶやく。
そう。
最近、わたしは、その人に恋をしてしまった。
また会いたい。また、話がしてみたい。
そう思うのは恐らく恋ではないのだろうか。
今までスーツをきた人なんてみんな先生かおっさんにしか見えなかったのに。
恋をするのは、その人がかっこいいと思うだけではないという事を知った。
あの人、もう家に来ないのかな。
私はため息をついて・・・・。その人と、私がまたいつか引き合うように、願うしかないのだった。
そう。母について、祖父母宅に行くのはその市に、その人も住んでいると会話の中で聞いたからだった。
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