volaille -鳥籠の王国

なづ

序章 祈師と聖女

 聖女様、と呼ぶ。

 聖女様、聖女様、聖女様……

 ――祈師みこ様は本当にすばらしい。彼女こそ神だ。我らはその恩恵を授かっているのだ!

 そう叫ぶ信者たちに笑ってみせて、私は心の内を顔の下に隠すのだ。

 ――祈師おねえさまが、なんだというの? 彼女が私に、あなたたちになにをしてくれたというの

 ――あの人はね、そこにいるだけのお人形。でも、きっと、私の方が、もっと……

 そうだ。私の方が、あの人なんかより数倍もただの置き飾りだ。妹なんて立場で生まれて、こんな扱いを受けるくらいなら、最初からあの人として生まれていればよかったのだ。あの人とおなじか、それとも――そもそも私がこの世に生を受けたことが、間違いだったのだ。

 そうでしょう? そうでないのなら、こんな運命、私に訪れるはずがないのだもの。

 神は、姉。それならば、こんな運命を私に背負わせたのも姉。そんなはずがない。あの人はそこにいるだけ。そこにいて、きれいなだけの従者を侍らせて、花を摘んでいるだけだ。そんな人間が、神であるはずがない。

 ――姉が神なら、その妹である私だって、もっと、もっと……

「ローディア、お前は王家に嫁ぐんだ」

「はい、お父様」

 微笑んで、なにもかも受け入れたような顔をする。それだけが私の得意なことだ。絶対守護力もない、ただのお飾りは、そうやってすべてを隠すことで、この世界を生き抜いてきたのだから。

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