第527話 意見

 完全に傍聴人オブザーバーのつもりだった。

 議決権を持たないはずの俺にどうして意見を求めるんだこの連中は。

 だが、意見を述べないと話が進まないようではある。

 やれやれめんどくさい。


「安心・安全を確保するために相互不可侵は必要だろうとは思う。まだ戦争したい奴がいるとも思えないけどな」


 戦争は二度とごめんだ。帝国軍も今回はそう思っているはず。わけのわからん相手(俺含む)にボコボコにやられたからだ。大勢死んだが、殺された怒りよりも得体の知れない敵に対する恐怖の方が勝っているのではなかろうか。そもそも侵略戦争をしかけてきている時点で殺されたって文句は言えまい。


「不可侵はいいとして、人の往来はどうするんだ? 講和する以上、国交断絶するわけじゃないよな?」


 俺は質問に答えつつ、新たに別の質問をした。今までは何の気なしに商人の往来はあった。それについてある程度明確な規定をしておいた方がいいだろうと思う。


「帝国としては王国との商売だけでなく南方の小国へも足を延ばしたいと考えている。我が国の商人たちに王国を通過する自由を与えて欲しいところだね」


 高杉がしれっと随分な要求をしてきた。


「商売の為に? 侵略ではなくて?」

「そう、侵略ではなく」


 俺が牽制がてら茶々を入れると高杉はにんまりと笑った。この男の意図を読み違えるとひどいことになる。真意は知りたいがなるべく関わりたくはないな……。


「だそうですよ、ヴィクトール殿下」


 俺はボールを王国側の最高責任者に投げ渡した。

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