第4話 レイド推奨クエスト


「ふむ、お主たちがわしの孫があの森で迷子になっているところを、助けてくれる冒険者であるか?」


俺たちは最初の村、【ゲネブエラ】というところの一角にある家に来ていた。なぜ、この家に来たのかというとクエストを受けに来たのだ。


「はい、そうです!娘の向かった正確な位置とかわかりますか?」


「そうじゃのう……。わしが寝ていた夜のことじゃから、あまりようわからぬのじゃ。自分の孫のことなのに役に立てず申し訳ない……」


「い、いえ!とんでもない。森に入って行ったという情報だけでもありがたいです」


自分の目の前にプレイヤー画面として、クエスト【迷子の孫を救え】を受諾しました。という表示が出てきた


「これでクエスト受諾完了よ」


「色々教えてくださり、ありがとうございます!」


こうして俺らは、森へと入っていった。



「ぎゃああああ!!!なんじゃあのモンスターはぁ!レベル3でどうこうできる相手じゃないぞ!?」


俺を追っているモンスターの名は、【ジャイアント・プラント】というデカい植物モンスターだ。


あの根っこのような形をしていて、白や緑の混ざった体に茶色い触手が無数に頭から生えているし、その体のデカさといったら3mあるのではないかというぐらいだ。


「こんなの相手にできるかぁーーー!!」


敵モンスターのレベルと名前を視認したところ、レベル5だった。少しやつの方が高い。だが、俺もただ逃げている訳では無い。そのジャイアント・プラントの後ろからはグレーの色をしたお馴染みの狼型モンスターである【ウルフ・キング】の群れで、約5匹。


なぜこんなにモンスターがうじゃうじゃいるのかというと、この森はレイド推奨ステージであるからだ。レベル43のフーラさんが居るとはいえ、俺みたいなやつが一人だったらと思うとヒヤヒヤする。


「よ〜し!準備おっけーよ。さぁ、滅びなさい!消え去りなさい!【ストー厶】!」


彼女の目の前の魔法陣から杖をかざした方向へ風の範囲中級攻撃が、俺を追っているモンスターの群れ目掛けて襲いかかる。襲われたモンスターたちは一瞬にして、ポリゴンの欠片となった。そして俺のレベルも一気に2上がって5レベだ。スキルポイントも合計10ある。


「いやぁ〜助かった。まさかあんなに居るとは思わないよなぁ」


「普通、レイドなんだから思って貰わなきゃ困りますー」


「ういっす」


何気ない会話をしていると、何か小さいが咆哮らしき声が聞こえた気がした。


「フーラさん、今なんか言いました?」


「言うわけないでしょ?そろそろね……」


その声が聞こえた方向へ歩いていくと、そこには漆黒の体に、漆黒の翼を両翼として持ち、その両翼に白い尖った爪。さらにはあの顔の形に頭の上に二本の角……。見た感じ、あれはドラゴンだ。初めて生で見るドラゴンだ。


「デッケェ〜」


高さはジャイアント・プラントより遥かに大きいように見えた。あんなのを相手にするのかと思うと鳥肌が立つ。やつを視認していると、HPバーと名前がやつの顔の右隣に浮かび上がる。HPバーが徐々に下へ1本ずつ増えたかと思ってたら、止まって4本となる。やつの名前は【漆黒龍・ダークネスドラゴン】だ。レベルは12。レベルはそんなに高くないから楽勝かと思ったら大違い。


レイド推奨なのでHPバーも多いし、なにより、その後ろにはあのおじいさんの孫であろうNPCがいたからだ。余計、龍に攻撃しずらい。


「お兄ちゃん、お姉ちゃん助けてよ〜」


ワンワン泣き叫ぶその子のためにも、俺らは勝たなきゃならない。そう決心した。



ゲームの基本としては、やつの行動パターンを測り、把握してから回避等を計画的に行うのが筋だ。


「フーラさん、1度挑んだことがあるんですよね?だったら行動パターン覚えていればわかるはずです。教えてください」


「いいよ。覚えてる限り教えてあげる。奴は開幕で尻尾でのなぎ払い攻撃を行う。そのあとに自身を爪で研いで体を硬くし、物理防御力を上げる。そのあとに火炎ブレスを3回に渡り、右、真ん中、左の順番に放つ。最初はこれの繰り返しね」


「最初は……?」


聞こうとした直後に、言ってた通りに龍のしっぽなぎ払いが来た。慌てて俺は回避。しかしフーラさんは慌てずに分かりきっていたかのように交わし、魔法を放つ。


「【アクアシューター】」


無数の魔法陣から出てくる水の形の矢が一斉に龍へ突き刺さる。「グオオオ」と悲鳴を上げた龍だったが、HPバーを1本吹き飛ばしたに過ぎなかった。


「流石、レイドボス。レベル43を相手にしても引けを取らない」


そのあとに爪を腹で研ぐしぐさをし始めた。やつのHPバーの上にある名前の隣にバフである、物理防御力アップのアイコンが表示された。


「フーラさんは魔法による攻撃が手段ですから問題ないですね」


「ええ、そうね!」


彼女は魔法を通常攻撃でも撃てるように、スキルポイントを振り分けたそうな。高レベルプレイヤーである彼女の攻撃だけで龍は衰退して行き……。ボス戦開始から10分経過した時に倒した。こうして孫はこちらへとしがみついてずっと、ありがとう、ありがとうと言っていた。そしてNPCのおじいさんのところの家に戻り――。


「おお〜!孫よ。よかった……!無事でなによりじゃ!!」


「おじいちゃん、怖かったよぉ〜」


感動の再開をまじまじ見ていた俺に急に涙が出てきていた。


「ほんとに感謝しているよ。では報酬として、吾が家の秘伝のスキルの書を伝授しよう。おや?そなたにはすでに渡しているようだな」


おじいさんはフーラさんのところを見て、そう言っていた。


「ではそなたに、吾が家の秘伝である【天翔覇斬】の書を渡そう」


すると、おじいさんが引き出しから出した書が俺の手元へと光ながらやってきて、ストレージへと入っていった。目の前に出てきた画面に、天翔覇斬の書を獲得しましたと表示されていた……。

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