異世界転移したらサーカス団の道化師になっていました~やばい、道化師ってピエロじゃん、てか本業じゃん~
MIZAWA
第1話 ピエロがピエロになるために
ピエロトは夢を持った。
父親と母親が連れて行ってくれた初めてのサーカス。
ワクワクとドキドキを胸の中にある心に閉まって。
一番引き付けられたのは、ピエロそのもの、
頭の髪の毛はパーマのようになっており、
あれは桂なのだろうかと思った。
ピエロは色々な芸を見せてくれる。
でかいボールに乗って回転しながら歩く姿はとても面白くて、
盛大に顔面から地面に落下して、右手でうまく受け身を取る姿を観客たちはヒヤッとした後に爆笑する。
この会場のすべてをピエロは牛耳っていた。
父親と母親は耳が聞こえない、
それでもピエロの面白い行動を見せつけられて、感動しているようだった。
両親にとって音は存在しないもの、
だけど目はあるのだ。
目が与えてくれる景色に感動しているのだろう。
涙がぽつりぽつりと両親の目から流れている。
それを見なかった事にしてピエロトはただひたすらワクワクする鼓動を押さえきれないわがままな少年のようにピエロとその他大勢のサーカス団員たちを見ていた。
最後に団長らしき人が出てきた。
なんとピエロが団長であったのだ。
そのほかには調教師とか曲芸師とか、軽業師とか色々なサーカスの団員達が出てきて、頭を下げて挨拶している。
記念に写真をとりませんか?
という団長の発言で、沢山の人々が会場に入っていく。
もちろん普通の記念撮影なんかじゃない、
それは大きな熊2体と一緒に写真を撮ると言うものだった。
団長はピエロの顔をしながら、熊のお腹を撫でたりしている。
それでも襲ってこないのだからある意味すごい事だと思っていた。
父親と母親が行こうかと呟くと、
びくびくと震えていたピエロトの気持など関係がなかった。
その日最高な一日だった。
両親と記念の写真撮影、
後ろの真ん中にはピエロの団長の笑顔が、
次に右と左の後方には2体の熊がいる。
前面には父親と母親に囲まれて、一番の真ん中というポジションを取った自分自身がいた。
それはきっと永遠と呼べるくらいの宝になるだろう。
小学生の最高な記憶、
それから数年が立ち、
ピエロトは高校生になっていた。
ピエロトの高校生活ははっきり言うと異常そのもの、
ちゃんと働いてもいるのだが、その職場は夢見ていたサーカス団であった。
そのサーカス団でピエロトはピエロこと道化師をやっている。
ピエロと道化師の意味の違いは分からないけど、どちらも通じるとあの時の団長が言ってくれた。
そうピエロトが入ったサーカスは、小学生の頃に見たあのサーカス団だったのだから。
団長は念のために高校はでておけというので、
団長と一緒に高校の先生たちを説得するのは結構骨が折れた。
両親は反対などしなかった。
両親もサーカスのファンでもある。
そのファンの場所に息子が入るとなれば浮足になり、
両親は友達や従妹、親戚たちに自慢していたそうだ。
ピエロトの通勤の仕方は普通ではない、
まぁ今頃という感じだが。
パルクールというものがある。
色々な場所を盛大にジャンプしたりして、登ったり、降りたりする不思議な競技みたいなものがあるのだが。
それをしながら通学している。
結構な距離があるがビルからビルにジャンプした時に団長にこっぴどく怒られた。
ので、最低限の家から家でジャンプしているし、どこを踏んだら落下するかも把握している。
何回か家の中に落下して警察を呼ばれた事があるが、
そのたんびに団長が頭を下げてくれる。
パルクールをしながら高校に到着すると、授業を受ける、
不思議とこんな仕事をしていても周りは気づかないし、
体育の授業だけ驚異的な力を見せる異常な生徒とくらいしか見ていないのだから。
本当に悲しいものだ。
だけどピエロトは人々に自慢をする為に、
人々と差をつけるためにピエロになったのではない、
ピエロトは沢山の人々に、小学生の頃に感じたピエロトのような気持ちになって欲しいから、このような仕事にしている。それが夢だから。
かくして高校の授業を終えて、サーカス団のテントがある場所まで移動する。
もちろんパルクールのような技術を披露しては、
周りではまたやってるよという視線でこちらを見てくるが、
そのようなことは気にしないとばかりに、
サーカスの中に入った。
そして今日のサーカスの準備をしていたのだ。
その日、人生が終わる。
その日、両親と仲間たちと永遠に分かれてしまうだろう、
その日、この世界とおさばらだった。
みんなを楽しませることばかりを考えて、
ピエロトは最終確認を怠った。
それは高い台からジャンプして地面に着地ではなく、ネットに着地して沢山の人々をわっといわせるはずだった。
そこには何もなかった。
そのまま落下していき、このままでは顔面から落ちて即死だろう。
死が頭をよぎり、
目を瞑ったまさにその瞬間、
そこはどこかの会場だった。
周りを見渡せば、どこかのステージの真ん中にいるらしい、
沢山の観客がいる。観客たちはざわめいている。
あのピエロはどこからやってきた? という言葉が頭に入ってくる。
どうやら同じ日本語のような言葉のようだが、近くにいる子供の口をみると、それは日本語の形ではない、
両親の耳が聞こえないので、両親はピエロトの口を見ていた。
子供ながらに両親がそのような事をしていたので、ピエロトも同じような事をしていた。
それが表すこと、相手は日本語ではないし英語でもない、知らない言語を使っている。
ただし聞こえてくるのは日本語なのだ。
後ろでは一人の女性があっけにとられてこちらを見ている。
どうやらステージの上にいたのはピエロトだけではないということが分かった。
犬が2体いるのだが絶滅したといわれる狼のような犬だった。
狼に似ている犬はいるにはいるのだが、それとは明らかに違う、牙がとんでもないのだ。
「ここは?」
「あんた、なにしてんの、危ないでしょ、この子たちでもびっくりしたら自衛の為にあなたを噛み殺していたかもしれないわよ」
「ここはどこだ?」
「はぁ、頭大丈夫? でも確かにテレポート魔法かなにか? 突然現れたけど」
「魔法って、ありえないだろ」
「魔法は存在するわよ」
「はぁ?」
突如として巨大な声が支配する。
【ベリーベンジェントルメン、道化師と調教師ザスティンの新しい芸を見せてさしあげなさい】
「まったくピッツンバーグ団長もお優しいことで、あんた、ここで見せれば、きっと雇って貰えるわよ、そのあとで事情を説明しなさいよ、じゃ道化師らしくムンとサンから逃げなさい」
「ちょ、えええええ、まじでええええええ」
2体の狼犬が襲ってきたのであった。
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