第535話 早口
「俺にそういう趣味はないんで」
「ははは。そういう意味ではないよ」
若干体をのけぞらせながら俺が断ると、高杉は俺の勘違いを正した。
「僕が興味をそそられるのは君の知識だよ。君、僕の死んだ何年後の日本人かね?」
「150年と少し」
俺は正直に答えた。
「ははははっ」
高杉は目の端に涙を浮かべて笑った。ちょっと怖いくらいの笑い方だった。
「僕の生涯5回分か。案外、それほど遠い未来でもないのだね、真田くん。はははっ」
「あ、ああ」
俺は曖昧に頷いた。
「僕と君の間に横たわる150年に少しばかり興味があってね」
「……そうか」
その気持ちがどんなものかは想像するしかない。
「だからまあ、講和会議の席で我儘を言わせてもらったわけだ」
「視察の件か?」
「そうだね。視察には僕が行くから、宜しく頼むよ。それだけ言っておきたかったんだ。ではまた会おう。真田君」
「待て待て待て!」
一気に早口でトチ狂ったことまくし立ててんだ高杉ィ!?
そんでさっさと席を立って帰ろうとするんじゃない!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます