第549話 ようやく集中できそうなんだが。


「今度アイの顔見たらちゃんと言おう」


 なおもぎゃあぎゃあと胸の裡で喚く「ヤツ」をスルーして俺は決意を口にした。決意というと大袈裟だろうか。いや、これくらいでちょうどいい。口に出しておかないとうやむやにしてしまいそうな気もする。


小娘アイのことはそれでよかろう。それで?)


「ヤツ」が問い掛けてくる。

 それで、とは?


「どういう意味だ?」


(これからのし方く末について訊いておる)


 今後どうするのか、ってことか。


 なんだかんだとゴタゴタ続きで散々な目に遭ってるが、おかげでシュトルムガルド王国での立場は盤石といっていい。営業許可はあるし、王族との強いコネクションもある。手元には王国最強戦力の一角、赤の勇者もいる。


 ようやくホテル経営に集中できるというものだ。帝国との戦争中にはじめたFCフランチャイズ事業の方も軌道に乗せなければ。


「やりたいことは色々あるぞ」


 ただ、懸案事項がひとつだけ――


(フン。あの帝国のタカスギとやらのことか)


 その通りです。


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