第二十八章

第563話 仮眠室の支配人


 宿ホテルの朝は早い。

 というか、基本的に常時誰かが起きて何かをしているものだ。



 深夜にチェックインに来るお客様もいれば、明け方にチェックアウトするお客様もいる。滞在中のお客様だって何も寝てばかりいるわけではない。


 総じてお客様は自身のタイミングで動く。


 そうしたお客様の要望に対応する方法は簡単だ。常時誰かが勤務中であればいい。……言うのは簡単、の典型みたいな話だ。特に小規模な宿はスタッフの数が少ない。元の世界あっちでも家族経営の小さな宿は門限があったりフロント対応しない時間があったりしたものだ。スタッフだって人間なのだ。不眠不休で働けるわけではない。


 ある程度スタッフの数を揃えることができるなら、シフトを組んで終日対応可能にすることができる。現状、ウチはその形だ。


 

 中でも朝は人手をかける。

 チェックアウトや朝食の準備。一日のうちでかなり多忙な時間帯のひとつだ。


 仮眠室のドアの外から、バタバタと動いているスタッフの気配が伝わってくる。俺はあくびを嚙み殺して、ベッドから下りた。シャワーを浴びて意識をすっきりさせたら、ちょいと館内巡回でもしてみよう。

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