『小さなお話し』 その34

やましん(テンパー)

『こいごろ』


 大きな病院の一階のパン&喫茶には、かなり巨大なお池が隣り合っております。


 お腹の管を交換し、お薬ができるまで、結構時間がかかるので、大概そこで、こーシーか、ココアをいただきます。


 すると、麻酔が切れる時間にもなるので、あと、しばらくは、お手洗いとの競争になります。


 池には、沢山のこいさんがいます。


 早速やってきたのは、馴染みの、こいごろです。


『よ、やましん、三ヶ月ぶりだな。生きてたか。』


『まね。』


 こいごろは、白い地肌に、真っ赤な日の丸が、三個縦にならんでおります。


 ま、意識的に、そうなったわけでも、ありますまい。


 『最近、来なくなった人も、いるぜ。』


 『まあ、病院ですからね。』


 『おうよ。あんたあ、まだ、恵まれてる、ほうだぜ。』



 『そうかい。』


 『そらそうさ。自分で歩ける。何でも自分でできる。ま、パンツは、紙だけどな。それだけだろ?あと、ちょっと、メンタルが飛んでるが、それは、見た目、わからない。』


 『まね。』


 『なんかさあ、元気ないなあ?どした?』


 『いやあ、元気なくてさ。』


 『そか、でも、ここに、飛び込むなよ。暑苦しくてかなわん。それに、ここは、浅い。』


 『わかってるよ。』


 『川も、海も寒いぜ。やまは、高所恐怖だろう?』


 『うん。』


 『まあ、じみちに、通うこった。いつか、なにかの、道が開くさ。』


 『ああ、そうかな。』


 と、そこに、管理のおじさんが現れ、こいごろを、大きな網で掬って、どっかに、連れていってしまったのです。


 やましんを励ましてくれる、存在が、減らなければ良いな。


 

 



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


                おしまい


          あ、もれそうだ‼️




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『小さなお話し』 その34 やましん(テンパー) @yamashin-2

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